新春トップ座談会 JTB社長×KNT-CTホールディングス社長×日本旅行社長×東武トップツアーズ社長


反転攻勢へ アフターコロナ時代の旅行業を語る

 コロナ禍で厳しい状況が続く旅行業界。各社とも苦戦を強いられる中、国内の新規感染者数は落ち着きを見せ始め、旅行需要の拡大に向けたGo Toトラベル事業も再開が間近となっている。新しい年、そしてアフターコロナの時代、各社はどう反転攻勢するのか。JTB、KNT―CTホールディングス、日本旅行、東武トップツアーズの旅行業大手4社のトップにお聞きした。(司会=本社取締役編集長・森田淳)

写真=左から、JTB社長・山北栄二郎氏、KNT-CTホールディングス社長・米田昭正氏、東武トップツアーズ社長・百木田康二氏、日本旅行社長・小谷野悦光氏)

 

21年の旅行業界を振り返る

 ――(司会)まず、2021年の回顧を。コロナ禍が収束せず、旅行需要は依然、回復に至っていない。国内旅行を中心に、業界全体と自社の取り組みを振り返ってほしい。

 山北 どこの会社も同じだと思うが、コロナ禍2年目で消耗戦に入っており、当社としても非常に厳しい1年だった。20年と比べても、さらに体力を落とした1年だった。

 9月30日に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除されるまで、何も発出されていない日は28日間しかなかった。繁忙期がなく、ゴールデンウイークや夏休みも、ずっと低調なままだった。いつ需要が回復するのか分からない中で、お客さまにご迷惑をおかけしないよう営業態勢を整えていった。

 われわれもそうだが、観光業界全体が非常に消耗した1年。一言で表すと、そういう年だった。

 コロナ禍1年目で多くを学んだ。危機を乗り越えるための柔軟な企業体質を作っておかなければと、経費構造のスリム化に踏み切った。旅行業の場合、固定費のうち人件費の占める割合が大きく課題だったが、断腸の思いで早期退職を含む、さまざまな経費の削減を行った。一方、社員のモチベーションを保つための社内コミュニケーションの取り方は大きな課題だった。

 また旅行やイベントの実施がままならない中で、今までとは違う形で交流を再開しなければと、ハイブリッドMICEなどオンラインの取り組みを強化し、企業や地域の課題解決にも積極的に取り組んだ。社員の気持ちもつなぎ止めて、何とかここまで来たという状況だ。

 緊急事態宣言明けの10月以降は、世の中の消費のエネルギーが爆発しつつあると感じた。一方、非常に慎重になっているとも感じた。一時的な盛り上がりではなく、じわじわと回復に向かっている感じだ。

 ただ、ワクチンの効果や、治療薬への期待もあり、希望の光が見えている中での新しい年だと感じている。

JTB山北社長

 

 ――旅行が動かない中で、非旅行の部分に傾注せざるを得ないところもあった。

 山北 われわれは非旅行と言わないようにしている。交流というテーマの中で、人の流れ以外にも、情報の流れや商流など、さまざまな形で流れを作ることが大事だと思っている。ただ、ビジネスの基本は旅行であり、そこは否定するところではない。

 ――東京オリンピック(五輪)・パラリンピックが無観客開催となった。

 山北 非常に残念。10年越しで取り組み、ようやくここでさまざまな成果をあげるところだったのだが。収益面はもとより、関わってくれた社員の気持ちを考えても非常に残念だった。

 ただ、関係者や、関係する企業とのパートナーシップが深まったという点では意義深かった。パラリンピックで学校連携のプログラムがあり、規模は小さくなったが子どもたちにもしっかりと見てもらえた。そういう面でも意義は大きかった。

 米田 1年前に事業構造改革を発表して、昨年の前半は改革、改革だった。希望退職を募らせてもらい、資本金は毀損(きそん)した分の増資を行った。

 それが6月に終わり、今度は7月になると五輪・パラリンピックの準備と、息つく暇がなかった。五輪・パラは確かに無観客で大変だったのだが、極めて厳しい条件の中でもうまく運営していたし、われわれも対応できたと思っている。五輪では大会関係者のバス輸送を担当させていただいた。コロナの感染者は、五輪では少し出たようだが、パラリンピックでは1人も出なかった。関係者の対応能力の高さを感じた。

