【マンスリーリポート 観光の現場 30】オーバーツーリズム、 京都市・海外で対策進む

  • 2019年7月4日

「持続可能な観光へ」

 観光客が集中し、観光資源や市民生活に負の影響を及ぼす「オーバーツーリズム」。外国人旅行者の増加に伴い、日本でもこの問題が各地で叫ばれるようになった。「持続可能な観光地経営」を目指すため、対策を真剣に検討すべきとの声が高まっている。

 日本観光研究学会がこのほど行ったシンポジウムでは、この問題をテーマに当事者が現状と対策を述べるとともに、研究者が世界各国の対策事例を紹介した。

 年間宿泊客数が1557万人。そのうち外国人が353万人と、いずれも過去最高となった京都市(2017年)。とりわけ外国人宿泊客数が13年比で3.1倍と、急激に増えている。

 同市産業観光局観光MICE推進室の福原和弥・観光戦略担当部長は、京都観光を巡る問題点の一つに「市バス・一部の観光地の混雑」を挙げた。

 多くの観光客が市営の路線バスを利用し、住民の利用に支障を来していることから、市では混雑緩和に向けた取り組みを17年から順次行っている。例えばバスの1日乗車券を大人500円から600円に値上げ、地下鉄・バスの共通1日乗車券を同1200円から900円に値下げし、観光客を比較的利用の少ない地下鉄に誘導している(18年3月から)。

 また試験的取り組みとして、バスの座席の一部を撤去し、大型の手荷物が置けるスペースを確保(今年3月から一部路線で)。観光路線と生活路線のバスの停留所を一部で分離している(今年のゴールデンウイークに実施)。

 観光地の混雑対策では、時間、時期、場所という「三つの集中」の分散化に取り組んでいる。

 「時間」では「朝観光」「夜観光」の推進。7、8月の2カ月間、通常午前8時45分のところ、午前7時に開城時間を繰り上げた二条城の早朝観光や、夜の露地をライトアップする「京都・花灯路」が好評という。

 「時期」では冬と夏の閑散期におけるキャンペーンの実施。前述の京都・花灯路(冬)や、笹飾りやライトアップで街を彩る「京の七夕」(夏)など、さまざまな仕掛けを行っている。

 「場所」では人気観光地以外への誘客推進。市内各地の「隠れた魅力」の発掘と情報発信に努めているという。

*   *

 海外におけるオーバーツーリズムの事例を述べたのは日本総合研究所調査部の高坂晶子氏。バルセロナ(スペイン)、アムステルダム(オランダ)、ボラカイ島(フィリピン)、パラオ、ガラパゴス諸島(エクアドル)、ヒマラヤ(ネパール)の6都市・地域の現状と対策を説明した。

 年間観光客が3200万人(16年)と、人口(161万人)の約20倍の観光客が殺到するバルセロナでは、抗議デモや観光バスへの襲撃など、市民による観光客の排斥運動が起きている。

 オーバーツーリズム対策が15年の市長選挙で争点となり、投票の結果、観光客の規制積極派が当選。「超過観光税」の導入、旧市街での観光中心のホテル営業禁止など、オーバーツーリズム対策を相次いで打ち出している。

 太平洋の島国パラオでは、観光客の集中による海洋汚染、生活環境の悪化が問題化。観光が主要産業のため過度の規制を行うことができず、観光ビジネスにダメージの少ない問題解決策を模索した。

 打ち出した一つが、同国の自然と文化環境を保護する誓約の義務付け。「パラオ・プレッジ」と呼ばれるもので、観光客らに入国時、この誓約に署名してもらう。違反した場合は最大100万ドルの罰金が科されるが、17年12月の導入以来、適用された例はないという。「観光公害」への新たなアプローチとして、国際的に注目されている。

 フィリピンの人気リゾート、ボラカイ島も外国人観光客の増加に伴い海洋汚染が進んだ地域だ。強硬派で知られるドゥテルテ大統領は18年4月、問題解決に向けて同島ビーチの閉鎖を強行。同年10月に一部を再開したが、今後は年4回程度の閉鎖期間を設ける予定だという。

【森田淳】

 
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