国際観光旅館連盟(佐藤義正会長、1267会員)は、旅館の客室を海外に流通させるため、宿泊予約に関するサービスを世界展開するペガサスソリューションズ(本社・米国ダラス)と契約した。会員旅館は、海外の販売チャネルとのオンライン接続環境の提供を受け、海外の旅行会社やオンライン・トラベル・エージェント(OTA)を通じて、外国人旅行者の宿泊予約が受けられるようになる。国観連は支部総会などでサービス内容を説明し、参加旅館を募っていく。
契約したのは、同社の「ユニレズ」というサービス。旅館は客室管理ソフトを通じてユニレズの予約システムに販売したい客室の情報を入力。ユニレズの予約システムは、海外の旅行会社が宿泊予約を行うGDS(グローバル・ディストリビューション・システム)と接続しているほか、海外のOTA約1千サイトと結ばれており、世界の旅行者に客室が販売できる。
ユニレズでは、旅行会社などへの手数料支払いも代行してもらえる。旅館が自社で英語ホームページを持っている場合などでは、ユニレズの予約エンジンを使用して宿泊予約を直接受け付けることも可能だ。
国観連は08年度にインターネット関連専門委員会(針谷了委員長)を設置して、海外への客室流通について研究、ペガサスソリューションズと契約を結ぶことにした。同社によると、リゾートホテルタイプの旅館には契約事例があるが、温泉旅館タイプの日本旅館が同社の「ユニレズ」などのサービスを利用するのは初めて。
会員旅館は、国観連本部を通じて加盟手続きを行う。参加旅館の負担は、初期のシステム設定料と成約ごとの手数料。成約手数料はGDSを経由した旅行会社の流通、OTAの流通とでは異なる。ペガサスソリューションズは多くの客室の提供を呼びかけているが、客室の増減、料金の設定は旅館の裁量だ。
日本の旅館が海外に客室を流通させるには、ホテルなどの部屋単位の販売と異なり、1泊2食付き人数当たりの販売が主流であることが課題とされてきた。ユニレズの場合は、欧米などの流通に合わせて旅館も部屋単位で表示するが、必ずしも泊食分離が条件ではない。例えば、1人当たり1泊2食付き1万5千円で2人利用の部屋を販売するなら、2人1部屋3万円として表示、ユニレズでは付帯情報の表示が可能で、その項目の中で2食付きであることを説明できる。
ただし、宿泊予約を獲得するにはプロモーションが必要だ。ユニレズは、海外流通との接続環境を提供するだけの“セルフセールスサービス”。同社が別途展開している販売促進までをフルサポートする「ユーテル」とは異なる。「海外の旅行会社やOTAに販売してもらう努力、日本旅館の魅力を外国人に理解してもらう努力は個々の旅館、国観連の取り組みにかかっている」(国観連・小関政男専務理事)。
ペガサスソリューションズは、多数の旅館の参加を期待している。同社日本支社の西原吉則支社長は「訪日旅行市場での旅館のポテンシャルは本来高い。ただ、これまで海外から旅館に直接アクセスする手段は限られていた。日本旅館がこうした海外流通にデビューするというのは画期的なこと。米国の本社でも注目している」と話す。





