震災復興へ向け、黒川、由布院両温泉が初の連携


連携事業に向けて集まった黒川温泉と由布院温泉の関係者(提供・由布院温泉観光協会)

連携事業に向けて集まった黒川温泉と由布院温泉の関係者(提供・由布院温泉観光協会)

 熊本地震からの復興に向けて、黒川温泉(熊本県)と由布院温泉(大分県)が初めて連携し、共同事業をスタートさせた。両温泉地に連泊する旅行者を対象にした料金割引を開始し、プロモーションに乗り出した。誘客や情報発信にとどまらず、今後の地域づくりを両温泉地で考えるシンポジウムも開催する。復興という課題に直面する中、進むべき方向性をともに探り、さらに九州全体へと連携を広げる契機にしたい考えだ。

 連携事業は、黒川温泉観光旅館協同組合(北里有紀代表理事)と由布院温泉観光協会(桑野和泉会長)が独自に実施。県境をまたぐものの、両温泉地の間は車で1時間ほど。これまでにも交流はあったが、連携して事業を実施するのは初めて。

 事業は、地震発生から今年末までの200日間をひと区切りとして、温泉地の将来を見据えて展開することから、「黒川×由布院 夢をつなぐ200日」事業と名付けた。地震の被害や宿泊キャンセルなど復旧、復興に追われる中、両温泉地の若手の交流をきっかけに連携が具体化した。

 連泊割引は6月20日に開始し、8月31日まで実施する。黒川温泉、由布院温泉の対象施設に連泊すると、2泊目の宿泊料金が10%引きになる。併せて期間中に黒川温泉の「入湯手形」、由布院温泉の「辻馬車」「スカーボロ(観光乗合タクシー)」を利用した旅行者に、両方の温泉地で利用できる「湯巡りチケット」を贈呈する。

 両温泉地によるシンポジウム「温泉まちづくり会議」は、7月20、21日に由布院温泉で開催する。黒川温泉観光旅館協同組合の北里代表理事と由布院温泉観光協会の桑野会長が、「今するべき事」をテーマに公開で対談。分科会やパネルディスカッションも行う。

 連携を黒川・由布院間にとどまらせず、広域的に九州へと拡大するため、両温泉地の呼びかけによる「九州観光広域連携会議」(仮称)の開催も調整中。復興に向けて九州の観光関係者に幅広く参加してもらい、情報、戦略を共有し、九州一体で観光振興を推進する。

 連携事業について黒川温泉観光旅館協同組合の北里代表理事は「国、県の支援を受けながらも、民間でできることは民間で取り組む。ありそうでなかった連携として、関係者からも好意的に受け止められている。黒川、由布院をはじめ多くの温泉地がある『やまなみハイウェイ』(熊本、大分を結ぶ九州横断道路の通称)から観光を盛り上げ、九州全体へと波及させたい」。

 由布院温泉観光協会の桑野会長は「今まであってしかるべきだった連携がようやく実現した。由布院も黒川も、地域のコミュニティを大事にしてきた温泉地。今後どのような地域づくりを進めるのかともに考えたい。他の地域とも共有、連携できるものがあるはず。“九州はひとつ”の思いで取り組みを広げていく」と語った。

連携事業に向けて集まった黒川温泉と由布院温泉の関係者(提供・由布院温泉観光協会)

 
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