帝国データバンクはこのほど、全国企業対象の景気動向調査の5月分を公表した。同月の景気DI(0~100、50が判断の分かれ目)は、旅館・ホテルが前月比1.4ポイント増の2.9とやや改善したが、前月に続き1桁台を記録した。全業種トータルのDIは同0.6ポイント減の25.2で、8カ月連続で悪化した。
10業界のうち、「小売」「製造」など5業界で悪化した一方、「サービス」「運輸・倉庫」など5業界で改善した。政府の緊急事態宣言が5月25日まで継続され、経済活動が大幅に制約されたが、宣言解除を前にした5月中旬ごろから企業の景況感が徐々に上向き始めた。
10業界のうち、サービスは同0.3ポイント増の26.1と、4カ月ぶりに改善した。旅館・ホテルをはじめ、飲食店(1.2ポイント増の5.5)、娯楽サービス(3.7ポイント増の9.3)などが改善。ただ、1桁台の厳しい状況が続いている。
製造(1.7ポイント減の23.0)は調査開始以来初の13カ月連続の悪化。卸売(0.7ポイント減の23.0)は8カ月連続の悪化。農・林・水産(3.1ポイント減の25.1)は6カ月連続の悪化で、2009年3月(24.2)以来11年2カ月ぶりの低水準となった。
10の地域別では、北陸以外の9地域、31都道府県で悪化。外出自粛や休業要請でヒトやモノの移動が大幅に制限され、10地域全てでDIが20台の低水準となった。
企業の景況感に関する主な回答は次の通り。
「緊急事態宣言を受けて、運営するホテルを全て臨時休館している」(現在、悪い、旅館)。
「新型コロナウイルス感染拡大により、他県への移動自粛、不要不急の外出禁止などの措置により旅行は皆無」(現在、悪い、国内旅行)。
「予定していたホテル、飲食店、物販店、テナントビルの全台更新工事など、施主の状況により、キャンセル、無期限の延期が相次いでいる」(現在、悪い、冷暖房工事)。
「ホテル、マンション事業が完全に停止、土地価格も低下している」(現在、悪い、不動産代理)。
「学校給食、飲食、ホテルからの注文がない」(現在、悪い、水産練製品製造)。
「交通広告は旅客の減少による影響が大きい」(現在、悪い、広告代理)。
「在宅勤務などでテレワークの利用が促進され需要が増加」(現在、良い、ソフト受託開発)。
「新型コロナウイルスの影響で、自宅のミシンでマスクを作る方が増え、ミシンの不具合などでの修理依頼や、購買の問い合わせがある」(現在、良い、一般機械修理)。
「新型コロナウイルス対策商品である除菌商品が好調」(現在、良い、機械すき和紙製造)。
「新型コロナウイルスの経済活動に及ぼす影響が約1年間は続くと予想され、海外案件についてはさらに時間が掛かると予想される」(先行き、悪い、旅行代理店)。
「観光が盛んな地域のため、他県や海外からの旅行者減少による直接的影響に加え、エリア全体の消費マインド低迷による間接的影響もある」(先行き、悪い、貸事務所)。
「ワクチン、治療薬ができるまでは景気は悪いと思う」(先行き、悪い、一般貸切旅客自動車運送)。
「コロナショックによる経営破綻が多く発生すると思われ、再生支援ニーズが増加すると予想される」(先行き、良い、経営コンサルタント)。
「消毒剤需要は一過性でないと見ている」(先行き、良い、医薬品製剤製造)。