【焦点課題】JR九州 鉄道本部営業部営業課長 鷹野恵一氏に聞く


JR九州 地方創生の取り組み

D&S列車の魅力生かす 地元と共に観光地づくり

 ――現在の取り組みは。

 「JR九州は、観光列車を着実に展開してきた。国鉄から民営化した翌年の1988年から、デザイン(Design)と物語(Story)のある列車として、観光列車『D&S列車』の先駆けとなる『特急ゆふいんの森』の運行を開始した。現在は、九州全体で11種のD&S列車が走り、観光振興の役割も担っている。3月には、その代表的なD&S列車である『特急ゆふいんの森』が運行開始30周年を迎え、日田、由布院を中心に旅行会社や沿線の地域と連携したキャンペーンを6月末まで展開している。また、企業とのタイアップも進めている。昨年末からタカラトミーと協働し、子どもたちが夢の列車を描く『ドリームトレインコンテスト』(昨年12月から)や参加型のイベント『観光列車サミットin人吉球磨』(3月22、23日)を計画、実施するなど、九州の魅力を国内外に発信する新しい取り組みにも挑戦している」

 ――JR九州の強みは。

 「規模の小ささを生かした小回りが利く自由な環境だ。JR九州は、本州の他社に比べて地方に位置し、人口減少が進む地域にあるが、その逆境をバネにして、社内にはチャレンジする企業風土が浸透し、社員からは新たな発想が生まれている。厳しい状況だからこそ、常に危機感を持ちながら、知恵と工夫により多くの観光列車を生み出すほか、地域と一体となり観光振興に取り組むことができている。現在、全国に50を超える観光列車が走っているが、観光列車の先駆け企業として、引き続きけん引していきたい」

 ――7~9月に開催する熊本DCへの取り組みは。

 「熊本地震があり、まだ復興途上の中、創造的復興に向けて元気な熊本を日本中そして世界に知ってもらうことが狙い。1月3日にも熊本で地震があるなど、まだ不安への声はある。そのような声を払拭(ふっしょく)するため、さまざまなイベントやコンテンツを計画している。昨年は、プレDCとして『列車でいきなり 熊本ばケーション』という名でキャンペーンを行い、本番を見据えた観光PRやコンテンツ発掘を行った。今年の熊本は、玉名市ゆかりのマラソン選手、金栗四三を主人公の1人とする大河ドラマや10月に2試合開催されるラグビーワールドカップ2019、11月末から開幕する女子ハンドボール世界選手権など話題は豊富だ。DCは、ゴールではなく、スタート地点。国内外から多くの観光客を呼び込むためにも、コンテンツや受け入れ態勢を整備し、持続できる観光に向けてしっかりと準備していく」

 ――ラグビーワールドカップへの対応は。

 「まずは輸送機関としてしっかり運ぶ役割、責任を果たす。駅の看板の多言語化や駅内での外国語放送、翻訳ソフトが入ったipadを持った駅員による案内など、ハード、ソフトの整備を進めて対応したい」

 ――外国からは、どの地域からの客が多いか。

 「地理的なものもあるが、韓国、台湾、中国などを中心にアジアが多い。特徴として、韓国からはリピーターが多く、由布院のみに訪れるなど目的地を点に絞った旅行が多い。中国は、団体から個人へとシフトし、九州全体を巡っている。今後は、受け入れ、決済手段の整備など、九州全体での仕掛けが必要だ。昨年7月には、アリババグループと戦略的提携を結んだ。1日平均1千万人以上が訪問する旅行サイト『フリギー』での観光情報発信や、6億人以上が日常的に利用するオンライン決済『アリペイ』の利用環境の整備を行い、訪日消費の拡大を実現する」

 ――ここ2~3年での観光業界の変化について。

 「少子高齢化が進む一方でインバウンドが急増するなど、環境は日々変化している。九州に単純に来てもらうだけでなく、一段上のレベルが求められている。食べる、見る、体験するだけでなく、観光してもらうコンテンツを増やしていかなければならない」

 ――旅行商品の販売は。

 「今年度から旅行部門を組織改正し、下期からは基本的に商品造成は自社で行わず、連携を進めるJTBの商品をJR九州で販売する体制を取った。効率化を進め、好循環へとつなげる」

 ――販売全体のウェブ化について。

 「割引商品を切り出すと、ウェブと紙では新幹線は半分がウェブからの予約だ。一方、在来線や特急はウェブからが約2割と少ない。JR各社の取り組みも参考に、ウェブ化の深度化を進めていく」

 ――今後の取り組みについて。

 「九州新幹線の安定した輸送力と、D&S列車の魅力を生かし、お客さまの満足度向上、幅広い層の集客、リピーターの獲得に努める。九州7県との連携はもちろん、九州新幹線の西ルートなども見据えながら、地元と一緒になり魅力ある観光地づくりに取り組んでいく」

たかの・けいいち=1998年に九州大卒業後、九州旅客鉄道(JR九州)入社。鉄道事業本部サービス部課長、長崎鉄道事業部長崎駅長などを経て、2017年4月から現職。

【長木利通】

 
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