【旅館経営者座談会】あつみ温泉 たちばなや × 磐梯熱海温泉 ホテル華の湯 × 湯田上温泉 ホテル小柳 × 湯田中温泉 あぶらや燈千 × 指宿温泉 指宿シーサイドホテル

  • 2019年12月31日

観光経済新聞本社会議室で

生産性向上、人手対策と旅館経営は新時代に突入

 日々変化が続く業界の中、新時代に対応したビジネスモデルを築いている旅館・ホテルがある。生産性向上や人手不足など、課題にどう向き合って未来へつなげるのか。特色ある経営スタイルの旅館・ホテル経営者5氏にお集まりいただき、語ってもらった。(観光経済新聞本社で)

◎出席者(順不同)

佐藤鉄平氏(山形県・あつみ温泉 たちばなや 専務)写真=右から2人目

菅野豊氏(福島県・磐梯熱海温泉 ホテル華の湯 専務)写真=右から3人目

野澤隆義氏(新潟県・湯田上温泉 ホテル小柳 社長)写真=奥中央

湯本孝之氏(長野県・湯田中温泉 あぶらや燈千 社長)写真=左から2人目

有村淳賴氏(鹿児島県・指宿温泉 指宿シーサイドホテル 社長)写真=左端

司会=本社編集長 森田淳 写真=右端

ベビーへの対応強化 佐藤

夜観光推進で魅力増 湯本

 

 ――(司会)まず、自己紹介を兼ねてそれぞれの宿の特徴、経営の状況を伺いたい。

佐藤氏

 佐藤 山形県は、山と海の二つに地域が分かれる。当館のあるあつみ温泉は、日本海の海岸線から2キロほど山間に入った所にあり、清流温海川を中心に周囲を里山に囲まれた閑静な温泉地。客室は78室ある。歴史は古く、一番古い記録としては1650年のものが残っている。私自身は13年ほど前に帰ってきて旅館を経営している。6月18日の地震の影響は8月までは残ったが、9月からは1年前と同程度にまで戻り、今はほとんど影響を感じていない。現在は赤ちゃん連れでも安心できる宿を目指し、ファミリーやお子さま連れのお客さまを積極的に受け入れている。2018年にはミキハウス子育て総研が選ぶ「ウェルカムベビーのお宿」の認定を山形で初の施設として取得した。館内には子育て経験が豊富なスタッフが多数おり、対応を強化している。

菅野氏

 菅野 福島県の磐梯熱海温泉で旅館を4軒経営している。ホテル華の湯が162室、萩姫の湯栄楽館が54室、湯のやど楽山が20室、19年7月に取得した「五の香を感じる宿」浅香荘が18室ある。大学を卒業した後は外食業で働き、1997年に入社した。入社後は約5年間、東京営業所で旅行会社向けの営業を経験し、その後に現地へと戻った。4軒全てが同じ温泉地にあるので、どこのお客さまも4軒の温泉を使えるほか、各宿に特徴付けを行うなど、個性的な旅館経営を行っている。東日本大震災から8年がたつが、稼働率は以前の80%ぐらいまでしか戻っていない。一方、外国からの知名度は低く、ウェブで福島の検索をしても、まだ原発事故の情報ばかり掲載されているのが現状だ。掲載情報の在り方や情報発信を、県と一緒にどう対応するか検討していきたい。

野沢氏

 野澤 新潟県の奥座敷である湯田上温泉に旅館がある。温泉地に旅館は4軒しかないが、歴史は280年と長い。旅館の創業は大正元年で107年目となる。中規模旅館で客室は65室だ。都市部への知名度はまだ低く、利用者は県内比率が8割強と高い。中でも新潟市や県央地域の30キロ圏内の人が7割を占め、地域密着型で経営をしている。観光客に郷土料理を提供しているが、地元のリピーターが中心のため、飽きられないために北海道フェアを行うなど、地域にとって目新しい企画も実施している。ランチと風呂がセットの日帰りの需要も高い。予約は、7割が直予約。旅行会社経由では、リアルエージェントよりOTAが最近増えてきている。

