掛け流しの湯と庄内の食
第877回よその旅館ホテル
──歴史のある宿だそうですね。
「創業は300年余り前と言われています。幕末には、江戸の市中警護を任されていた庄内藩の江戸引き上げに伴い、浪士組『新徴組』が庄内に移ってきましたが、湯田川温泉の旅館、民家に分宿した際、当館がその本部として使用された歴史があります。当館には当時の書簡や弾薬箱が残っており、ロビーに他の資料とともに展示しています。『新選組』が有名ですが、『新徴組』の歴史も知ってもらいたいです」
──温泉は。
「加水なし、加温なし、循環なしの源泉掛け流しです。泉質はナトリウム・カルシウム—硫酸塩温泉で、湯から上った後でも、体が冷えず、ぽかぽかすると評判です。湯田川温泉は、湯から多量の『溶存水素』が確認された全国でも珍しい温泉と言われ、さまざまな効能が期待されています」
──料理は。
「湯田川温泉は、海にも近い温泉地ですので、海の幸も、山の幸も季節それぞれの食材が楽しめます。海の幸では、底引き網漁で獲れるクチボソガレイが自慢です。秋田を連想する人が多いハタハタも伝統的な海の幸です。山形の名産である食用菊も、さまざまな料理でお出しします。もちろん『つや姫』などの庄内の米も味わってもらいたいです」
──客層は。
「地元、庄内地方のお客さまが5、6割を占めます。他は山形県内各地、関東、宮城県、福島県などの方が多いですね」
──客室は。
「広さは大小ありますが、合計9室の小さな宿です。標準的な宿泊プランは1泊2食付き1万円前後からです。この他に、料理は少な目で十分という方のためのプランなどもご用意しています」