紅葉にそまる櫻井家住宅（島根県奥出雲町）
島根県は、優れた景観の保全、魅力ある景観の創出を目的に「しまね景観賞」を1993年から開催している。このほど表彰式が行われた第31回しまね景観賞の大賞には、人気テレビドラマのロケ地になった建物を含む「鉄師櫻井家と内谷大鍛冶山内の景観」が選ばれた。大賞のほか、優秀賞6件、奨励賞2件が選出された。
「鉄師櫻井家と内谷大鍛冶山内の景観」は、かつてたたら製鉄で栄えた奥出雲町に広がる。内谷地区の櫻井家は、松江藩の「鉄師頭取」で、田部家、絲原家と共にたたら御三家と呼ばれた。明治2年の資料では、たたらの作業場と職人が暮らす山内に49軒の集落が存在していたというが、今も約20軒が残り、先人が築いた景観を保全している。
櫻井家住宅は国の重要文化財で、最も古い現存する建物は享保20（1735）年の記録があり、母屋も元文3（1738）年に建てられたという。松江藩7代藩主・松平不昧公（治郷）を迎えた際に造られた庭園には、「岩浪」と命名された滝が山から流れ落ちる。
屋敷近くの内谷川沿いは、新緑、紅葉が美しい。景観賞の審査委員からは「内谷の水田周辺や山際の草刈りなど、地域全体の景観にも気を配る。櫻井家と地元の人たち、行政が共に協力し、内谷地域のすがすがしい景観、たたら製鉄によって作り出された歴史ある景観を守っている」との評価を受けた。
櫻井家住宅は、23年に放送されたテレビドラマ「ＶＩＶＡＮＴ」のロケ地の一つとなり、注目を集めている。櫻井家住宅の内部は公開されていないが、隣接する歴史資料館「可部屋集成館」には櫻井家に伝わる美術工芸品、歴史資料が展示されているほか、開館日には庭園を見学できる。
大賞以外の優秀賞には、出雲横田駅の大しめ縄掛け替え活動（奥出雲町）▽斐伊川日登えん堤（雲南市）▽松江市役所新庁舎第1期棟（松江市）▽岩見銀山まちを楽しくするライブラリー（大田市）▽認定こども園とおだ保育園（益田市）▽三成愛宕祭幻の一夜城（奥出雲町）。奨励賞には、あゆみ保育園（安来市）▽Ｔｈｅ・闘牛燃え滾る闘志（隠岐の島町）―が選出された。
紅葉にそまる櫻井家住宅（島根県奥出雲町）
