福島で観光立国タウンミーティング、「再生へは食の魅力で」


観光の再生への意見が相次いだ

観光の再生への意見が相次いだ

 東日本大震災から3年を迎えようとする中、福島県の観光の再生を考えるパネルディスカッションが7日、福島市内で開かれた。テーマは「食の魅力とおもてなし」。パネリストを務めた地元の観光・農業分野の事業者らは、食材、食文化の豊かさに自信を持ち、原子力災害を乗り越え、観光と農業の連携で地域を再生させる必要性を強調した。国内外からの集客に向けて、風評被害の対策にとどまらない、積極的な情報発信に意欲を示した。

 福島観光の再生は道半ばだ。観光庁の宿泊旅行統計調査の昨年7〜9月の結果によると、福島県内の延べ宿泊者数は、復旧関係者の宿泊需要などがあり、震災前の2010年同期比で5%増だが、観光客中心の宿泊施設に限ると、7、8月は約20%の減少だった。家族旅行や教育旅行の回復も遅れている。

 しかし、関係者の努力により福島観光は明るさを取り戻しつつある。日本観光振興協会主催で7日に開かれた「観光立国タウンミーティングin福島」のパネルディスカッションでは、パネリストから、現状を踏まえながらも観光の再生への前向きな意見が相次いだ。

 再生の方向性の一つに挙げられるのが、観光と農業の連携を通じた食の魅力の発信だ。

 放射性物質の分布の実態把握などに取り組む福島大学うつくしまふくしま未来支援センターの石井秀樹特任准教授は、「福島県の食材は、(農産物の出荷量などで)ナンバーワンがないと言われるが、多様さが強み。食材、調理法、おもてなしが凝縮された食の豊かさは地域の豊かさを反映している」と指摘。その上で「こういう時だからこそ、地元の良さを再発見し、観光を通じて自信を取り戻す契機にすべき」と訴えた。

 磐梯熱海温泉の旅館、ホテル華の湯の菅野豊社長は、震災前から旅館の料理改革に取り組み、農林水産省が主催する国産農産物の消費拡大運動「フード・アクション・ニッポン」の部門賞を3年連続で受賞した成果などを踏まえ、「コメの全袋検査などの取り組みが旅館に力を与え、消費者に安全、安心を訴えた。自信を持って地元の食材を使い、さらに健康志向の料理を提供していく」と力を込め、「旅館は地場産業であり、農業県である福島では、観光と農業の融合が絶対に必要だ」と語った。

 福島市などを管轄する新ふくしま農業協同組合の菅野孝志組合長も「食とともに、福島観光を下支えしているのが農業が育む景観。福島らしい景観を県民総ぐるみで再生させ、農村と都市の交流などを促進したい」と述べたほか、外国人旅行者の誘致でも「福島のモモ、ナシ、ブドウなどの果樹は、タイ、マレーシアで高い評価を受けている。これを訪日観光に結び付けたい」と意欲を示した。

 官民一体で東北観光の復興を目指す東北観光推進機構の小野晋推進本部長は「風評被害対策としての地道で正確な情報発信と同時に、行きたいと思わせる“攻め”の情報発信に努めていく。福島県を含めた東北のブランドづくりに取り組む」と語った。

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