【2021新春トップ座談会】エクスペディア × トリップドットコム × ブッキング・ドットコム

  • 2021年1月3日

テクノロジーでコロナ克服 21年はGoToと五輪が鍵

 インバウンド旅行客の拡大とともに日本でもその存在感を年々増してきた世界三大OTAのエクスペディア・グループ(米国・ワシントン州ベルビュー)、ブッキング・ドットコムグループ(オランダ・アムステルダム)、トリップドットコムグループ(中国・上海市)。新型コロナの世界的な感染拡大は各社の業績を直撃した。各社の日本トップに現状と今後の展望を聞いた。(11月18日・観光経済新聞社会議室で)

出席者(順不同)

蘇 俊達氏(トリップドットコムグループ日本 代表)

ヴィカス・ボーラ氏(ブッキング・ドットコム 北アジア地区統括リージョナル・ディレクター)

マイケル・ダイクス氏(エクスペディア・ホールディングス 代表取締役 マーケットマネージメント 北アジア地区 シニア・ディレクター)

司会=本社企画推進部長 江口英一

 

20年の市場と各社の状況

 ――エクスペディアの2020年はどんな年だったか。

ダイクス氏

 ダイクス まずCOVID―19が最初に中国で発生した1月末から4月にかけての「危機対応」期間は、とにかくキャンセルの嵐だった。グローバルレベルでは10週間で2200万件のお問い合わせがあり、旅程の変更や取り消しの対応に追われた。弊社のコールセンターの対応キャパを超えてしまい、突貫工事で宿泊施設自身が管理画面から予約キャンセルができる機能を2週間で実装し、稼働させた。

 次の5月から7月にかけての期間は、ユーザーの安心と中小宿泊施設に対する経済的支援に焦点を当てた。この時期、旅行者が宿泊施設の衛生管理を重要視するトレンドができあがった。そのため、サイト上で宿泊施設の衛生管理への取り組み状況を閲覧できるようにした。契約宿泊施設の80%が情報をご登録いただいている。

 また、弊社からのご請求は通常翌月末までにお支払いいただく規定なのだが、キャッシュフローのご支援のため、これを90日後までに延長した。そして、弊社が19年に手数料としていただいた合計額の25%をマーケティングフィー(広告宣伝費)としてお使いいただけるようにパートナーさまに配分、還元した。さらに7月から9月までの期間は宿泊予約でいただく手数料を10%減免させていただいた。

 ――エクスペディアは、Go Toトラベルの開始時期が他のOTAより遅かった。

 ダイクス 10月8日から始めた。地域共通クーポンの配布開始と東京発着除外の解除は10月1日からだったため、そこに合わせて準備を進めた結果だ。

 ――Go Toの効果はどの程度実感できているのか。

 ダイクス 弊社サイト経由ももちろん恩恵を受けているが、それよりも弊社宿泊在庫を供給している国内の提携販売パートナー(旅行会社)での販売実績の伸びが大きい。10月で前年対比300%増を記録した。

 

 ――トリップドットコムの20年は。

蘇氏

 蘇 困難と革新の1年だった。年明けの1月24日から7連休の春節が旅行需要のピークになるはずだったが、新型コロナの感染拡大で、弊社もコールセンターへの旅行キャンセルの電話が鳴りやまなくなった。3日間で全てのホテルのページにキャンセルボタンを設置し、ユーザー自身で全てをキャンセルできるようにした。キャンセル料は無料にした。

 中国国内は新型コロナの収束が比較的早かったので、トリップドットコムとして、25カ国に300万枚のマスクを寄贈した。日本では当社と連携協定を結んでいる自治体やパートナーの皆さまに10万枚を寄贈させていただいた。

 また、各国・地域の渡航制限情報などが日々更新されるため、それらを大使館のサイトなどで確認し、日本語に翻訳して発表する作業も連日深夜まで行った。ワンストップで情報を一覧できて便利だと、各方面からお褒めの言葉をいただいた。

 世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)が主導している安心・安全の取り組みにも参加。サイト上で各宿泊施設の安心、安全に関する取り組み状況が分かるようにした。ホテルの予約キャンセルや航空券の変更手数料が無料になる「フレックス予約」保障も7月から始めた。

