「私たちを思い出して」 コロナ禍の温泉地、常連客に温泉水のギフト


温泉をペットボトルに詰める旅館組合青年部のメンバーら

 コロナ禍で外出の自粛が叫ばれ、気軽に旅行へ出掛けられない現在、ユニークな事業に取り組んでいるのが長野県千曲市の戸倉上山田温泉だ。常連客らに源泉からくんだ温泉水などのギフトを送付。「自宅の風呂の湯に足して、私たちを思い出してほしい」と、自らの存在をアピールするとともに、事態収束後の再びの来訪を期待している。

 「リメンバー湯(ユー)」と名付けたこの企画は、米国出身で同温泉「亀清旅館」若旦那のタイラー・リンチ氏が発案。戸倉上山田温泉旅館組合連合会の同事業実行委員長で「有田屋旅館」社長の柳ケ瀬貴一郎氏が中心となり事業を進めた。

 源泉から流れる湯を旅館組合青年部のメンバーらが容量500ミリリットルのペットボトル1本1本にていねいに詰めた。合計300本分を用意。これに温泉街の土産店や飲食店で使える割引・サービス券をセットにして連合会加盟の旅館26軒がそれぞれの常連客らに送付した。

 事業は3月下旬から実施。好評だったことから、今月17日からは希望する一般の人へのギフトの送付を始めた。50人分を用意し、今月末まで信州千曲観光局で送付の希望を受け付けている。

 戸倉上山田温泉は開湯120年を超す長野県を代表する温泉地の一つ。「善光寺参りの精進落としの湯」と古くから親しまれている。温泉街は昭和レトロの風情を残す一方、近年は自転車で付近の里山を巡る着地型ツアーの催行など、新しい取り組みにも力を入れている。

 ただ、新型コロナの影響を同温泉も例外なく受け、2020年度(4月~21年3月)の宿泊客数、日帰り客数の合計は前年度比50・0%減のおよそ28万6千人と大きく落ち込んでいる。

 実行委員長の柳ケ瀬氏は「『行きたくても行けない』というお客さまの声が多い。ギフトはそんな方々への”ラブレター”のようなもの。まずは自宅で温泉を体験して、感染が落ち着いた際には戸倉上山田を旅行先の第一候補として考えていただければ」。

 タイラー氏は「温泉宿を守ってきた者として、皆さんには温泉を忘れてほしくないという思いがある。温泉水の硫黄の香りで私たち戸倉上山田温泉を思い出してほしい。感染が落ち着いたらまたお越しになって、心身を癒やしていただきたい」と話している。
      
温泉をペットボトルに詰める旅館組合青年部のメンバーら

 
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