書評「温泉地再生」


 旅行・観光業界のシンクタンクとして業界振興に努める財団法人日本交通公社。同財団の研究員のなかでも、とりわけ温泉地研究に取り組んできた久保田美穂子・主任研究員が、これまでの成果を「温泉地再生  地域の知恵が魅力を紡ぐ」の一冊にまとめた。「感じとったこと、信じるようになったことを書いた」と著者。

 現場で活性化に取り組む人々のチャレンジを取材し、直にインタビューもして、新しい時代の温泉地の方向性を探っている。取り上げた温泉地の一例を挙げると、滞在型温泉地として成功している北海道・阿寒湖温泉。地域素材を集めたイベント「オンパク」を手掛けた大分県・別府温泉。温泉入浴アドバイザー「温泉ソムリエ」を擁し保養温泉地を目指す新潟県・赤倉温泉。いずれも先駆的な着想でオリジナリティを開拓してきたところばかりだ。

 温泉地のリーダーに焦点を当てたインタビューには、星野佳路・星野リゾート社長や中澤敬・草津町町長、大西雅之・阿寒グランドホテル社長らが登場する。

 「元気な温泉地には共通項がある」という著者。全国の温泉地の現場で働いているリーダーは「これからの時代の中で温泉地が担うべき意味と役割について、それぞれが独自の考えに基づく強い信念を持っていた」。温泉地が魅力を紡ぐには「温泉地の存在意義を自ら見つけ出し、自分たちが行動することだ」と指摘する。自ら活気を取り戻そうと動き始めた温泉地には思わぬサポーターが集まり、そこに惹きつけられる旅行者が訪れるのを見てきたという。

 旅館経営者のほか観光地の活性化に関心を持つ行政関係者や研究者、学生なども読者として想定している。A5判で208ページ。定価は2100円。発行=学芸出版社(TEL075・343・0811)。

 
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