【口福のおすそわけ 519】食鳥肉専門店 竹内美樹


 「絶対おいしそう」という勘って、結構当たると自負している。車通勤の筆者、いつも通りかかる店が気になっていた。帰りは反対車線側なので、車だと手前で右折して迂回(うかい)しないといけないから、やや面倒だ。でも、その価値はあると踏んでいた。「鳥末」という看板には、左右に「鶏肉加工」「やきとり」とある。鶏肉屋さんが焼き鳥も売っているのだろう。お昼時や夕方には、いつも行列ができているから、マズイわけがない。

 数年前の初訪問時、店のシステムを知らずに行ったら、大いに待たされるハメに。というのも、焼き鳥はデパ地下のように焼かれた状態で並んではおらず、注文してから焼き始めるのだ。どうりで、待つ人のための椅子が、店の内外にある。店に入ると生の焼き鳥のガラスケースのほか、「地養鳥」「大山どり」「水郷赤鶏」など銘柄鶏のケースもあり、専門店なのだと実感。待っている間に観察していると、「電話した〇〇です」と商品を受け取りに来る客がいることに気付いた。注文後店で焼き上がりを待つより、予約注文の方がいいに決まっている。次回からそうしよう、なんて思っているうち、「お客さま」と声を掛けられた。

 出来たて熱の焼き鳥が入った袋を持ち帰り、速攻家のみ。なんたって、温め直す必要がないからありがたい。脂がジューッと焼けて、皮パリがおいしい手羽先とボンジリだけはトースターで焼き直すが、ほかはそのままで超美味。焼き鳥は、レバー以外断然塩派の筆者、同店ではそれぞれ塩かタレを選べるのもうれしい。

 イチオシは「ニンニク」。ねぎまのネギの代わりに、粒のままのニンニクが入っている。ニンニクはいったんゆでてあるのか超やわらかで、鶏肉のうまみとの相乗効果で激ウマ! もう一つは「梅じそ」。ササミに巻かれた練り梅と青じそが香り、しっとりやわらかジューシー♪ いずれもモチロン塩だが、タレで注文すると、追いタレを付けてくださる。

 後日、お昼はお弁当も販売していると知り、行ってみるとやはり作り置きはなく、注文を聞いてから親子重などを作っていた。コレはかなり待たされるぞと、唯一出来上がっていたカツサンドを購入。驚きのボリューム感で、小サイズでやっと食べ切れるくらい。これでもかと分厚い鶏むね肉のカツとキャベツの千切りが挟んであり、ソースタップリなのでパンにしっとりなじんでいるのがイイ。むね肉なのに全くパサつかずウマイ。以来、たまに無性に食べたくなる。

 コロナ禍の折、抗菌加工されたマスクケースをいただいた。「東京都食鳥肉販売業生活衛生同業組合」と記されており、鶏肉は安心・安全、ヘルシーでおいしいという同組合の啓蒙活動の一環として配布していたようだ。それだけ鶏肉に特化した専門店ゆえ、同店ではカツといえばチキンカツ、メンチカツもシュウマイも鶏ひき肉で作られている。結局いつも同じ焼き鳥ばかり買っちゃうから、今度はメンチカツや唐揚げも試してみたいな♪

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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