秋の予約状況が良い。全国的にそのような話を聞くことが多く、何よりな状況だ。ただ一方で、宿泊人員は落ちており、単価のアップにより売上と利益が確保できているという声も多く聞く。その中で、宿泊人員が落ちていることもあり、売店の売上が伸びないという声も多く聞く。その際に決まって出るセリフは「今の人たちは昔のようにお土産を買わないからねえ」と。しかし、これは本当であろうか? 今号では、旅館の売店について考えてみたいと思う。
まず今の人たちがお土産を買わないというのは全くの思い込みで、試しに東京駅のお土産コーナーに立ち寄ってみると分かるが、行列ができており、何分も並ばないと手に入らない店と、閑古鳥の店とがあることに気付くはずである。つまり、今の人たちがお土産を買わないのではなく、「買いたくなるようなお土産が売っていない」ことが問題なのである。
この理由は、旅館そのものは団体型から個人型へ多くの宿がシフトすることができ、客室やお食事処や食事など多くのものを個人のお客さまに選ばれるように改装や努力を重ねてきて、変容を遂げることができたにも関わらず、売店にそのイノベーションが起きていないことが原因ではないかと考えられる。
さまざまな旅館を訪れるが、まだまだ団体型のお土産屋になっていることが多いように感じる。「30個1500円のお菓子詰め合わせセット」や、特にその土地やその旅館でなくても買えそうな物など。個人で旅行をして、周りに配るような近所付き合いもない中で、30個入りのお土産を個人の旅行者が購入する確率は低いであろう。少なくとも団体旅行時代に比べたら。
また、はやっている商業施設が陳列やレイアウトや来店クーポンなど、あの手この手で消費者を取り込もうとしているのに対して、特にそのような販促を旅館で宿泊していて受けた記憶が少ないことから、売る仕掛けづくりも弱いように感じる。次号で、売れる売店づくりについて考えていきたい。
(株式会社アビリブ・株式会社プライムコンセプト 内藤英賢)