 3月からライブ・コマースの取り組みも強化した。弊社会長のジェームスが自らKOL(キー・オピニオン・リーダー)となり、中国各地を回って「BOSS LIVE」を行った。各地域に合わせた服装で毎週水曜日に出演し、「この地域は安心・安全ですよ」と情報発信しながら、旅行商品を販売する。日本でもユーチューバーを起用して7月からライブ・コマースを始めた。ライブ・コマースは世界規模で行っていて、3月末の開始から6カ月間でGMV(グロス・マーチャンダイズ・ボリューム=累計取扱額)は17億元(日本円で約263億円)以上、視聴者数は1億人を超えた。

 第3四半期(7~9月)の売上高は前年同期比48%減の55億人民元(約876億円)となり、前期比では73%増となった。

 ――Go Toトラベルの開始日は。

 蘇 8月11日だ。外資OTAの中でいち早く販売を開始した。

 

 ――ブッキング・ドットコムの20年はどうだったか。

ヴィカス氏

 ヴィカス 以前は南アジアを担当していて、10月から北アジア担当となった。コロナ禍中で来日が困難なので、本日はシンガポールからオンラインで参加させていただいている。ブッキング・ドットコム入社前はホテル業界にいた。ビジネス出張やプライベート旅行で日本は何度も訪れていて大好きな国だ。

 20年は前例のない年だった。私たちはかつて経験したことのない事態に直面した。経済的にも地政学的にも不安定だった。旅行業界は他業界とは比較にならないほどの打撃を受けた。悲しい年だった。同時に希望の年でもあった。さまざまな新しい機会が生まれた。旅行業界では、アジアだけでなくグローバルレベルでオンライン化が進んだ。データ活用をすることで、人々の生活は豊かになる。

 当社では、社員、ユーザー、パートナーの安全と健康にフォーカスした。社員にはテレワークを徹底。ユーザーには柔軟なキャンセル対応、パートナーには手数料支払い上の配慮やオンラインセミナーなどを行った。

 グローバルレベルの業績は第2四半期(4~6月)で前年対比84%減。第3四半期(7~9月)は同48%減だった。

 日本だけでなく各国で国内旅行へのシフトが起きた。Go Toトラベルのような政府による旅行需要喚起策はタイやイタリアなどでも行われている。

 当社は日本市場に参入して11年目になるが、できるだけローカライズした運営を心掛けてきた。いまGo To効果で国内旅行の取り扱いは伸びており、特に旅館の人気が高い。

 ――Go Toトラベルの開始日は。

 ヴィカス 8月28日だ。旅館についてだが、部屋食を含めた食事が予約できる「お食事プラン」を徐々に開始している。現在は日本語サイトのみで展開しているのだが、今後は日本の文化体験の一環としてインバウンド向けにも広げていきたい。

 

21年の展望と事業計画

 ――エクスペディアの21年の取り組みは。

 ダイクス 3点ある。1点目はGo Toトラベルの円滑な運用。21年の前半はやはりGo Toトラベルが中心になってくるのではないかと思う。2点目は東京五輪を見据えたインバウンドの再開とそれに対するご支援。3点目は技術革新。2020年はマーケティング費用をかなり削減したが、技術への投資は続けている。

 私は楽観主義者なので、インバウンドは絶対に戻ってくると考えている。日本政策投資銀行と公益財団法人日本交通公社が12カ国、6200人を対象に行ったオンライン調査では、「新型コロナの収束後どこへ行きたいか」という問いかけに対して、82%が日本を1位に選んだ。日本の近隣諸国だけでなく欧米の人々も日本を選んでいる。オリンピック・パラリンピック開催に対する期待の表れだと思う。

 このコロナ禍中に、インバウンドの再開を見据えて当社が開発した「マーケット分析」という無料ツールがある。どこの国から、いつ、どの宿泊日で、どれくらい需要が戻ってきているかを可視化した。宿泊施設はエクスペディアの管理画面でお使いいただける。