 五輪・パラが9月で終わり、10月になるとグループの地域会社8社を1社にまとめた。外部環境は決して良くないが、とにかく前を向いて走ろうという意識が出てきた。

 われわれも旅行業中心ではあるが、事業の枠を広げて、自身をコミュニケーション産業だと定義している。クラブツーリズムは「新・クラブ1000構想」を打ち出し、趣味の会を多く作ろうとしている。

 近畿日本ツーリストは、店舗の減少をITでカバーしようと、ハイブリッドコミュニケーションと呼んでいるが、人とともにアバターが「旅のコンシェルジュ」としてお客さまとコミュニケーションを取っている。

 「ブループラネット」という、SDGsを意識した新たなブランドも立ち上げた。

 苦しいながらも前を向き始めたのが昨年後半だと思っている。

KNT-CTホールディングス・米田社長

 

 小谷野 20年と昨年の大きな違いは、20年は7月からGo To事業が開始、10月からは同事業で東京発着が追加されたことで、11月も含めてある程度の手応えを感じることができた。

 昨年は、海外旅行とインバウンドはさすがに難しいが、国内旅行はある程度戦えるだろうと、いったんそのような年初計画を作った。しかし年初からの緊急事態宣言で、国内の商売も思うようにいかなかった。そこで当社として、苦境の中で生き残ることを最優先に、ワクチン接種やPCR検査など、コロナ禍であるがゆえに起こった事業に関わり、取り組ませていただいた。ほかにも関連するさまざまな業務をご用命いただくようになった。

 旅行業はもちろん大事だが、需要が消滅している中で、われわれは一体何ができるのかということを考えざるを得なかった。そして、やれることを最大限やって、しっかり生き残る、という判断を昨年はさせていただいた。今のところは希望退職なども募らず、親会社にも迷惑を掛けずにここまで来ている。

 われわれ旅行業の人間は、社会ですごく評価をされる可能性があるのだと気付かされた。気付くのが遅かったぐらいだ。社内でもそう。今は店頭や海外部門が開店休業状態で、部門間の瞬間的な異動を行っているが、従来部門間の交流があまりなかった中で、異動をしてきた人への評価が高い。普通に仕事をしていては気付かなかった自身の価値に気付き始めている。

日本旅行・小谷野社長

 

 百木田 外部環境は他の皆さんと全く同じで、まさか2年もコロナ禍が及ぶとは思わなかったというのが正直なところだ。

 20年はコロナに翻弄(ほんろう)され、ほとんど手を下せずに年間が終わってしまった。そうした中で赤字を出し、純資産も毀損した。しかしながら本年は、外部環境は引き続き厳しかったものの、当社の行動は昨年と大きく変化した。

 まず、従業員一人一人が、苦境を脱却するために自ら考え、具体的な行動を起こした。社員が容易に集まれない状況下でも、ZOOMを積極的に活用し、各地域の状況や成功事例を500~600人の社員が同時に共有して、行動指針を確認した。そこで分かったことは、行政や一般企業、学校も含めて、各地域が今コロナ対応に関して、何をしたらいいのか分からず、困っていることだった。

 坂巻前社長が「地域を大事にする」「地域を元気にしたい」という経営理念を掲げていた。そこに思いをはせ、47都道府県にある当社の各支店から各地の自治体・学校や企業にお話を伺いに行った。

 そこでわれわれができることがはっきりと見えてきた。一つの事例が、山梨県のグリーン・ゾーン認証だ。自治体が何をしていいか分からない、本当にゼロの状態から、お客さまを呼び込むために厳格な認証制度を作り、安心・安全の中でお客さまに来てもらう、ということを始めた。それが一つの成功事例となって、47都道府県の大半に、同様の制度が整った。まさに社会貢献活動に従事しながら、自治体の課題を解決することに直接携わることができた。

 また、当社は東武沿線に26のカウンターがあったのだが、今までのような待ちの営業からの転換を図り、地域と密着した地域の拠点としての機能に注力するため15店舗まで集約した。本部機能も一部で集約し、コストを削減している。

 先に挙げた地域に密着した課題の解決によって、小谷野社長の話の通り、旅行会社がここまでやるのか、というところの存在感と必要性を自治体に与えたことは大変意義があり、強いインパクトを与えることができたと思う。お客さまと一度信頼関係ができると、「次も」という話につながってくる。

 当社もワクチン接種の業務に関わった。そこに従事する若い従業員は、「この先どうなるのか」「これからもずっとワクチンの仕事を行うのか」との不安もあっただろうが、社会的に責任のある仕事を任せられたことで、モチベーションを持ち、献身的に従事してくれた。
この先を考えると、現時点で予見できない不安はあるが、厳しい状況の中でも自分の力で立って歩いていけるように持っていけたことが大きな成果であった。結果として、人員削減や給与カットを一切せず、新規採用も継続することができ、年間を通じて黒字化できた。

