10月21日に起きた中部地震で大きな被害を受けた鳥取県。県内では旅館・ホテルの宿泊キャンセルが1万件に迫るなど、観光業界に深刻な影響が出ている。施設の多くは通常営業をしているだけに、関係者は風評被害に苛立ちを隠さない。同27日から「がんばろうプロジェクト」がスタート、風評払拭への取り組みが始まった。
プロジェクトの一環として同27日、東京・新橋の「とっとり・おかやま新橋館」で、平井伸治知事や県観光連盟、旅館・ホテル関係者、梨の生産者などで成る「とっとり元気復興キャラバン隊」が鳥取の元気をアピールした。
平井知事は「いち早く復旧・復興を遂げようとしているが、どうしようもないことがある。それは観光の風評被害だ。旅館を奇麗にしてお客さまに使ってもらおうと店を開けても入ってくるのはキャンセルの電話ばかりだ」と述べたうえで、「お客さまの笑顔が見たい、会いたい。遊びに来てくれることが一番の応援になる」と呼びかけた。
11月6日の松葉ガニ漁解禁を控え、「11~12月は観光の書き入れ時」(平井知事)だけに、早期の風評払拭に関係者の期待がかかる。
県観光連盟の中島守会長、県旅館ホテル生活衛生同業組合の岩崎元孝理事長、県旅館組合おかみの会の中島三秋会長、三朝温泉旅館組合おかみの集いの知久馬麻里会長らも新橋館を訪れた人に特産の梨を配りながら、安全をアピールした。
地元、境港出身で元テレビアナウンサーの上田まりえさんは「各地に魅力がいっぱいある。1人でも多くの人に来てほしい」と話していた。
平井知事は同日、安倍晋三首相と官邸で面会し、風評被害対策などを求めた要望書を手渡した。首相は「被害の払拭に政府を挙げて取り組んでいく」と応じた。
三朝温泉旅館協同組合の広田発事務局長によると、地震発生から同25日までに約4500人の予約キャンセルが出た。「25軒の加盟旅館のうち、21日の発生から3日後にはほとんどの旅館が通常営業に戻った」としているだけに、風評被害の影響は深刻だ。
「これから紅葉が奇麗になり、6日にはカニ漁が解禁になるなど本格的な秋の観光シーズンを迎える。温泉街は目に見える被害は全くなく、いつもの風景が広がっている」と強調した。
三朝温泉の旅館からは「10月だけで1200~1300人のキャンセルがあった。現在は通常営業している」(三朝館・沖田雅浩専務)、「キャンセル数は500人。地震当日から通常営業している。日程は未定だが、京阪神に向けてキャラバンを組もうと組合で話している」(万翆楼・森田純一支配人)の声が挙がっている。
送客の鍵を握っている旅行会社の反応も気になるところだ。
JTBは「お客さま取り消しにはつながっていない。お客さまへ正確な情報を提供していく。カニシーズンを迎えるにあたり、PRなど取り組みを強化していきたい」という。
KNT―CTホールディングスは「地震発生直後は間際の出発を中心に取り消しが発生したが、現在はほぼ落ち着いている状態」とし、日本旅行も「地震後に直近のキャンセルは出たものの、施設などの被害が大きくなかったこともあり、現在(10月31日)では落ち着いている。払拭に向けて『鳥取応援商品』の造成も検討している」と話す。ANAセールスは「10月出発分は9件14人の取り消しがあったが、11月以降、地震を理由に取り消しをされているお客さまはいない」としている。