道後温泉旅館協同組合(愛媛県松山市)は、温泉街の活性化に向けて「道後温泉3千年の歴史漂うまちづくり〜女帝の湯復元プロジェクト」に取り組んでいる。史実をもとに女帝のいにしえの入湯スタイルを復元、旅館などで商品化し、女性客に利用してもらうほか、歴史を感じさせる景観や散策ルート作り、温泉地の新しいイメージの情報発信を行う。プロジェクトは国の地域活性化事業の支援で今年7月始動。来年4月には本格的なサービスを始める予定だ。
3千年の歴史を持つ日本最古の温泉地と言われる道後。しかし、地元ではその歴史的検証が行われておらず、「坊っちゃん」に代表される明治時代以外の厚みある歴史を感じさせなかったという。
また、木造の道後温泉本館と不調和の建物が増え、風情ある温泉街の雰囲気が失われつつあったという。温泉地の宿泊客数は、平成11年度の135万人をピークに減少傾向にあり、近年は年間80万人弱にとどまっている。
旅館組合では、リピーターを含めた観光客数の拡大と「道後ブランドの継承・発展」を目的に、同温泉固有の歴史を利用した活性化プロジェクトを策定。政府(地域活性化統合本部)の「平成21年度地方の元気再生事業」の認定を受け、その財政支援のもと事業を推進することにした。
斉明天皇、持統天皇など、女帝が道後温泉に入湯した歴史を考古学の研究者らに依頼して検証。その上で、女帝による古代の入浴スタイルを復元。その入浴スタイルを体験する「女帝の湯入湯サービス」を道後温泉本館と温泉街の旅館で行う予定だ。県内繊維産業や美容関連の専門家と連携して、新しい入浴用品も開発。サービスは来年4月からの実施を予定している。
また「悠久の物語たたずむ風景づくり」として、古代にまつわる風景や観光資源を調査。歴史を感じさせるそぞろ歩きルートを開設する。
道後温泉の新しいイメージはシンポジウムなどの開催で全国に発信。松山市が推進する「坂の上の雲のまちづくり」と連携したPRも行う。
「地方の元気再生事業」は、地域の活性化に取り組む地方の公共団体などが実施する観光振興やまちづくりなどの優れた提案を国が支援する制度。今年度は公募の中から新規事業191件、継続事業96件が採択されている。