東武トップツアーズ・百木田社長

 

 ――五輪・パラについては。

 百木田 私自身も招致活動に携わり、IOCの総会が開かれたブエノスアイレスまで行ったのだが、当時はまさか無観客になるとは思っていなかった。

 ただ、社内にレガシーは十分残ったと思う。一つの目的に向かい、みんなが仕事をやり遂げた。損益としては一部見込み違いがあったものの、大会全体として十分に成果を残すことができた。

 

22年の旅行市場の展望

 ――22年の展望。新しい旅のスタイルや、Go To事業の再開が取り沙汰される中、旅行需要はどう回復するか。また、回復させていくか。

 米田 先ほどお話ししたコミュニケーション産業という観点から、クラブツーリズムでは、KDDIと協業した新しいサブスクリプションサービス「クラブツーリズムパス」を21年10月から提供している。趣味を深掘りできるオンライン講座など、さまざまなコンテンツを月額一定料金で提供するものだ。

 われわれは新・クラブ1000構想のもと、趣味のクラブを千、作ることを目指している。この新しいプラットフォームを通して多くのクラブができ、趣味の旅行の催行にまでつながることを期待している。

 近畿日本ツーリストは、先ほど申し上げたブループラネットのウェブ販売に力を入れるのと同時に、アバターによる旅のコンシェルジュサービスをさらに充実させたい。現在は販売の部分だけだが、旅ナカや旅アトまでケアできるシステムにしたい。

 団体については、当社がBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)と呼ぶ業務。現在はワクチン接種に係る業務で使っていただき、皆さまから一定の評価をされている。旅行業以外のサービスだが、これも伸ばしていきたい。

 社内で新規事業プロジェクトを進める。スタッフを公募したところ、多くの若者が手を上げてくれた。前を向いて、今年はさらに飛躍をしたい。

 

 ――旅行需要回復の見通しは。

 米田 インバウンドは今回のオミクロン株で回復がまた遠のいた。インバウンドについてもアバターのコンシェルジュで対応できないかと考えていたのだが、まだなかなか見込めない。国内のお客さまがもちろん大事だが、コロナ後に大きく需要を伸ばせるのはやはりインバウンドだろう。

Go Toについては、早くスタートしてほしいのはやまやまだが、スタートが遅くなった場合は、その分、長く続けていただきたい。

 小谷野 業界としてインバウンドも含めて、積極的に市場へアプローチする必要がある。

 ただ、会社の事業計画を作るに当たっては、冷静、客観に見ていく必要がある。冷静に見れば、インバウンドもアウトバウンドも、この1年間はまだまだ厳しい。しかし、業界全体で、さらに経済団体なども巻き込んで一定のアピールはし続けるべきだ。

 当社は、新常態に対応する新たな中期経営計画を昨年末に公表した。考え方の基本は、地域を含めた顧客に対するソリューション。

 従来のリアル店舗による単純な待ち受け型ではお客さまに選択いただけない。ネットを相当深掘りする。宿と飛行機や鉄道、バスなどの交通機関を組み合わせる機能をさらに強化する。

 JR西日本グループとして、西日本エリアの素材開発もミッションとなろう。

 今年は当社の国内旅行ブランド「赤い風船」が50周年を迎える。今までは安さを追求するところもあったが、これからは旅館・ホテル単館の取り組みから、地域全体における取り組みまで、SDGs案件に関してさらに注力する。持続可能なツーリズムなど社会性を包含することで、お客さまに価値を訴求できる商品、少し割高でも選んでもらえる商品を作っていきたい。

 法人営業では、今までのつながりを大切にしつつ、新たなビジネスパートナーを増やし、お互いがウィンウィンになれるようなサービスやビジネスを展開したい。

 百木田 まずは国内。水際対策が緩和され、アウトバウンド、インバウンドが回復することが望ましいが、この1年はまだ厳しいと見る。そういう意味でも国内需要をいかに取り込むかだ。

 Go To再開で大きな影響が出ると思う。リベンジ消費は必ずある。今、1千万円以上の高級自動車が19年と比較して大きく売り上げを伸ばしていたり、リゾート会員権が平均370万円を超え、ここ20年間で過去最高となっていたりする。

