
観光庁がこのほど発表した宿泊旅行統計調査で、2016年10月の外国人延べ宿泊者数(第2次速報値)は594万人泊、前年同月比で2・4%の減少だった。同月の訪日外国人旅行者数は213万6千人で16・8%の増加だったが、その伸びとは隔たりのある結果となった。1人当たりの平均宿泊日数に大きな変化がないことから、旅行者数の伸びに延べ宿泊者数の増加が伴わない主な要因は、クルーズ船の観光上陸の増加と民泊の拡大とみられる。
訪日外国人旅行者数は増加が続いているが、外国人延べ宿泊者数の前年割れは16年に入って2度目。8月には訪日外国人旅行者数が204万9千人の12・7%増だったにもかかわらず、外国人延べ宿泊者が582万人泊の3・6%減で、43カ月ぶりに前年割れを記録していた。
旅行者数の伸びに宿泊者数の伸びが連動しない要因の一つは、クルーズ船の寄港に伴う船舶観光上陸の増加。訪日クルーズ船の寄港回数、旅客数は近年増加傾向にあり、出入国管理統計によると、10月の船舶観光上陸数は19万1千人に達している。
民泊の拡大も要因の一つ。宿泊旅行統計調査は、旅館、ホテル、簡易宿所など旅館業法に基づく宿泊施設を対象に調査し、国内全体の宿泊者数を推計している。政府は民泊新法を今通常国会に提出する方針だが、法制度の整備を待たず、違法な民泊が拡大しているとみられる。民泊などを利用した宿泊者数は、宿泊旅行統計調査では把握できていない。
訪日外国人旅行者の宿泊実態の把握について、観光庁の田村明比古長官は、17日の専門紙向け定例会見で「民泊は以前は(統計的に)無視できる規模だったが、ここ数カ月を見ると影響は大きいようだ。実際の宿泊行動と統計結果のギャップを埋める補足調査の実施などについても検討している」と述べた。
16年10月の外国人延べ宿泊者数を見ると、前年割れは21都府県に上った。東京都が1・3%減、大阪府が1・4%減、京都府が7・6%減など都市部でのマイナスが目立った。三大都市圏(東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫の8都府県)が3・9%の減少、地方部(三大都市圏以外)が0・2%の減少だった。
延べ宿泊者数を国・地域別に見ると、中国が15・5%減の121万人泊、台湾が9・7%減の86万人泊で、構成比の上位2カ国・地域がマイナス。他の主要市場は韓国が8・7%増の67万人泊、米国が6・7%増の43万人泊、香港が1・7%増の41万人泊となった。
一方で、16年11月の外国人延べ宿泊者数は第1次速報値ではあるが、前年同月比2・1%増の544万人泊。数値が変動する可能性はあるが、前年同月比ではプラスに転じている。