湯本氏

 湯本 長野県の北信に位置する湯田中温泉に旅館がある。客室は35室で、2002年から2、3年ごとに新しい施設を作っている。最近だと2016年に屋上にルーフトップバーを作り、18年にはロビーを全面リニューアルした。改装に合わせて単価を少しずつ上げている。近くにはインバウンドに人気な観光名所「スノーモンキー」があり、3、4年前から稼働状況が激変している。外国人は、オーストラリアとアメリカからが多く、比率は20%を占めている。これまではクリスマスをはじめ、冬は閑散期で休館日を設けるほか、社員を休ませる期間としていた。今では繁忙期に近いぐらい稼働率が上がっている。また、新しい飲食店、大手の会社が参入するなど、地域も活気付いている。今後、スノーモンキーだけでは長くは持たないと考えている。現在は、ナイトタイムエコノミーの取り組みを推進し、スノーモンキーとルーフトップバーを組み合わせた商品で魅力をアピールしている。

有村氏

 有村 旅館は、鹿児島県指宿の鹿児島湾に沿った場所にあり、客室は104室、リゾート型のホテルだ。指宿で有名な砂むし温泉も館内で毎日稼働している。地域ではあまりない露天風呂付きの客室を最上階に設けているのも特徴となっている。昔から企画募集型のツアーや比較的安価な値段で数をさばいてきたが、今では大きくマーケットが変化し、個人や小グループへの個別対応が求められるように。オペレーションでは人手不足もあり苦労している。また、九州新幹線が開通したり、18年は大河ドラマ「西郷どん」が放送されるなど、大きなイベントが定期的に発生する地域でもある。地域では、日帰り客は年によって増減しているが、一方で宿泊客は減少の一途をたどり対策が迫られている。交通アクセスのハンデもあるが、イベントを活用した地域おこしを、町ぐるみで行っている。

 

保育を支援し定着化 菅野

環境整備で雇用拡大 野澤

期限を決め問題解決 有村

 ――旅館経営の課題と、その解決策は。

 佐藤 一番の課題は、人手の問題だ。30代、40代という中間層が少なく、ベテランと若手の両極端な構成で、年齢が偏っている。現在は、若手を役職者に登用するなどして、少しずつ若返りができてきているが、調理人と着物を着て接客する客室係はまだまだ人手が足りていない。客室係は、OGがパートで入って回せてはいるが、いずれは卒業する。若手を確保して育てるためにも、まずは待遇の改善など根本的なことから取り組んでいる。人手不足を解消するには人材を採用することが解決策の一つではあるが、まだ外国人の採用は行っていない。働き方にまだまだ無駄がある。まずそこを整理する。マルチタスクやIT化など、少ない人数で回すやり方を追求しながら、少し補充するイメージで考えている。

 菅野 サービスレベルと生産性向上、人手不足の三つは一緒にして考えなければならない。震災後の3月12日にはお客さまはゼロとなり、賃金も払える予想もできず、社員を大勢解雇した。人が減り、食事の提供はバイキングへとスタイルを変えた。以後、多くいる新入社員のサービスレベルを上げるべく、私自身が接客の指導を行い、マニュアルを作り、レベルアップを図った。15年には、人の定着化を目的に、保育園を自社100%の出資で作った。朝7時から夜6時の間で開けて、26人の子どもを預かっている。結果、OGなど出戻りの人も増えた。教育は今、そのママさんたちが後輩の指導に当たっている。生産性向上に向け、情報の共有化も進めている。17年から「情報伝達一元化システム」と名付けてスマートフォンを持たせ、アプリで情報を共有する仕組みを取り入れている。ワウトークというアプリを使用し、セグメント化して情報共有を行っている。写真で確認、指示を行うほか、手が空いた人が対応するなど、お客さまへのサービスのスピード化が図れている。社長、副社長は「いいね」以外はコメントをしない暗黙のルールを設けているが、社長の「いいね」がやる気につながっている。

 野澤 経営者が実現可能な投資とちょっとした改善を進めている。生産性の効率化を図るため、16年から改善カードを全部署に配布している。社員には小さな気付きを記入して提出してもらい、細かくだが改善できている。サービススタッフには、スマートフォンを持たせ、総合管理システム、インカムも導入している。情報伝達がスムーズになり、飲み物の付け落ちも少なくなった。今は導入してなかったらどうなっていたかと思うぐらいだ。サービスの精査も行った。呈茶を廃止し、ラウンジで無料ドリンクのサービスを始めたが、クレームはほとんどなかった。新しい取り組みとしては、県内比率が高いこともあり、気軽に月に2回来れるような商品の開発も行っている。客室に案内しない、最初から部屋に布団が敷いてあるプランなど、人手が掛からず、値段が魅力的なプランを作るなど工夫している。人手に関しては、一番動ける10年選手など中間層があまりいない。働き方はマルチタスクを導入し、外国人の採用も行っている。日本旅館協会や全旅連のサイトを活用しながら、応募者を増やしている。外国人の採用には、Wi―Fiの整備を行うなどコストは掛かるが、今後も継続して採用していく。外国人が良い悪いではない。本当に人手が足りないのだ。

