異業種の観光分野参入が増加、メーカーやコンビニなど


 国が観光立国を国策に掲げ、年間訪日外国人数1千万人実現が視野に入る中、これまで観光事業に直接関係がなかった企業の観光分野への進出が相次いでいる。事業多角化を図る企業にとって、観光分野への進出は、成長著しい魅力的な事業に映るようだ。このうち、今秋新たな取り組みを始めた筆記具大手のセーラー万年筆(東京都江東区)、横浜市と連携したコンビニ大手のファミリーマート(同豊島区)の事例を紹介する。

 セーラー万年筆はこのほど、電子看板(デジタルサイネージ)を利用したコンテンツ配信事業を行うエムビジュアル(同文京区)と観光分野における業務提携契約を締結した。多言語に対応する音声ペンと観光地に配置した電子看板を組み合わせ、観光客への情報提供事業を構築する。両社はJТBグループとも連携し、来年秋までに全国100カ所の観光地で新事業を推進する計画だ。

 同社は3年前から、特殊な情報コードを印刷したパンフレットや地図などをタッチすれば多言語で音声ガイドが流れる音声ペンを製造販売している。すでに観光案内用として、京都や平泉中尊寺(岩手県)、日光東照宮(栃木県)などへの納入実績がある。

 両社は、JTBグループと連携し、地方自治体や観光協会向けに、電子看板と音声ペンを融合した観光支援サービスの導入を促す。

 同サービスは、観光客が自治体や観光協会、宿泊施設から1日当たり500円で音声ペンなどを借り、聞きたい時にいつでも音声ガイドを利用することができる。

 パンフレットには電子看板の配置場所も記しており、観光客は容易に画面を見に行くことができる。看板は通常時の観光案内だけではなく、災害発生時の緊急情報や渋滞情報といったリアルタイムの情報を表示できる。

 両社は今後、電子看板から情報を音声ペンにダウンロードし、音声ペンからリアルタイムの情報を流すなど、音声ペンと看板の技術的連携を図りたいとしている。

 国内の観光は今後、訪日外国人客の増加が見込まれることから、同社では来年秋までに年間200万人、10億円の売り上げを予測。逆に海外の日本人観光客向けに、香港やシンガポールなどでの事業展開も目指す。

 音声ペンは現在、日本語と英語、中国語、韓国語に対応しており、今後フランス語やスペイン語などにも対応する予定。

 ファミリーマートと横浜市は6日、海外プロモーションに関する協定を締結したことを発表した。市が力を入れているアジアからの観光客誘致をさらに強化するため、同社の現地店舗で、市の認知度・イメージ向上を目的としたPR活動を実施する。

 同社は市の観光事業へ協力することで、ブランドや店舗の認知度を上げて集客増を図る狙いがある。

 事業期間は来年3月末まで。中国(上海)と台湾、タイにある店舗約4500店の店舗内モニターを活用し、横浜を紹介する映像コンテンツを配信するほか、グッズプレゼントなどのキャンペーンやチラシ配布などを行う。

 さらに同社のファッションイベント「FamilyMart ASIA COLLECTION」(上海9日、台湾12月開催予定、タイ開催時期未定)で、「横浜市スペシャルステージ」を企画。巨大バックスクリーンで横浜の夜景や観光スポットの映像を流し、PRブースを設ける。

 このほか、現地メディアや交流サイト(SNS)を活用した観光情報発信を行う。

 市は昨年度から、民間企業と連携した横浜観光のPR事業「企業連携観光プロモーション事業」を始めた。今年度の公募には4社が応募し、最高点を獲得した同社が選ばれた。同事業では、市が1千万円を上限に総事業費の4分の1を負担する。昨年は日本航空のほか、サッカーJリーグ「横浜FC」の香港チームと連携するなど、観光に直接関係がない企業との連携が続いている。

 
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