 「バーチャルエージェント」も英語版で稼働させた。コールセンターのサービスの一部を自然言語対応のAIチャットボットに置き換えたものだ。顧客満足度を調査したところ電話窓口の2倍くらい高かった。他言語版も順次始める。技術で自動化、効率化を進める取り組みは続けている。将来の需要予測と周辺宿泊施設の販売価格を確認できる「REV+(レブプラス)」は、レベニューマネジメント(収益管理)の無料ツールだが、これを「Sabre Synxis」をはじめ、チャネルマネージャーを提供している各社にAPIで公開する取り組みも始めた。自社製品の機能として使っていただくことで業界全体の収益改善を狙っている。エクスペディアでの予約につながるとは限らないのだが、全体の収益が伸びればいずれ当社にも還元される。

 ――トリップドットコムの21年の取り組みは。

 蘇 2021年は新型コロナの危機を乗り越えて観光業が復興していく年にしたい。当社では21周年を記念した「グローバルパートナーサミット」を20年10月に中国で開いた。そこで当社の会長が「ローカル・フォーカス・グローバル・ビジョン」という新方針を発表した。マッチングに投資を行い、旅行ビジネスにおける顧客との関わり方を革新していくという方向性を打ち出した。マーケティングとコンテンツを活用して、ユーザーとパートナーにより大きな機会と価値を提供することで、私たちの事業が拡大していくという考え方だ。21年はさらにコンテンツ拡充を図る。二つ目はGo Toトラベル。引き続き注力していく。感染拡大予防のための新しい取り組みも行って、安心、安全に観光できる環境を作っていきたい。三つ目はインバウンド。回復を確信している。

 ――インバウンドが戻ってくるかが鍵だ。

 蘇 中国だけでなくアジア圏全般でコロナは落ち着いてきている。今は外に出たいと思っても、なかなか出られない環境だ。渡航が本格的に解禁になれば、まず日本に行きたいと思っている人は多い。ビジネス客、観光客の順で戻る。東京五輪もあるので、インバウンドで観光を回復させなければならない。

 20年7月14日には日本で日本人向けのライブ・コマースを初めて実施した。ライブ・コマースとは、リアルタイムのオンラインライブ配信で各国の旅行商品を前売り券の形で販売する手法。テレビショッピングのイメージだ。国内旅行商品を1時間で3600室超、7300万円超を売り上げた。大変良い結果が出せたと思っている。

 翌15日には、日本の旅行商品を中国向けにライブ・コマースで販売した。35分間で2万2千室以上、金額にして3億9千万円超を売り上げた。各国の旅行商品を販売している中でも、日本は人気だ。前売り券には有効期限を設けているが、いつでもキャンセルでき、使わないまま期限を迎えてしまっても自動返金される仕組みだ。

 ――ブッキング・ドットコムの21年の取り組みは。

 ヴィカス 旅行需要の本格的な回復には有効なワクチンの普及が不可欠だ。ただ、ワクチンの配布には今後一定程度の時間がかかるかもしれない。各国政府と連携して情報共有を図っていかなければならないと考えている。オーストラリアとニュージーランド、香港とシンガポールといった近隣国、地域では「トラベル・バブル(近隣の域内旅行)」が始まりつつあるが、完全に回復したというわけでもない。私たちとしても、感染拡大状況を注視しながら慎重に対応していかなければならない。

 当社では6月に「ウィッシュリストキャンペーン」を実施した。ユーザーが次にどこに行きたいかを調査、リスト化して割引特典などのインセンティブを提供した。私たちが収集したデータ、インテリジェンスを活用。ユーザーごとの検索結果に最適化した旅ナカ体験アクティビティのリコメンドも行っている。

 当社のミッションは「全ての人に世界をより身近に体験できる自由を」というものだ。旅行業界には航空、レンタカー、エアポートタクシー、宿泊、体験アクティビティなどさまざまな事業者がいる。これらの旅行素材をシームレスにワンストップで予約できる「コネクテッド・トリップ」をさらに進化させる。例えば、ニューヨーク到着のフライトが遅延した場合には空港でのピックアップ時間もそれに合わせて調整される機能。こういったユニークなエクスペリエンスをユーザーに提供していきたい。テクノロジーは消費者の時間の節約に貢献できる。

