【マンスリーリポート 観光の現場 24】外国人就労の拡大へ法改正 宿泊業、受け入れ準備


4団体が技能試験センター設立

 旅館・ホテルで外国人材が活躍する機会が増えそうだ。政府は、即戦力となる外国人材の就労を拡大する新たな在留資格を創設し、法改正を経て来年4月の制度開始を目指している。受け入れは人手不足が深刻な業種に限られ、国が今後決定するが、宿泊業は対象業種として有力だ。宿泊業4団体は、新たな法人「宿泊業技能試験センター」を設立し、新制度の活用に必要とされる技能試験の準備を進めている。

 宿泊業への外国人就労は、留学生のアルバイトなどを除けば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を取得した通訳などの専門的・技術的分野の業務に限られる。これに対して新たな在留資格は人手不足への対策が目的で、幅広い業務への従事が可能とみられる。

 政府は、臨時国会に新制度の創設を盛り込んだ出入国管理法の改正案を提出する。新たな在留資格は「特定技能」。当面受け入れの中心となりそうな「特定技能1号」の取得要件は「相当程度の知識または経験を要する技能」や一定の日本語能力。在留期間は最長5年で家族の帯同は認めない。政府は「移民政策」と区別するために在留期間や家族帯同に制限を設ける。

 新制度の対象は、生産性向上や国内人材の確保に努力しているにもかかわらず、産業の持続、発展に外国人材の受け入れが必要と認められた業種。制度設計の初期から、宿泊、介護、農業、建設、造船の5分野が検討対象に挙がっていた。

 対象業種の選定について菅義偉官房長官は、改正法案の骨子が公表された12日の会見で「現時点では各省庁から法務省に介護、農業、建設、造船、宿泊など十数業種について今回の法案に関する外国人の受け入れを希望する意向が示されている。これについて法務省と担当省庁が検討する」と説明。宿泊業は制度開始時点の有力な受け入れ業種の一つとみられる。

 新制度に基づく宿泊業での外国人材の活用について、観光庁の田端浩長官は16日の専門紙向け会見で、「宿泊業は(検討対象の)5業種の一つに入っており、これまでも宿泊業団体と対応を相談してきたが、出入国管理法の改正に向けて、今後も連携して取り組んでいきたい」との考えを示した。

 宿泊業界では、日本旅館協会、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)、日本ホテル協会、全日本シティホテル連盟の4団体が、人手不足やインバウンド対応を背景として、2016年10月に「宿泊業外国人労働者雇用促進協議会」を設置。観光庁の担当者をオブザーバーに迎えながら、外国人材の活用策を模索していた。

 宿泊業4団体は、政府の制度改正への動きを踏まえて、協議会での検討を具体化。9月27日に共同で「一般社団法人宿泊業技能試験センター」を設立した。新たな在留資格の取得には、外国人材個々の技能などを確認する試験が業種ごとに必要とみられ、同センターで技能試験の運営を担うことを想定している。同時に、技能実習法に基づく技能実習生受け入れの2号移行対象職種への宿泊業の追加も目指す。

 同センターは全旅連の多田計介会長を理事長に、日本旅館協会の北原茂樹会長ら4団体から選出された理事4人が就任。事務所は東京都千代田区の全国旅館会館に置く。当面の運営は、宿泊業外国人労働者雇用促進協議会(事務局・日本旅館協会)で検討しながら進める。

新たな在留資格の制度に期待

全旅連の多田計介会長

 来年4月の新制度の開始に向けて、宿泊業技能試験センターの業務については、スピード感を持って行動していきたい。全国の旅館・ホテルの皆さまのお役に立てるよう取り組む。

 全旅連としては、外国人労働者の発地のメインになるであろうベトナムの政府、9大学と人材受け入れに関して調印を行ったところだ。種はいずれ大きな花を咲かせるはずだ。

◇  ◇

日本旅館協会の北原茂樹会長

 宿泊業をはじめ産業界の人手不足を背景として、政府が外国人就労の拡大に大きくかじを切ったことはありがたい。法改正を見据えて、宿泊業団体はもとより、政府、関係団体と連携して受け入れの準備を進めたい。

 外国人労働者の活用では、個々の旅館・ホテルの受け入れ態勢が重要になる。従業員教育や日常生活の支援などが欠かせない。旅館・ホテルの業務は高いスキルが求められる仕事ばかり。日本人客に満足してもらい、インバウンド客に安心感を持たれるような人材の育成が必要だ。外国人労働者にプライドを持って働いてもらえるよう環境を整備したい。

 
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