 湯本 最大の課題は採用と定着だ。7、8年前から新卒採用を始め、5、6年前だと東京で会社説明会を行うと30人ぐらい学生が集まったが、3年前ぐらいからは、当日ゼロ人となるなど、急激に集まりが落ちてきた。19年からは中途市場のチャネルを少しずつ増やしている。本当は、新卒で採用して宿のカラーで働いてくれる人が良いが、5、6年をピークに結婚や転職が多くなり、定着しないのが実情だ。今後は定着に向け、目標を持たせて自身の成長が実感でき、自己実現できる職場を目指す。15年からは評価制度も取り入れ、採用、目標、育成、評価の一連のプロセスを作り、社内で運用できる体制をとっている。評価制度は毎年変え、組織の成長に合った内容にしている。会社にいる目的を失わないように、社員にはスマートフォンを持たせ、社内の情報共有以外に、定期的に会社のビジョンや理念、将来の事業計画などを伝えている。日々の仕事が会社の将来につながるという自覚をもってもらうことは大切だ。社員のモチベーションや成長が会社の成長につながることを、常にやらなければならないと考えている。

 有村 営業、調理、総務、料飲・サービスに分けたプロジェクトチームをそれぞれ立ち上げ、月に2回ミーティングを行っている。最初はコンサルの協力も仰いだが、今は自分たちで回している。生産性向上にしろ、人手不足の問題、インバウンド、管理も含めた全てを、管理職を中心に期限を決めて問題解決に取り組んでいる。プロジェクトチームの意見で出た中で実施、検証をして、それでよかったら継続している。生産性向上でいうと、ITの導入は良く言われるが、初期コストが掛かり、できるものとできないものがある。気を付けてできるものは、意識を改善して対応している。インカムなど、手軽に導入ができ、情報やサービスのスピード化など費用対効果の高いものは取り入れている。また、マルチタスクを徹底している。経理スタッフが食事会場に、布団敷きにフロント、予約から入るなどしている。ヘルプだと行かされている感が出るので、業務として行っている。外国人スタッフは比較的早くから受け入れている。7、8年前に台湾の大学生をインターン生として受け入れたことが縁で、多い時は十数人、少ない時で3、4人がインターンで来ている。正社員になった者もいる。20年はスリランカから男性4人が来る予定で、インターナショナルな形になりつつある。特定技能の取得を目指す人をベトナムの教育センターに見に行くなどし、視野に入れている。地域でも受け入れが可能な組合を地元で探し、コンタクトしている。

 

浴衣姿の風景を発信 佐藤

産業観光で地域PR 野澤

 ――自館の将来ビジョンについて伺いたい。

 佐藤 旅館のビジョンとはずれるが、一生懸命取り組んでいるのは、温泉地をどう魅力的にするかは常に考えている。15年前から温泉地内で議論が行われ、足湯などハード面の整備は済んだが、ソフト面はまだ足りていない。各旅館が単体でお客さまを呼ぶのではなく、地域であつみ温泉に行きたいという形を作らなければならない。最近は、7軒ある旅館だけでなく、町にある菓子屋さん、土産屋さんとも協力し、温泉地の魅力を高めている。また、若い人を中心に議論を進め、専門家を呼んで勉強会を行うなどし、改善に取り組んでいる。今は、「温泉地に浴衣のお客さまがたくさん歩いている風景」を目指している。浴衣姿で出掛けると温泉街で特典が付き、その浴衣姿自体が町の魅力となり顧客も町も両得になる仕組みだ。私の旅館では、通常の浴衣のほかに、色浴衣を無料で貸し出している。浴衣姿で館内や温泉街を歩いてもらえると、温泉らしい情緒が出て、絵になる。楽しそうな浴衣姿の人が温泉街にあふれることで、その風景が情報となり拡散し、「あつみ温泉に行ってみたい」へとつながるはずだ。

