栃木県が進める「観光立県戦略」 栃木県 福田富一知事に聞く


福田栃木県知事

「選ばれる観光地」へ 国体を県の魅力を伝える機会に

 世界遺産「日光の社寺」や多くの温泉地を抱え、観光県として名高い栃木県。福田富一知事に県の観光振興策、コロナ禍からの回復に向けた取り組み、県観光の魅力を聞いた。(聞き手=森田淳)

 ――さまざまな産業がある中で、県にとって観光はどのような位置付けにあるか。

 栃木県は観光立県を唱えている。観光産業の振興は行政の重要施策であり、大きな柱の一つだ。

 令和3年2月に5年間を計画期間とする県政の基本指針「とちぎ未来創造プラン」を策定し、現在取り組んでいる。五つの重点戦略があり、その中の産業成長戦略の一つ「観光立県躍進プロジェクト」を現在推進している。内容を一言で言えば「選ばれる観光地づくり」だ。

 観光は裾野が広い産業だ。名産のいちごや本州一の生産量を誇る生乳、地酒などの食を提供する農家や畜産業者、酒蔵など、さまざまな事業者と関わりを持つ。

 県が誇る自然や温泉、歴史、文化。あるいは東京圏との近接性。これらを生かして観光誘客を図ることで、県内のさまざまな事業者、地域経済の活性化を図る。このような考えでプロジェクトに取り組んでいる。

 ――県は令和3年3月、「新とちぎ観光立県戦略」も策定した。

 今後5年間の取り組むべき具体的観光施策の方向性を示したものだ。

 「選ばれる観光地づくりの推進」「観光客受入態勢の整備」「国内観光客の誘客強化」「外国人観光客の誘客強化」の四つの柱からなる。

 まずは新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、安全・安心な受け入れ態勢の整備をしっかり行うことが重要だと考え、宿泊や飲食事業者が行う感染防止対策への助成を行った。

 旅行者の旅に対する意識の変化を捉えて、アウトドアツーリズムなど、「新しい旅」も開発している。

 新型コロナで落ち込んだ観光需要の喚起に向けて、「県民一家族一旅行」の名称で、いわゆる県民割事業を実施しているが、その期間を延長したほか、利用できる対象者を隣接県や関東ブロックの各県に拡大している。

 ほかにも四季折々の魅力的な風景を撮影した動画で県への来訪意欲を喚起したり、県観光の公式サイト「とちぎ旅ネット」を昨年12月に全面リニューアルし、観光客が旅行中に周遊スポットの情報を手軽に入手できるようにした。今年3月には県産品を全国から手軽に購入できるECサイト「とちぎもの」も開設。県の物産、土産品の販売促進の仕組みも整えた。

 ――コロナ禍で旅館・ホテルなど県内事業者からどのような声が届いているか。

 旅館・ホテル、スキー場、バス、タクシー、旅行業、観光協会。これらさまざまな観光関係の方々から現状をお聞きするとともに、多岐にわたる要望を頂いた。

 県として対応できるものは速やかに行った。例えば観光バスの利用に対する助成や、「県民一家族一旅行」で発行する地域限定クーポンをスキー場のリフトでも使用できるようにするなど、さまざまな工夫をして観光需要の喚起を図った。

 今後は感染状況や国の経済対策を注視しながら、県観光のプロモーションを展開してまいりたい。

 資金繰りについての要望もたくさん頂いた。これについては過去最大の融資枠の確保で事業者の皆さまを支援した。また、県の要請に応じて時短営業をした飲食店などには協力金をお支払いしたり、売り上げが減少した事業者には支援金を支給したりするなど、落ち込んだ経済を下支えするさまざまな取り組みを行った。

 今後も観光事業者をはじめとして、県内企業のニーズを踏まえて対策をしっかり行い、現下の状況を克服し、ポストコロナ時代における成長、発展が遂げられるように、オール栃木体制で取り組んでまいりたい。

 ――知事から見た栃木県ならではの魅力について。

 日光国立公園をはじめとした、四季折々の美しい自然。「繊細な美しさ」と私は多くの人に語っている。

 自然の美しさというのはほかの都道府県にもあるが、栃木県の美しさは繊細と表現できる。

 なぜ、繊細かといえば、四季の変化がはっきりしているからだろう。夏は暑く、冬は空っ風が吹いて寒い。そして春は百花繚乱(りょうらん)。秋は紅葉が美しい。それぞれの季節の中でも日ごとにその姿を変えるほどだ。日本全国、どこも美しいが、栃木県は繊細さが際立っている。

 県は過去に都が置かれていなかったにも関わらず、国宝と国指定の重要文化財が多く、国宝は全国の都道府県で10位、重要文化財は17位(2022年データ)だ。世界遺産、日本遺産を含めて悠久の歴史を今に伝えている。

 ほかにも多様な農産物を生かした食文化。さらに温泉は、源泉数も多く泉質も多様だ。これら世界に誇る本物の観光資源を数多く有しているのが栃木県だ。

 ――県内外の観光関係者に要望、メッセージを。

 10月には3年ぶりの国体「いちご一会とちぎ国体」、4年ぶりの全国障害者スポーツ大会「いちご一会とちぎ大会」が県内で開催される。国体は県では42年ぶり。障害者スポーツ大会は初めてだ。何としても成功させて、全国からお越しになる選手、関係者の皆さまに「栃木に来てよかった」「また行きたいね」と思っていただけるように、県民総参加で日本一のおもてなしをしたい。

 両大会を契機として県の魅力、実力を多くの方々に知っていただくために、過去に行ったDC(デスティネーションキャンペーン)のレガシーも生かして、来ていただいた方々へのプロモーションやサービスを考えている。SNSなどを使い、戦略的に展開したい。

 インバウンドについては、県の海外拠点やオンラインを活用した海外の旅行会社へのセールスを行う。私も12月にはベトナム・タイへの訪問を計画しており、積極的なプロモーションを展開したいと考えている。

 これらの取り組みには県内観光関係団体などとの緊密な連携が不可欠だ。国内外から多くの観光客が訪れる観光立県栃木の実現に向けて、引き続き取り組んでまいりたい。

 県外の旅行会社の方々には、ウィズコロナ、アフターコロナでも安心してお客さまをお迎えできるように最大限取り組むので、引き続き多くのご送客をお願いしたい。

福田栃木県知事

 
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