 リッツ・カールトン日光は稼働率が90%に達している。どんな人が泊まっているかというと、1泊20万円を超えるプランの購買層として、もちろん富裕層が多いのだが、よく見ると若い人も結構利用している。本来であれば海外旅行に行っているのだが、今は行けず、お金の使い道がないので代わりに国内で高級なホテルに、ということになっているようだ。

 需要は必ず戻ってくるし、一気に爆発する可能性もある。

 当社は法人営業が全体の7割以上のため、今後も需要回復の起点を重視する必要がある。先ほどお話しした通り、地域に目を向け、良い関係ができているところへ継続して、課題解決型の営業を行っていきたいというのがまず一つ。

 ワクチン接種は、ブースター接種がいわれている中で、一定程度残るだろう。われわれの事業領域におけるポートフォリオの追加部分として、大きいものがある。

 教育旅行は、昨年は10~12月がピークになるといういびつな形だったが、今年の春先までには通常に戻っていくだろうと見ている。引き続き取り込みを図りたい。

 個人旅行はGo Toトラベル事業にどう対応するか。人を集めるだけならば、総合旅行会社でも、OTAでも、直販でも良いのだろうが、われわれとしては、地域全体にいかに経済的に裨益(ひえき)できるか。その仕組み作りと落とし込みが重要だと考えている。

 山北 希望の年になることを願ってやまないが、今までお話に出た通り、国内マーケットが中心の1年になるのだろう。

 密を避ける傾向は続くだろうし、デジタルを好む傾向も一層加速する。

 デジタルチャネルがますます重要になるのは間違いないが、われわれリアルエージェントがやらねばならないことは、人財(JTBでは「人材」をこのように表記している)をどれだけ磨き上げられるか。

 デジタル化がどんなに進んでも、重要なのは人だ。矛盾するようだが、デジタル化が進めば進むほど、人の力がさらに重要になる。

 人とデジタルをどう組み合わせれば、新たな価値が提供できるのか、この1年じっくり考えたい。

 

10年、20年後の自社の姿は

 ――コロナ禍で市場環境が大きく変化した。足元の1~2年、そして10年、20年後の自社の姿について。

 小谷野 今までの量を重視するやり方をどこまで見直せるか。例えば、コロナ禍で3密回避がいわれる中で、バスを満員にして走らせることはお客さまの意向に合わない。バスを満員にしなければ採算がとれないという商売は成り立たなくなる。価値を追求し、少し割高でもお客さまに選んでもらえるような商品を作らなければならない。

 旅行業で長年培ったお客さまとの関係性、認知度をもとに、さらに違う領域に踏み込まなければならない。新たなビジネスパートナーを求め、新しい価値を創造しなければならない。

 自治体と地方創生事業を進めている。きめ細かな提案をし、各地の強みを引き出したい。特に西日本エリアでは、JR西日本と協業できるのがわれわれの強みだ。最大限のシナジー効果を発揮したい。

 百木田 山北社長が言われるように、人が大事だ。当社も人が財産、人が主人公だと経営理念に掲げている。

 当社はMICEを得意にしている。支えているのは社員のコーディネート力だ。これから異業種と組むことも多くなるだろう。従来の旅行業の枠から飛び越えられる人材、座組をコーディネートできる人材をいかに育てるかが重要になってくる。

 デジタルがますます進展するのは間違いないが、システムを作れる人、デザインできる人はいくらでもいる。しかし、デジタルを利用して地域と人・企業をひも付けられる人材は貴重だ。コーディネート力がなければできない。デジタルの仕組みを地域に落とし込めるのは人だ。

 これらをわれわれの収益源としていかねばならない。かねてより思っていたのだが、われわれの業界は100売って1残らないビジネスを行っている。それを堂々と10残せるようにしなければならない。

 山北 われわれは「POST2030年VISIONプロジェクト」という社内プロジェクトを立ち上げた。市場環境が劇的に変化している今だからこそ、若い世代に社の未来について、どうありたいのかを描いてもらっている。プロジェクトを通じ、JTBグループの事業ドメイン、事業構造、その基盤となる組織設計に至るまで、議論してもらうことにしている。

 10年後、20年後の想像は難しいが、交流や感動に対する本質的な欲求は恐らく今と変わらない。ただ、その方法は多様化する。

 われわれは旅行会社の理屈で、大勢のお客さまを集め、催行効率を良くして利益を出すという考え方をしてきた。しかし、真にお客さまの立場に立ち、お客さまの感じる価値が何なのかと考えたときに、それをいかに実現するのかを真剣に考える必要がある。