 菅野 17年に一連のコンベンション、食事会場の改修を、平日の売り上げ増を目的に行った。今まで、お客さまの30%がコンベンション、会議を伴った宿泊だった理由からだ。繁忙日の稼働は、もう上がらないので、平日の稼働率を上げるため、700平米の会議場を増築し、コンベンションの誘致に力を入れている。誘致は19年で2年目となるが、平日の稼働率は上がり、会議、パーティー関係などの利用が増えている。コンベンションの特性で数年先の予約も入っている。今後4軒ある旅館も、もっと特徴付けをしていきたい。浅香荘ではオールインクルーシブを導入している。生産性を上げるため、ロビーラウンジにいろんな備品を設置するなどし、客室には布団敷き以外は入らないことにしている。OTAから10~15人のグループや、同級会30人の貸し切りなどが入ってきている。一度料金を払ってしまえば幹事は何もしなくて良いことが好評で、運営面での効率も良い。経営のスタイルはできるだけシンプルにし、将来誰が経営しても良いような形にしていきたい。また、旅館は日本文化を提唱する業種でもある。地域の子どもたちに旅館を使ってもらい、もっと日本文化に触れてもらいたい。礼儀作法、風呂の入り方、箸の持ち方など教えられるものは多い。今は地元の小学生向けに年に2時間の授業をもらっているが、全国の子どもたちに旅館の良さを教えたい。

 野澤 湯田上温泉の裏山には3万株のあじさいがあり、弁当を持って登る人が大勢いる。日帰りでは意味がない。ナイトタイムエコノミーではないが、泊まらないと魅力が分からないということを増やさなければならない。ゴルフ場に咲く桜や寺にある竹林のライトアップなど、季節ごとに楽しめるものを近隣住民とともに取り組み始めている。自社では、18年にロビーを全面的に改装した。燕三条などの県央地区は、職人が多い町だ。職人の製品をロビーに飾り、見てもらうことで産業観光にもつながるし、製造業の人たちのモチベーションにもなっている。今後は、県央地区が面となり産業観光を進めるため、湯田上温泉、弥彦温泉などエリアを広げて取り組みを行い、PRしていく必要がある。地域として誇れる部分をしっかりPRすることは、インバウンドの誘致にもつながってくるはずだ。

 湯本 事業ビジョンとしては、あぶらや燈千の1軒隣に旅館を既に取得しており、小規模高級旅館を作る予定だ。旅館を多店舗展開するよりは、新規の旅館を含め、多角化を考えている。例えば、レストランやツアー会社など、観光産業、観光周辺産業に広げ、シナジーを生む事業展開だ。宿泊施設のビジネスモデルは1日の売り上げの上限が決まっており、生産性をぐっと上げることは難しい。旅館外の売り上げはリスクヘッジの意味もあるが、売り上げの幅を広げ、利益率を上げることが結果的に生産性の向上、働き方のバリエーションにつながる。組織のビジョンとしては、働きがいがあり、働きやすい会社を目指す。時短勤務やテレワークも含めて考えている。働く人が成長し、生活が豊かになることを会社として示していけるように、環境面とモチベーションの両方をバックアップしていきたい。今後は、BtoCだけでなく、BtoBも視野に入れている。地域の活性化とビジネスを結び付け、互いが良くなれるようなモデルも作っていければと考えている。

 有村 耐震の問題を抱えている。18年は設立50周年を迎えた。今まで複数回リニューアルを行っているが、施設の老朽化は否めない。耐震工事を施しても耐用年数自体は伸びないので、建て替えも視野に入れ、今後のマーケットや建設コストなどを考えながら対応していく。今後についてだが、将来的に二つのキーワードが軸になると考えている。コンベンション(温泉MICE)とインバウンドだ。コンベンションホールなどの施設は、自館で今から建てることは厳しい。地元自治体との協力が必要だ。自館だけが努力して地域が衰退しても意味がないので、街ぐるみで連携し、観光施策を話し合わなければならない。インバウンドについては、リスク回避の観点から、一国からではなく複数国からバランスよく取り込む必要がある。一方で、東京オリンピック・パラリンピック以降、そのまま伸び続けるかは、不透明なのでさまざまな対策を講じなければならない。いろんな産業にリスクヘッジを含めて取り組み、収益性を高めていきたいが、何せ宿屋しか分からないので全く違ったフィールドへの参入はすぐには難しい。メインの旅館は残しながら、閉める宿を譲ってもらい、宿泊に特化した宿に改装して運営し、稼いでいくことも考えている。そこでかき集めた資金で、別の事業に手を広げていくのが理想だ。海外に日本文化の輸出として旅館を築くのも一つだろう。アジアには平均年齢が20代の国も多々ある。これからの発展を考えると、リスクもあるがそのような攻めの発想も必要だ。

 

地元高齢者を生かす 菅野

多角化進め課題解消 湯本

地域で連携し誘客を 有村

 ――国内観光活性化への提言をいただきたい。

 佐藤 まずは先輩方のお話を伺ってから。(一同笑い)

