観光関係者ら350人出席、人材育成の重要性など指摘
一般財団法人運輸総合研究所(宿利正史会長)主催による「観光・ブランディングシンポジウムin北海道」が8月9日、札幌市内のホテルで開催された。世界に選ばれる観光デスティネーションとしてのブランド化をテーマに、ブランディングの理念や先進事例について専門家による基調講演やパネルディスカッションを行い、北海道の観光戦略を展望した。
会場には、道内各地の自治体や観光団体、観光事業者など約350人が出席して熱心に耳を傾けた。来賓として鈴木直道北海道知事や大高豪太国土交通省北海道運輸局長らも駆けつけた。
主催者である同研究所の宿利会長は、「北海道では秋にラグビーワールドカップ(W杯)の試合やG20観光大臣会合があり、2030年に向けて新幹線の札幌延伸や冬季オリンピックの誘致などが進められている。北海道の強みやポテンシャルを最大限に生かすためには、世界に通用するブランディングをしっかり行って発信していくことが重要と考え、その未来戦略を考える機会として開催した」とあいさつ。
鈴木知事は「外国人観光客500万人の目標を掲げさまざまな取り組みを行っている。北海道ブランドの評価をさらに高め、国内外から多くの人に訪れてもらうことなど北海道観光の飛躍を目指す中での開催に感謝する」と歓迎のあいさつを述べた。
基調講演では、インターブランドジャパンの並木将仁CEOとダブルシックス・マーケティングの山本さとみ代表の2氏が講演。並木氏は世界の企業戦略に取り組んできた実績をもとに、ブランディングの理念や基本事項について解説し、世界的企業の実例などを紹介。
山本氏からは、ウォルト・ディズニーの取り組みや日本代表を務めるアラスカ州観光協会、オーランド観光局などでの活動が紹介された。
パネルディスカッションでは、同研究所の山内弘隆所長がモデレーターを務め、並木、山本両氏と北海道観光振興機構の堰八義博会長をパネリストに北海道のブランディング戦略やDMOの活動について議論。
堰八氏から、観光客数の現状や地域間・季節間の偏在性などの課題が説明された後、「一つの自治体として動ける北海道の強みを生かした戦略的な工夫を」(並木氏)、「欧米のアウトドア客誘致に食の魅力も組み込んだ積極的な対応を」(山本氏)、「自然や食などたくさんある資源を世界に通用するようしっかり磨き上げていきたい。2030年冬季オリンピック・パラリンピックの誘致も」などと、今後に向けた意見を交換。
DMO活動にも、「意思決定のプロセスにリーダーシップのある人を据えることが必要」(山本氏)、「継続的に成功させるには携わる人や関係者の熱量が大事」(並木氏)、「機構にマーケティング部を設けたが、各地のDMOには核になる人材が少なく、人材派遣の要請が多い」(堰八氏)などの発言が続き、ブランディングやマーケティングはDMOだけで完結するものではないので、周辺の関係者を巻き込んでいくことと、リーダーシップを持った人材の育成が不可欠ということが強調された。
フロアからも、北海道「らしさ」に対する質問や世界遺産登録を目指す縄文遺跡群、アイヌ文化の民族共生象徴空間などの文化面の取り組みを積極的に発信してほしいとする意見が出され、活発な議論の場となった。
関係者が勢ぞろい(左から、佐藤・運輸総合研究所理事長、山本さとみ氏、堰八義博氏、宿利・運輸総合研究所会長、鈴木知事、並木将仁氏、大高・北海道運輸局長、山内・運輸総合研究所所長)