「楽天アフィリエイト」の本格導入に旅館業界が反発


 楽天トラベルが「楽天アフィリエイト」を来年1月から本格導入し、全費用を契約宿泊施設の負担とするとしたことに、旅館業界で反発の動きが強まっている。箱根温泉旅館協同組合(鈴木茂男理事長)は15日、「『楽天アフィリエイト施設課金』撤回申し入れ書」を同社に送付。日本旅館協会(近兼孝休会長、針谷了IT戦略委員長)は18日、「御社が予定しているアフィリエイトサービスにおいて、当該費用を宿泊施設の負担とすることを中止されたい」というタイトルの要望書を同社訪問の上、手渡した。

 また、京都府旅館ホテル生活衛生同業組合(北原茂樹理事長、幾世英磨青年部会長)と日本旅館協会関西支部連合会(西村肇連合会長、朝野泰昌IT戦略部長)は21日に、導入の撤回を求める要望書を同社に送付した。

 箱根温泉旅組と京都府旅組は書面での回答を求める旨を明記。回答期限をそれぞれ25日、11月5日とした。

 楽天アフィリエイトの本格導入は、楽天グループが持つ「楽天アフィリエイト」の会員180万人が各自で運営しているウェブサイト、個人ブログなどに楽天トラベルや宿泊施設のバナー広告などを掲載してもらい、宿泊予約成立時に発生する成果報酬型広告料1%を受益者の宿泊施設が負担するという内容。

 宿泊施設は同1%に加えて楽天アフィリエイトのシステム使用料0.3%も負担する。楽天アフィリエイトの成果報酬型広告料は現在、楽天トラベルが負担しているが、来年1月の本格導入で宿泊施設側の負担となる。

 本格導入をめぐっては、(1)導入をするかしないかの選択権が契約施設側にはない(2)エージェントが負担すべき集客マーケティングコストを宿泊施設側に転嫁する内容である—ことなどの問題点が、ITに詳しい一部の旅館経営者の間で、発表当初から指摘されていた。

 箱根温泉旅組は撤回申し入れ書の中で「このような不平等な特約の締結、基本規約の変更を一方的かつ強制的に強いている御社の姿勢では、ともに成長すべきビジネスパートナーとしての信頼関係を構築するのは難しい」と指摘し、同社と旅館業界の信頼関係の崩壊を危惧。

 日本旅館協会は要望書の中で「以前より行っていたアフィリエイト集客にかかる費用を、御社の負担から宿泊施設に支払うように強要する行為は、優越的地位の濫用にあたる行為であり、到底容認することはできません」と独占禁止法抵触の懸念をにじませた。

 また、京都府旅組は撤回要望書で「『楽天アフィリエイト導入』にかかる費用徴収に抗議し、これを撤回することを要望します」と抗議の意を表明。加えて「本書面の受け取り、および内容の確認について期限(11月5日)までに必ずご回答いただけますよう、お願い申し上げます」と追記した。

 日本旅館協会関西支部連合会は要望書で「御社は、宿泊施設を宣伝するという立場を標榜しており、また、アフィリエイト広告はその宣伝行為の履行補助であり、また御社のSEO戦略に位置づけられます。したがって、通常の商取引の常識から鑑みても御社が、それぞれのアフィリエイターと契約して自社のシェアを増やそうとして発生するのは、御社が行うべき宣伝業務の一部であり、その手数料は御社の負担とされるべきものです」とし、筋違いではないかと突きつけた。

 楽天トラベルは「楽天アフィリエイト導入」など契約条件の変更を全国の契約宿泊施設に周知するため、9月18日の東京会場を皮切りに11月中旬までの期間、全国で61回の説明会を開催中。ただ、日本旅館協会本部や各旅館団体の支部から書面による撤回要請が相次いだことで、全国説明会の途上で、旅館業界からの要望に対応せざるを得ない状況に追い込まれた格好だ。

 
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