【専門紙誌5社共同企画】各紙誌の視点で見る熊本地震からの復興 ハウジング・トリビューン 「繰り返し」への耐震性 熊本地震でクローズアップ


 熊本地震で大きくクローズアップされたのが「繰り返しの巨大地震」に対する耐震性である。

 熊本地震における住家被害は全壊8273戸、半壊3万1052戸、一部損壊14万1162戸に達する(平成28年10月19日時点)。この大きな被害を生んだ大きな理由の一つが、14日に発生した前震と、16日に発生した本震という2回の大きな揺れだ。益城町では前震・本震ともに震度7を、西原村は前震で震度6弱、本震で震度7を観測した。前震で震度6弱、本震で震度6強を観測したのは熊本市、宇城市、西原村だ。建物被害が集中した益城町、西原村、南阿蘇村などでは、前震で大きな著しい被害を受けていなかった建物が本震により被害を拡大したとみられる。また、益城町役場で記録された本震の地震波(加速度)は、建築基準法で想定する倍以上のものが観測された、観測された震度よりも大きな揺れが発生していた可能性も指摘されている。

 国土交通省が設置した有識者会議「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」が2016年9月にまとめた最終報告書では、木造建築物の被害について、益城町中心部で地震動が大きく建築物の被害が著しい地域の悉皆(しっかい)調査を分析している。旧耐震基準の木造建築物の倒壊が28.2%(214棟)と多いだけでなく、新耐震基準の建築物も10.9%(83棟)もの倒壊があった。新耐震基準導入以降で倒壊した建築物の要因としては、現行規程の仕様となっていない接合部を確認できたものが73棟と最も多い。さらに、震源や地盤の特性に起因して局所的に大きな地震動が建築物に作用した可能性があることも指摘された。

 1950年に制定された「旧耐震基準」は、1978年の宮城県沖地震をきっかけに81年に改正され「新耐震基準」が制定、さらに1995年の兵庫県南部地震を踏まえ2000年に改正されたのが現在の「2000年基準」である。2000年基準では、基礎や壁の強さが建物全体で均一であることや、接合方法などを明記した。

 一般的に、1回の地震に耐えることができても、過去からの地震のダメージが蓄積され、繰り返しの地震が発生することで倒壊などのリスクが高まるといわれている。ただ、耐震基準は繰り返される大きな揺れは想定していない。たとえ耐震基準をクリアしていても大きな揺れによって釘やビスが緩んだり破損し、2回目の地震で倒壊する可能性がある。一見被害がないように見えても、建物内部がダメージを受けていることがある。

 住宅性能表示制度において、建築基準法が求める耐震性は等級1に相当する。巨大地震に耐え、継続使用できる住宅を実現するためには等級3以上とする必要があると指摘する学識者もいる。

 こうした中、住宅業界では制震装置の提案が加速した。制震は地震エネルギーを構造躯体に組み込んだ制震装置で吸収、建物へのダメージを減らすことができることから、繰り返しの地震にも強さを発揮する。近年、巨大地震の発生が相次ぎ大きな被害が発生する中で制震装置を標準化する住宅事業者も珍しくはない。

(ハウジング・トリビューン)

 
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