 菅野 町の人口が6千人を切っている。そこに年間76万人の観光客が訪れている。本来はもっと観光客を増やすべく動く人が必要だが、町を良くしようという団体がなくなっている。旅館青年部も2人となり、今は商工会と旅館が一緒になって動いている。今後は、たくさんいる高齢者の活躍が鍵となる。私は、劇場型温泉ができないかと考えている。現在2カ所ある市営の足湯には年間3万人が利用。中学生が朝早く清掃するなど、住民が清掃する仕組みもできている。地元住民はそこに浸(つ)かる。なんとなく観光客と話しているが、これをどうにかシステム化したい。地元の高齢者に日替わりで足湯にいてもらい、観光客が来たら声を掛ける仕組みだ。話の内容は、名物料理を食べたか聞くなどで良い。高齢者をわざと配置して来訪者とのコミュニケーションをとる。これが町の魅力となるはずだ。将来的に旅館だけを目指して来る人はそれほど増えないと思っている。新たな観光地を作るのも難しい。旅館は装置産業ではあるが、永遠に商品を整備するには限界がある。住民を巻き込んで交流人口を増やし、町ぐるみで迎える仕組みを作り、町を活性化していきたい。

 野澤 昨今、バリアフリー補助金の1次、2次申請があり、1次は客室改装で使わせていただき新しくしたが、2次はパブリックスペースで申請したが不採択だった。出国税が19年1月から始まるなど、観光における新しい財源も生まれている。数多くの旅館がなくなっていく中で、できれば小規模の旅館など宿泊施設にもう少し手厚く補助金を出せるようにしてもらいたい。中規模以上だと、後継者はある程度育てられるだろうが、小規模では後継者が見つからず、ほとんどは廃業に追い込まれている。まだまだ良い場所にある良い宿がたくさんある。そのような宿を救う解決方法は何かないだろうか。

 湯本 やはり、宿泊業界の課題として大きいのは、人材不足と後継者不足。宿泊業で働く魅力というものをもっとわれわれが一つずつ作り上げ、観光業で働きたいと思う人材を増やさなければならない。飲食宿泊業は常に人手不足がワーストワンであり、この調子だと、働く人がますます少なくなり、今後東京オリンピック・パラリンピック、ワールドマスターズゲームズ2021関西、大阪万博とイベントが続き、海外からたくさんの人が来るが、人材不足から予約を制限しなければいけなくなる可能性がある。魅力ある職場であり、観光で働くことが魅力的であることを伝えなければならない。そのための生産性向上でもある。宿泊産業は労働集約型であり、生産性がそもそも低いモデルだ。宿泊業で働くことそのものがやりがいであり、給与ももらえるという基盤を作り、業界で働いてほしいと呼び込むことを、自社でも目指してやっていきたい。多角化を行い、独立制度も作っていければ後継者不足も解消できるかもしれないし、そういう形を築き上げていきたい。

 有村 観光活性化の議論の中で、人口減少の問題は欠かせない。観光業だけでなく、日本経済全体の問題でもあるが、よほどの厚生面などの改善がない限り、われわれ宿泊業の就業者数の減少は止まらないだろう。人手不足は今後より厳しいものとなるはずだ。一方、人手不足解消の成功事例として週休3日制を導入した旅館があると聞いた。これは今の当館単独では難しい状況で、地域全体で考えて取り組まなければならない。われわれと同等レベルの旅館が指宿市内にあるが、連携して休館日を交替しながら作ることも一つだ。このほか、地域単位で考えると、共同仕入れによるコスト削減も可能で、収益に直接つながる。今後も、勉強会やネットワークを使った情報収集を業界が一丸となりやらなければならない。先ほど、インバウンドは大事だと言ったが、これも点や線だけではなく、面で売らないといけない。行政単位でのPR活動は多く見受けられるが、実際に外国人観光客が多く来ているのは都市部や元から知名度がある場所に集中している傾向がある。航空路線の確保など交通施策から検討し、複数の隣県同士が連携した誘致施策に取り組んでいかなければならない。

 佐藤 地域が注目される中、元気な高齢者には活躍してもらいたい。お客さまは、地域の人とのちょっとした会話などの交流を楽しまれるので、自然体でどんどん交流してもらえたらいいと思う。小さい旅館の廃業の話題も出ているが、あつみ温泉でも廃業した旅館がある。自助努力があってのものだとは思うが、頑張っている小さい旅館を応援するような仕組みがあると、日本文化を守ることにもつながるはずだ。

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