全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連、多田計介会長=石川県・ゆけむりの宿美湾荘)は8月23、24日、東京の砂防会館で「常務理事(各県理事長)・理事合同研修会」を開いた。来年6月の施行が見込まれる民泊新法(住宅宿泊事業法)への組織としての対応を全国47都道府県旅館ホテル組合の理事長らに周知。民泊営業ができる日数を法律よりさらに制限するなどの条例を県など自治体に制定してもらうよう、各県組合で陳情活動を行うことなどを確認した。
全旅連が作成した「住宅宿泊事業法(民泊新法)行動ハンドブック2017」をもとに、多田会長、野澤幸司会長代行、大木正治副会長、佐藤信幸常任顧問、桑田雅之・住宅宿泊事業法対策委員長らが説明した。
具体的行動スケジュールとして、「住居専用地域で民泊施設を除外する」「民泊の年間提供日数上限180日をできる限り短縮する」など4点を要望した陳情書を県や保健所を持つ市区の各議会議長宛てに、それぞれの9月議会に間に合うよう提出する。
また、街頭での署名活動も行い、集めた署名を10~12月、自治体の首長や議会議長、保健所長らに手渡して陳情する。署名活動や首長らへの陳情は積極的にプレスリリースし、世論を喚起する。行政が求めるパブリックコメントにも積極的に意見を出す。
民泊営業のさらなる日数制限や場所の制限は、地域住民の安心、安全を確保するためと強調。旅館業界の利益追求と受け取られないように注意を払う。
陳情書での要望はほかに、納税の公平性の観点から「民泊事業者の届出番号を、管理事業者や仲介事業者を含めて開示する義務を定める」、犯罪や悪質な事業者を除外する観点から「届出番号のない事業者や開示を拒否する事業者をサイトから削除する義務を定める」の2点も加えた。
自治体の条例制定までの大まかなスケジュールは、条例案の作成、議会への提出、審議、合意で、この間3カ月から半年。来年3月にも各自治体で条例の内容が決まることが予想される。
会合には観光庁観光産業課の鈴木貴典課長が出席。民泊新法と、関連する政省令、ガイドラインの現在の検討状況を説明した。
新法の施行日を示す政令や、民泊営業を制限する条例をどのようなケースで制定できるかを示す省令やガイドラインは、この2週間以内に政府から示される見込みだ。各自治体はガイドラインなどを見て、それぞれの条例案を検討することになる。
全旅連の多田会長は、「民泊新法を勉強し、これからの地方の戦いに備えていただきたいと、各県組合の理事長にはご参集いただいた。重要なのは、われわれが商売をさせていただいている地域の安心と安全だ。治安をしっかりと守っていかねばならない。きょうを契機に47都道府県がさらに一つになって、よりよい結果が出るように、全旅連としても努めてまいりたい」と述べた。