新型肺炎で春季の宿泊予約5割減 日本旅館協会が対策本部


北原会長(右)が赤羽国交相に要望書を提出した

自粛要請で調査後もキャンセル拡大

 日本旅館協会(北原茂樹会長)は、新型コロナウイルス感染症による旅館経営への影響について会員施設を対象に調査を実施した。2月21~24日時点における3~5月の宿泊予約人数は、前年2月の同期の予約状況に比べて約5割減少していることが分かった。予約状況の調査後に、政府から出された大規模イベントの自粛要請などを踏まえ、宿泊キャンセルはさらに増加しているとみられる。同協会では2月28日、対策本部を設置し、旅館業の経営安定などに向けた対応策の検討、政府への要望活動などを強化した。

 調査対象の旅館の地域分布や施設規模にはばらつきがあるが、全国の367軒から回答を集めた。3~5月の宿泊予約人数を2月21~24日時点の予約状況で比較すると、19年は283万4千人だったが、20年は155万4千人にとどまり、45.2%の減少となった。

 中国など外国人旅行者にとどまらず、日本人旅行者にも宿泊キャンセル、旅行控えが広がっている。同協会では、大規模イベントの中止、延期、規模縮小などを政府が要請した2月26日以降、宴会などを含めてさらにキャンセルの動きが拡大しているとみている。

 旅館経営への影響が深刻化している現状を踏まえ、同協会は2月28日、正副会長会での議論を経て、「新型コロナウイルス対策本部」を設置し、東京都内で初会合を開いた。北原会長が本部長に就任。旅館業の経営支援策などについて検討し、政府や与党への要望活動を強化した。

 対策本部の設置に先立つ2月26日には、北原会長が国土交通省を訪れ、赤羽一嘉国交相に要望書を手渡した。宿泊キャンセルや旅行控えで「旅館業は経営的に苦境に立たされている」として、当面の対策を要望した。

 政府への当面の要望は、旅館業に対する資金繰り、雇用調整助成金などの経営支援策の拡充、感染症の終息後を見据えた宿泊需要の回復策の検討など。感染症の状況、政府の対応策などに応じて、対策本部で具体的な施策を検討し、政府、与党に順次提言していく。

 北原会長は「喫緊の課題は資金繰り。融資の条件緩和など、旅館が活用しやすい金融支援策が必要だ。日々、状況が変化しているが、会員に支援策などの情報を周知していく。そして状況がひと段落して終息宣言が出されるなどの時期になれば、V字回復のための観光振興策を講じてもらう。終息後の施策を今のうちから検討し、政府に提言したい」と述べた。

 3月2、3日には、他の宿泊業団体などとともに、自民党の観光立国調査会の幹部会、経済成長戦略本部・新型コロナウイルス関連肺炎対策本部の合同会議、観光産業振興議員連盟・生活衛生議員連盟の合同会議に出席し、旅館業の現状や要望事項を説明した。同協会では、他の宿泊業団体などとも連携をとって対応していく考えだ。

 日本旅館協会の対策本部の本部長以外のメンバーは次の通り(敬称略)。

 副本部長=浜野浩二(副会長、定山渓グランドホテル瑞苑)、竹内順一(副会長、大洗ホテル)▽本部員=相原昌一郎(政策委員長、新井旅館)、関口征治(政策副委員長、お宿玉樹)

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