「多くが“看板の掛け替え”」「 組織設計・管理が不十分」 観光庁DMO検討会、有識者が指摘

  • 2018年11月22日

観光庁のDMO検討会

官民の役割分担、仕組みづくり提言

 地域観光のマネジメントやマーケティングを担う中核組織として「日本版DMO」の登録制度を観光庁がスタートさせてから約3年が経過した。現在の登録法人は208法人(うち候補法人122法人)。観光庁は7日、DMOの在り方を議論する有識者会議の初会合を開いた。DMOの現状や課題について委員からは、多くの法人が「旧来の観光団体からの看板の掛け替えにとどまっている」「組織設計・管理が不十分」などの課題を指摘する意見が相次いだ。

 観光庁が開催した有識者会議は「世界水準のDMOのあり方に関する検討会」。2020年までに「世界水準のDMO(先駆的インバウンド型DMO)」を全国に100組織形成するという政府の目標を踏まえ、求められる組織や機能の在り方を議論し、年度内に中間報告をまとめる。

 初会合では、DMOの現状や課題について意見交換。内閣官房まち・ひと・しごと創生会議のメンバーとして当初からDMOの在り方を提言してきたDMO推進機構代表理事の大社充氏は「3年たって各地を見ていて、まずいなというのが実感。何をする組織か、整理されていない。208法人が登録されているが、(旧来型の組織からの)看板の掛け替えがほとんどだろう。DMOとは、公共的な資金を公のために民の論理で利活用する仕組み。ところが、旧来型の観光協会、旧来型の観光行政のスキームに交付金、補助金を入れると、結局、補助金をもらう旧来型の構図になってしまう」と指摘した。

 提言として大社氏は「官とDMOの関係を整理する必要がある。政治、行政が仕組みを作って公共的な資金をDMOに投入する。DMOにはプロの人材を雇って力を発揮してもらうが、成果はしっかり出してもらう。KPI(重要業績評価指標)にしても、いくつかの組織ではDMO自身がKPIを設定し、自身が操作したデータに基づいて成果を評価している。ガバナンス(組織統治・管理)が効いていない。官民連携の新しい仕組みを作る必要がある」と訴えた。

 観光庁が定めるDMO登録の要件は、(1)多様な関係者の合意形成(2)データ収集、戦略策定、KPI設定、PDCAサイクルの確立(3)関係者が実施する事業の調整・仕組み作り、一元的なプロモーション(4)責任者の明確化、専門人材の確保(5)安定した運営資金の確保。「今後、該当予定」でも候補法人に登録できるが、本登録にはすべて満たす必要がある。

 DMOの人材育成などを支援している日本観光振興協会常務理事の天野啓史氏は「地域の実情や立ち位置を把握し、客観的なデータを収集する重要性、その手法は地域に浸透しつつある。しかし、ミッション、ゴールが不明確なままに事業を動かしている印象がある。過半のDMOがそういうレベルにある」と述べた。

 課題を踏まえて天野氏は「日観振はDMOのレベルに応じた支援に今後も取り組んでいくが、現状の迷走しているような状態を放置しておくと、日本の観光全体がボトムアップする機会を逸してしまう。DMOの意識向上の機会をつくり、観光庁からの何らかの指導、指針などのもと、自治体とDMOが話し合う機会などを設ける必要がある」と提言した。

 観光マーケティングを専門とする近畿大学経営学部教授の高橋一夫氏は「機能としては欧米のDMOと日本の観光協会に大きな違いはないが、成果を上げている欧米のDMOとの差は組織マネジメントにある」と指摘。組織設計と運営に欠かせない点として、(1)意思決定機関の存在感(2)行政との機能分担の明確化(3)プロパー職員による運営(専門人材の存在)(4)DMOによる人事評価(5)多様な財源の存在(6)多様なステークホルダー(行政、観光事業者、住民)との緊張感のある関係(7)確かな評価指標―を挙げた。

 高橋氏は特に専門人材、人事評価に関して「行政や民間企業からの出向者やOBによる組織運営が常態化している。地方では人材が限られ、悪いわけではないが、出向者が出向元から人事評価を受けるような状態は複数の管理者から命令を受けているのと同じで、まともな結果を出すとは思えない。行政職員は定期的な異動もあり、専門的なスキルや人脈が継承されづらく、プロフェッショナルな組織にならない。組織管理論の主要原則が欠落している」と問題視した。

 一方で高橋氏は、先進的な欧米のDMOのマネジメントをすぐに導入することの困難さなどを踏まえ、「行政とDMOの役割分担を徹底することから始めるべき。観光政策のとりまとめやインフラ整備、規制、財源確保などは行政、マーケティングなどのソフトの分野はDMOが担当する。その上でしっかりとした評価をしながら進めることが組織のガバナンスに結び付く」と提言した。

 観光庁の検討会では、次回以降はDMOを対象にしたヒアリングを実施する。DMOの現状、課題を整理しながら、「世界水準のDMO」の要件、DMO全体のレベルアップに必要な施策を検討する。  


観光庁のDMO検討会

 ◎観光庁 世界水準のDMOのあり方に関する検討会委員(敬称略)

 座長=矢ケ崎紀子(東洋大学国際観光学部国際観光学科教授)
 委員=石井至(石井兄弟社取締役社長)▽梅川智也(立教大学観光学部特任教授、公益財団法人日本交通公社上席客員研究員)▽大社充(DMO推進機構代表理事)▽加藤史子(WAmazing代表取締役)▽久保成人(日本観光振興協会理事長)※初会合代理出席・天野啓史(同常務理事)▽清水愼一(大正大学地域構想研究所教授)▽須永珠代(トラストバンク代表取締役)▽高橋一夫(近畿大学経営学部教授)▽デービッド・アトキンソン(小西美術工藝社代表取締役社長)▽山田桂一郎(JTIC SWISS代表)▽山田拓(美ら地球代表取締役)▽山野智久(アソビュー代表取締役)

 
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