福島県観光物産交流協会は、10日に東京都内で行われた福島県教育旅行誘致セミナーで、東日本大震災、原発事故からの復興を目指す福島県で学んでもらう高校生向け教育旅行モニターツアーの成果を紹介した。県環境創造センター、楢葉遠隔技術開発センターなど原発事故に関わる最新の施設を見学するほか、地元住民と震災や復興を語り合う内容。参加者の様子などから福島県で学ぶ意義を再確認できたとして、受け入れ態勢などを再検討し、福島県ならではの教育旅行プログラムを構築する。
モニターツアーは、昨年12月25日から2泊3日で実施した。参加者は筑波大学附属駒場高校、灘高校の高校生30人。テーマは「『福島のありのままの姿(光と影)』と各分野で復興に正面から向き合う『人』に焦点を当てる『学び』のツアー」。住民らとの交流、現地の視察、復興を考えるワークショップを重視して旅程を設定した。
高校生が見学した施設は、昨年7月にオープンした福島県環境創造センター(三春町)。原子力災害からの環境回復に関する調査研究、情報収集・発信などを行う拠点施設で、交流棟「コミュタン福島」は、放射線や、除染など環境回復の現状を展示などで学べる。球体内の360度全方位に映像を投影するシアターもある。
日本原子力研究開発機構の楢葉遠隔技術開発センター(楢葉町)も見学。福島第1原発の廃炉作業を推進するためのロボットなど遠隔操作機器の開発、実証実験を行う施設だが、原子炉建屋内の一部をバーチャルリアリティで再現した体験施設も備えている。
高校生は、地域の復興に取り組む住民らの話も聞いた。避難指示解除に伴い昨年7月に営業を再開した双葉屋旅館(南相馬市)の女将、小林友子氏や、地域の医療を守ろうと奮闘する南相馬市立総合病院の副院長、及川友好氏をはじめ、福島市内に避難中の浪江町出身の飲食店経営者、以前は原発協力企業の役員だった双葉町出身者らが体験や考えを語った。
最終日には、地元福島の高校生を交えたワークショップを行い、震災や原発事故にいかに向き合い、今後どう関わっていくべきかを考えた。
セミナーでモニターツアーを紹介した福島県観光物産交流協会の支倉文江・観光部業務担当部長は、参加した高校生の感想文などからうかがえた問題意識の芽生えや将来の問題解決への前向きな姿勢を踏まえ、「教育旅行の受け入れには宿泊のキャパシティなど課題は残っているが、今回のモニターツアーを通じて震災や復興の学習の場として、福島県で学ぶ意義を再認識できた」と語った。
同協会では2017年度も同様の教育旅行モニターツアーを実施し、受け入れ態勢の整備などを進める予定。教育旅行以外にも、インバウンド、一般個人客、企業研修などでの旅行プログラム化を模索している。