 前提として、まずお客さまを明確にし、その上でそれぞれが抱えている課題を解決していくことだ。

 そのためにもJTBグループとしてもデジタル化なしでは語れない。デジタルの基盤の上に人の力を乗せる。常々社員には言っていることだが、そこをしっかりできれば10年後も20年後もわれわれは価値を持ち続けられるのだろうと思う。

 米田 グループに「クラブツーリズム・スペースツアーズ」という会社がある。宇宙旅行に関わる会社だが、20年後は宇宙旅行が本格的に実現しているだろう。

 サブオービタルという、高度100キロまで上る飛行で、時速3万キロぐらいで飛ぶ。地域間移動にすれば、日本からロンドンもパリもロサンゼルスも1時間を切る。極超音速機も研究が進み、速度はマッハ5。2時間半ぐらいで太平洋を越える。夢のような話だが、10年、20年後には実現するだろう。

 足元の1~2年は、コミュニケーション・カンパニーとして、多くのコミュニティ、クラブ組織を作り、お客さま同士のコミュニケーションを活発にする事業を進める。旅はもちろん、人と人とのつながりをアシストするさまざまな取り組みを進めたい。

 

旅館・ホテルとの関係

 ――協定する旅館・ホテル、施設との今後の関係は。

 百木田 この2年間、われわれ旅行会社は、ビジネスパートナーである旅館・ホテル等宿泊施設、運輸機関、入場拝観施設、お土産施設等の皆さまへの送客もままならず、本当に心苦しい思いをしてきた。われわれも確かに苦しいが、旅館・ホテル等の宿泊施設や、特に運輸機関、ドライブイン、お土産施設の皆さまはもっと苦しんでいる。

 われわれはどんな方向に向かおうと、旅行を諦めることは一切ない。自治体からの受託案件で、直接旅行と関係が薄いものでも、地域のビジネスパートナーの方たちに裨益できるものがあると思い、取り組んでいる。

 誰かが1人だけ勝ち残っても駄目だ。ビジネスパートナーの皆さまとどう生き残っていくか。真剣に考え、行動に移していかなければならない。

 山北 コロナ禍でツーリズム産業の裾野の広さを改めて感じた。構成するさまざまな分野の、何か一つが欠けてもこの産業は成り立たない。

 皆さまの地域の魅力付けや振興について、各地で一緒に話し合いを進めさせていただいている。

 われわれと地域との関係は、仕入機能を全国のJTB拠点に持たせることで、今後一層深まっていくと認識している。旅ホ連(JTB協定旅館ホテル連盟)、各地の観光協会、DMOなども含めて、その関係をさらに深めていく。

 個々の旅館・ホテルさまとは、施工から、決済ソリューション等のデジタル化対応、アメニティグッズのご提供に至るまで、さまざまな場面における課題を解決できるパートナーになりたいと考えている。

 米田 近畿日本ツーリストとクラブツーリズムの関係機関の組織が合併し、新しい組織、KCP会(KNT―CTパートナーズ会)が発足して、およそ3年がたつ。

 申し訳ないのは、このコロナ禍で、本来は当社が皆さまをお助けしなければいけないのに、会の方からどんどん声を掛けていただき、私どもの心配をされていることだ。申し訳ない気持ちの中で、会の皆さまとコミュニケーションがうまく取れていることが私にとって何よりの救いとなっている。

 今、当社が取り組んでいるのが新しいブランド、ブループラネットの構築。SDGsに配慮し、30項目の基準を満たした旅館・ホテルさんに参画いただいているが、ぜひ、KCP会の皆さまと作り上げていきたい。

 旅館・ホテルや施設の皆さまとともに、当社の提携販売店、「旅丸会」会員の皆さまとの連携も、当社が直営店を減らしている中で、強化をしていきたい。

 小谷野 私がこの会社で最初に就いたのが国内仕入の仕事。国内仕入部長経験者として、日旅連(日本旅行協定旅館ホテル連盟)の皆さまとのコミュニケーションは最も大事にしている。緊急事態宣言が明けた昨年10月、知床(日旅連会長の地元)に真っ先に訪問した。今はほぼ毎週、旅連の方々とはリアルで打ち合わせをしている。リモートも活用しているが、リアルに顔を突き合わせての会話が非常に大切だと、できるだけ全国を回るようにしている。

