【私の視点 観光羅針盤 182】スノーリゾートへの期待 北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授 石森秀三


 札幌国際大学総合研究所でスノーリゾートやウインタースポーツの研究・調査を行っている遠藤正教授の講演を聞く機会があった。

 遠藤教授は昨年12月に米国やカナダのスノーリゾートで調査を行ったが、特に米・モンタナ州ビッグスカイに位置する会員制スノーリゾート(イエローストーンクラブ)に関する調査報告を聞いて、最先端の事例を学ぶことができた。イエローストーンクラブに特化した話は次回の連載で取り上げることにして、今回は日本のスノーリゾートの現状についてみてみたい。

 日本のスキー人口は1993年に1860万人に達してピークを記録し、その後に減少し続けて、15年には480万人に落ち込んだ。90年代にスノーボードが台頭したが、愛好者は2002年に540万人でピークに達し、その後は減少して15年には260万人へと半滅している。

 国内スキー場は現在約500カ所といわれているが、索道(リフトなど)の設置基数は、93年の約3千基から14年には2351基へと減じている。

 スキー場経営は長らく数多くの地域で基幹産業的な役割を果たしてきた。雇用面で重要であったし、地域にさまざまな経済波及効果を及ぼした。ところがスキー人口の減少に伴って、施設の老朽化対応や安全管理投資に対する負担感が大きくなり、スノーリゾートの衰退に拍車がかかった。

 そういう状況の中、インバウンドの増加による外国人スキー客の急増によって日本のスノーリゾートが大きな変貌を遂げつつある。

 例えば、北海道ニセコ地域の倶知安町はいち早く外国人スキー客を招き寄せた町だ。同町の外国人宿泊延べ数(冬季)の変化は注目に値する。06年の外国人宿泊延べ数は約9万泊だったが、15年には約39万泊で4.3倍の増加。そのうち、オーストラリア人は06年に約7万泊、15年に約15万泊であったが、アジア諸国からの延べ宿泊は06年の約1万7千泊から15年の17万3千泊へと激増している。

 18年の平昌冬季五輪、22年の北京冬季五輪などのインパクトで韓国や中国からのスキー客が増加している。特に中国ではスキー市場が急成長中で、政府は25年のウインタースポーツ人口3億人を目指している。世界屈指の良質な日本の天然雪はすでにアジアのスキーヤーを魅了し始めている。

 今後は多言語対応によるコミュニケーションの改善、2次交通の充実、外国語対応インストラクターの増員、アフタースキー(ナイトライフ)の充実、伝統工芸・芸能の活用、体験プログラムの充実、決済システムの改善、安全管理の徹底、事故・災害時の体制整備、近隣スキー場間の連携強化などが不可欠になる。

 天の恵み(雪質の良質さ)を生かして世界中から評価されるスノーリゾートへの発展が大いに期待されている。

(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 
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