 Go Toトラベルと東京五輪はもちろん最重要ポイントだ。日本国内の旅行産業の振興にとって、Go Toトラベルは欠かすことのできない大切な政策だ。東京五輪でインバウンド客の受け入れがどの程度まで可能になるのかは、現段階では分からない。ただ、当社にはUEFA(欧州サッカー連盟)など、さまざまな国際スポーツ大会で培ったスポーツツーリズムの経験がある。これを存分に生かせる場となることを願っている。

 

トラベル業界の世界トレンド

 ――世界のトラベル業界のトレンドをどう捉えているか。

 ダイクス 当社は全世界で「ダイバーシティ&インクルージョン」という多様性への対応強化を始めた。例えばLGBTの社員が自分らしく、自分のアイデンティティを隠さずに仕事ができる環境づくりを行っている。この動きはユーザーにも向けている。世界のLGBT旅行の市場規模は22兆7千億円。エクスペディア傘下ブランドの米「Orbitz(オービッツ)」はLGBTの旅行者に的を絞った展開をしている。同傘下ブランドで日本語サイトも展開している「Hotels.com(ホテルズ・ドットコム)」には、LGBT歓迎のタグ、検索フィルターも追加した。マイノリティマーケットの獲得は日本の旅行市場にとってもプラスとなっていくはずだ。

 蘇 中国国内の旅行市場は80%程度まで戻ってきた。国慶節の10月1日から1週間の期間には1800万人のユーザーが動いた。日本では、Go Toトラベルの効果で回復基調にあるが、感染拡大が予断を許さない状況の中、常に細心の注意を払いながら対応している状況だ。

 ヴィカス 当社では「フューチャー・オブ・トラベル(旅行の未来)」という、日本人も含む世界の旅行客にインタビューアンケートを行い、まとめた調査を実施している。そこで分かったのは「旅行者はフレキシビリティ(柔軟性)を求めている」ということだ。具体的には、「ホテルだけでなく旅館、バケーションレンタルといった選択肢」「明確なキャンセルポリシーと一定の柔軟性」などだ。今多いのは、ステイケーション、ワーケーションの需要で、ワーケーションフレンドリーな宿泊施設に対する要望が高く、Wi―Fiの有無やワークデスクの有無といった検索フィルターを導入した。

 

コロナ禍での過ごし方

 ――最後にプライベートについて伺いたい。コロナ禍で普段の生活にどのような変化があったか。

 ダイクス 在宅勤務がずっと続いている。外食派で元々自炊するタイプではないのだが、家にいる時間が増えたので料理を始めた。料理の腕はないので、最新技術でカバーしようと最近ブームの電気圧力鍋を買った。食材を入れて、スイッチを押すだけで本当においしく出来上がる。魔法だ。ポークの丸焼き、手羽先のパイナップル煮込み、カレー、チリコンカーン、豚バラ肉ミルフィーユ…。最近は、毎日何か作っている。

 ――肉ばかり(笑)

 ダイクス 魔法だ(笑)

 蘇 私も在宅勤務が続いている。料理は大好きで、最近は新しい料理に挑戦している。当社の本社は上海で、月に1、2回は必ず中国に戻っていたのだが、20年1月からはずっと日本にいる。そこで日本ではなかなか食べられない料理を作るようになった。例えばカレー味の焼きまんじゅう。カレー味の牛肉とキャベツを包んで焼いた豚まんじゅうのような形の料理だ。中身から皮まで全部作る。あとは台湾式の牛肉ラーメン。麺以外は自分で作った。

 ――魔法の電気圧力鍋で(笑)

 蘇 それはない(笑)

 ヴィカス 私は習慣に支配されている人間なので、コロナ禍で日常生活の習慣が崩れてしまい、慣れるのに少し時間がかかった。朝は早く起きてジョギングに行き、瞑想をする。最近の週末は頻繁にステイケーションに出かけている。これが実に快適で気に入っている。料理も好きで、時間をかけて調理するスロークッキングを始めた。肉と米を一緒に炊いたり、肉を何かで包んだりすると肉が柔らかくなっておいしい。

 ――ヴィカスさんは、ご出身がインドで、シンガポール在住の日本通だ。カレーとシンガポール料理と和食のどれが一番好きか。

 ヴィカス もちろん和食だ(笑)

 

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