日本政策金融公庫は2月、四半期ごとに行っている「生活衛生関係営業の景気動向等調査」の昨年10〜12月期分の結果を公表した。それによると、旅館・ホテルなど生活衛生関係営業の売上、採算、業況の各DI(「よい」とする企業割合から「悪い」とする企業割合を引いた値)は、前期に比べ大幅に低下した。同公庫は「景気後退による消費マインドの低迷が経営に深刻な影響を及ぼしている」「生活衛生関係営業の景況は厳しさを増している」としている。
調査は昨年12月上旬、ホテル・旅館業、飲食業、理容業など生活衛生関係営業3220企業に個別訪問面接方式で行った。このうちホテル・旅館は219企業に聞いた。
売上DIは前期から12.3低下のマイナス48.1となった。前年同期比では17.3の大幅減。6期連続で前年同期の水準を下回っている。来期(09年1〜3月)の見通しはマイナス52.4で、今期からさらに4.3低下する見込み。
業種別では、ホテル・旅館がマイナス37.2で、前期のマイナス24.8から12.4低下した。ほかの14業種もすべて前期を下回った。例年、季節変動の大きい氷雪販売業が前期の17.2からマイナス65.5へ、82.7の大幅低下となった。来期は映画館、公衆浴場業で上昇、喫茶店で同程度とする以外は、すべて今期を下回る見通し。
採算DIは前期から7.2低下のマイナス21.3。前年同期比では11.2の大幅減で、5期連続で前年同期を下回った。「原材料価格の高騰や客数の減少などを背景に、採算面で苦境がうかがえる」と同公庫。
業種別では、ホテル・旅館がマイナス19.2で、前期のマイナス15.5から3.7低下した。季節的要因でクリーニング業が大きく上昇。公衆浴場業も上昇したが、ほかの業種は低下した。
業況DIは前期から15.8低下のマイナス47.2。前年同期比では23.0の大幅減で、6期連続で前年同期を下回った。来期の見通しは今期比10.4低下のマイナス57.6。
業種別では、ホテル・旅館がマイナス36.1で、前期のマイナス14.2から21.9低下した。その他の業種もクリーニング業を除き、すべて低下した。来期は氷雪販売業、映画館、公衆浴場業で持ち直しを見込むほかは、低下を見込んでいる。
ホテル・旅館業の特徴的な業況判断理由は次の通り。
【今期・好転】
観光客の入り込み数が減少しており、旅行業者と連携して「四国八十八か所巡礼バスの旅」を企画したことから、シニア層の人気を得て客数増加につながった。報道機関にも取り上げられ、当面は継続できると期待している。設備の改修を計画している。(徳島県)
【今期・悪化】
「トヨタ」に支えられてきた東海、愛知に荒波が押し寄せている。宿泊者の減少は明確であり、売上10%低下はまだ良い方である。(愛知県)
【来期見通し・好転】
県内の早春観光キャンペーンが予定されており、地域でイベントを企画するなどして、観光客の誘致に期待している。(千葉県)
【来期見通し・悪化】
景気後退感がますます深まっており、消費者の財布のひもは閉じたままになった感じがする。宿泊はもとより、宴会や婚礼もあらゆる部門で落ち込みが心配される。(鹿児島県)