環境に配慮した経営に取り組む旅館・ホテルが増えている。日本観光旅館連盟(近兼孝休会長)は2月23日、東京都内で開催された展示会「ホテレス・ジャパン」で「地球に優しい宿を目指して」と題した公開セミナーを開いた。セミナーでは、会員施設4軒の経営者らが実践例を発表。二酸化炭素(CO2)排出枠取引の「国内クレジット制度」の導入、間伐材を燃料とするボイラーの利用など、先進的な取り組みが紹介された。
那須高原の宿山水閣(栃木・那須温泉)は昨年、間伐材などから作られる固形燃料「木質ペレット」を使うボイラーを環境省の補助を受けて導入した。CO2の削減分を排出枠として売却できる国内クレジット制度の認定も受けた。
給湯などに利用するボイラーで、灯油に比べてコストを削減でき、CO2削減量は月平均45トン。国内クレジット制度は中小企業が大企業から資金などの支援を受けてCO2の排出を減らし、削減分を大企業に売却できる仕組み。山水閣では大手商社に売却する。
山水閣の片岡孝夫社長は「投資コストの回収などが課題で、事業計画や設備選定が重要だ。パートナー企業の協力が欠かせない」と指摘。同社では、事業計画の策定でコンサルティング会社「ネクスパ」(東京都港区)、木質ペレットの調達で「アイ電子工業」(栃木県大田原市)を活用した。
「間伐材でエコ温泉」をうたうのはビレッジ美合館(香川・美合温泉)。地元の間伐材をボイラーの燃料にし、CO2を年間約500トン削減できたという。間伐材を小さな丸太のままで利用できる設備が特徴だ。
ビレッジ美合館の衣斐恵美子常務は「地域の豊富な森林資源を活用したかった。ボイラーを改造し、間伐材の乾燥技術を研究した。間伐材の搬出などは地域の雇用にもつながる」と話した。
このほか、伴久ホテル(栃木・湯西川温泉、伴久一社長)は「ISO14001」を地域一体で取得しているほか、「とちぎハサップ」(栃木県食品自主衛生管理認証制度)を活用。歴史の宿金具屋(長野・渋温泉、西山平四郎社長)は、温泉熱利用の暖房の導入、網戸の新設などで温暖化防止に取り組み、灯油使用量を大幅に削減している。
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