 過去には「お前のところは送客力はないが、性格が良いな」と言われてお付き合いをさせていただいたことがある(笑い)。ただ、世代交代が進み、若い世代が経営者になると、考え方が変わってくる。われわれは人間関係に甘えてはいけない。しっかりとビジネスをして、パートナーとして選んでもらわなければならない。もちろん、性格の良さはわれわれのDNAなので、失わないようにしなければならないが。

 旅館・ホテルの皆さまは地域の有力者だ。われわれが地方創生の事業を進めるに当たり、皆さまとの関係をベースに、各地で進められればいいと考えている。当社ならではの特色を打ち出し、地域から選ばれるようにしたい。

 

プライベートについて

 ――社長のプライベートについて。最近の休日の過ごし方は。また、印象に残った観光地や温泉地があれば。

 山北 コロナ禍で動かなくなったので、休日はスポーツジムに行くようにしている。ジムで走って、筋トレをして、悪いことを全て忘れる。
あとはできるだけ観光地に足を運ぶようにしている。観光地に行って、旅館・ホテルに泊まり、地域開発の様子を見たり、観光素材の体験をしたり。現地アクティビティがどれぐらいお客さまにとって価値があるものか、体験して確認することが非常に重要だと思っている。

 あとはタウンウォッチング。ひたすら歩く。1日2万歩ぐらい歩くこともある。

 米田 昨年の前半は会社の事業構造改革を進めなければならず、土、日もほぼ書類を読んだり、外出を控えて仕事に専念していた感じだ。

 夏も五輪・パラリンピックが始まり、ほぼ動けなかった。何かあったらいけないので、東京を離れてはいけないと、7~9月はほとんど会社に出て自席に座っていたり、家にいたりした。

 五輪・パラが終わってからは、得意の私鉄巡りを始めた。この前は西武、京王、小田急。千葉のいすみ鉄道にも乗った。モーターが回り始めた時の音がいい。音でどんなモーターかだいたい分かる。京浜急行の「ドレミファインバータ」がなくなったのは残念だ(笑い)。

 先日はクラブツーリズムのバスに乗ったのだが、昼食会場では、やっとお客さまが来始めたと、精一杯の歓待をしてもらった。申し訳ないぐらいだった。皆さんはサービスするのがお好きなのだろう。収入を得ることももちろん大事だが、動けることが何より大事なのではないか。調理場は見ていないが、そこでも一生懸命、お客さまのために働いていたのだろう。現場の皆さんの意欲を感じた旅行だった。

 小谷野 うちは奥さま命で(笑い)。奥さんが行きたいところに行く感じだ。行動制限があった時は近場。なくなると車で少し遠くに。ただ、10月以降は土、日のどちらかが仕事に引っかかることが多く、まとまった休みが取れずにいる。

 旅館・ホテルにも泊まるが、社内ではどこに泊まるかなるべく言わないようにしている。「なんでここに泊まらないのか」と、仕入の担当者に怒られるので(笑い)。

 あとは山北さんのように商店街巡りとか、なるべく歩くようにしている。

 いずれにしても、少しでも動ける状況になってきたのはすごくありがたい。

 山北 商店街が魅力的なところは町全体が魅力的だ。

 米田 下北沢に行ったらカレーフェアをやっていた。次の週に日比谷に行ったらまたカレーフェア(笑い)。カレーがコロナに効くのかと思うぐらい。商店街もみんな一生懸命だ。

 百木田 私はスポーツ観戦が大好きで、今のシーズンが私にとって一番忙しい。特に学生のスポーツが好きだ。学生は卒業するから毎年メンバーが入れ替わる。だから力が毎年同じではない。そこが面白い。

 ラグビーが好きで、最近は秩父宮や新国立競技場に、ほぼ毎週行っている。テレビで見るのと臨場感が全然違う。駅伝も好きで、昨年は駄目だったのだが、毎年、日本橋の辺りで応援しながら見ている。

 19年のラグビーワールドカップは非常に盛り上がり、感動的だった。選手と会場にいる観客、そしてテレビで見ている人たちまで全ての人の気持ちが「つながり」一体となった。これがまさにスポーツの持つ力だ。

 スポーツには相手を敬う気持ちがあるのがいい。ラグビーだと、ノーサイドになった後、相手のチームを敬うジェスチャーをするスリーチアーズにそれが表れている。

 

 ――会場の収容人数が制限され、チケットを取るのがなかなか難しい。

 百木田 社長室にこもってパソコンをいじっているのだが、そういう時は大体チケットを取っている(笑い)。

 一同 (笑い)。

 

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