日本観光振興協会は10日、東京・丸の内の東商ホールで産学連携オープンセミナーを開催した。同セミナーは8回目となるが、初めて日本学生観光連盟と共催。400人を超える参加者の中にはリクルートスーツに身を固めた大学生の姿が例年になく目立ち、就職先としてのツーリズム産業に関心の高さをうかがわせた。
主催者を代表してあいさつした舩山龍二副会長は、東日本大震災や福島第1原発事故からの復旧・復興に観光は大きな役割を果たすことを強調した上で、WTTCの日本での開催、日中国交正常化40周年、東京スカイツリー開業などを挙げ「今年は観光にとってリバウンドする年だ」と意欲を示した。
来賓の溝畑宏観光庁長官は、「観光は総合的戦略産業。日本には世界に誇る魅力ある資源がたくさんある。この業界でプロデューサー的役割を果たし、世界に情報を発信してほしい」と学生にエールを送った。また、学観連代表の高橋竜さんは「ツーリズム産業界と学生が協力して開催するこのセミナーが、新たな道を探る1歩になれば」と抱負を述べた。
伊勢神宮式年遷宮広報本部長の田中恆清氏が、「世代を超えて伝えたい日本の心」をテーマに基調講演。田中氏は来年秋に斉行されるご遷宮の歴史や意義について触れ、「変えてはならないものを今後とも守っていく」との決意を披露した。
セミナーでは観光を学ぶ学生の研究発表が行われた。帝京大3年の熊谷亨介さんは昨年9月に実施された「大震災に学ぶ特別教育プロジェクト」に参加した経験談を発表。「(1)正しい情報の発信(2)当たり前になっている生活を見直し、日々の生活に感謝する(3)被災地の復興における観光の役割の大きさ──を改めて感じた。これからの教訓にしたい」と語った。
また研究発表に対する表彰も行われ、舩山副会長が立教大の原田彩加さんらを表彰した。
パネルディスカッションには学生代表も参加、野口英明・JTB常務、原口宰・JR東日本常務らとともに、これからのツーリズム産業の課題、求められる人材について意見を交わした。
学生の研究発表に対して表彰を行った(左が舩山副会長)