東電、観光風評被害賠償で新基準提示


 福島第1原子力発電所事故による、観光業に対する風評被害の賠償基準について、東京電力は10月26日、従来の方針を変更すると発表。これに先立つ21日には中川正春文部科学相が仮払いの算定基準を見直す考えを表明した。観光業界の強い批判を踏まえた措置で、賠償基準問題は新たな段階を迎えた。

 中川文科相は同日の記者会見で、「従来、国による仮払いの金額の算定に当たっては、原発事故以外の地震や津波により生じた収益の減少率、これを20%控除するということにしていたが、観光庁のデータを参考に改めて基準を設けることにした」と述べた。

 具体的には、3月から8月については20%から10%に引き下げ、9月以降分は控除しない。国が東電に代わって請求額の半額を迅速に支払う仮払いの基準見直しは、東電の“本払い”に影響を与えると見られ、東電の対応が注目された。

 東電は売上高が減少した割合のうち、20%分を賠償の対象から外すとしていたが、新たな基準は(1)5月31日までは20%とし、6月以降は原則0%とする(2)3月11日〜8月31日までは10%を差し引く──とし、この2つの基準から観光業者自身が選べるようにした。対象は従来通り、福島、茨城、栃木、群馬の4県。

 群馬県は「観光事業者が受けた損害を、(東電に)適正に賠償してもらうという基本線は変わらない」とした上で、今回の決定については「一歩前進」(観光物産課)と受け止めている。受け入れるかどうかは事業者の判断次第となるが、県は「この基準では駄目だという声が多数あれば、改めて必要な対応を考えたい」という。

 原発事故の被害が深刻な福島県。旅館ホテル生活衛生同業組合は10月28日の理事会で、東電の決定を受け入れることを決めた。菅野豊理事長は「風評被害で経営状況の厳しい旅館も多い中、いつまでも賠償問題に時間をかけることは観光復興のためにならないと考え、受け入れることにした。一度区切りをつけることで、観光復興に全力で取り組んでいけるものと考えている」と語っている。

 
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