観光庁が8月28日に公表した2020年度予算の概算要求で、使途が未定の国際観光旅客税を財源とする520億円と東日本大震災からの復興枠予算を除いた事業予算(経常事務費などは除く)の要求額は、19年度当初予算比21%増の209億8700万円となった。主な事業を紹介する。
戦略的な訪日プロモーション=117億円5100万円(一部はMICE誘致の促進費)
日本政府観光局(JNTO)に「デジタルマーケティングセンター」を設置し、ICTを活用したマーケティングデータの集約、分析、活用を強化する。地域のプロモーションを支援するため、自治体やDMOと、JNTOの連携態勢も強化し、マーケティングデータの共有などを進める。また、地域単独のプロモーションには非効率的な事例があるとして、JNTOによる一元的な情報発信を推進する。
海外プロモーションは、伸び率が鈍化している東アジア、誘客が不十分な欧米豪、開拓が必要な新規市場など市場の特性に応じて展開する。東京オリンピック・パラリンピックの開催を踏まえ、地方への誘導、訪日時期の分散を狙ったプロモーションも実施。誘客の重点市場にはオランダ、スイス、メキシコ、ニュージーランド、中東地域を追加する。
MICE誘致の促進=3億1100万円(加えて「戦略的な訪日プロモーション」予算の一部)
国際会議の誘致、開催などのほか、取り込みが遅れているインセンティブ(報奨)旅行の誘致策を強化し、魅力的なコンテンツの創出を目指す。また、訪日ビジネス客に業務の前後期間などを観光に充ててもらえるような施策を実施し、滞在日数や消費額の増加を促す。
訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業=60億300万円
自治体やDMO、旅館・ホテル、交通事業者などが行う多言語での観光情報の提供、無料Wi―Fiの環境整備、キャッシュレス決済の普及、トイレの洋式化、バリアフリー化の推進などを支援する。また、持続可能な観光の確立、大規模災害など非常時の対策などで実証事業を実施する。
広域周遊観光促進のための観光地域支援事業=14億円
DMOが策定した事業計画に位置付けられたインバウンド事業に補助金を交付する前年度からの継続事業。戦略策定、滞在コンテンツの充実、2次交通の実証実験、JNTOと連携したプロモーションなどを支援する。
観光産業における人材確保・育成事業=2億4700万円
宿泊業の人材確保に向けて女性、シニアなどの採用、定着を図るモデル事業を実施するほか、特定技能外国人の活用に向けたセミナーや優良事例の発信を行う。外国人材の大都市への集中を防ぐため、就業状況を把握するシステムも整備する。
観光産業を支える中核的な人材の育成では、社会人向けの教育プログラムを複数の大学と連携して実施する。
宿泊施設の生産性向上推進事業=9千万円
マルチタスクの導入に向けたシンポジウム、施設間の連携による人材の共同活用などのモデル事業、生産性向上に取り組むためのガイドラインの策定などを行う。
健全な民泊サービスの普及=1億9400万円
今年度事業で設計を進めている違法民泊を特定するためのシステムの運用を開始する。無登録の海外仲介サイトなどに掲載された物件の情報を収集し、違法性が疑われる案件を抽出できるようにする。また、運用中の民泊制度運営システムには、届け出住宅の営業日数を自動集計する機能を追加し、住宅宿泊事業法が定める年間営業日数の上限の順守につなげる。
観光地域づくり法人による宿泊施設等と連携したデータ収集・分析事業=1億6千万円
地域内の宿泊施設や観光施設の観光客数などのデータをDMOに集約するプラットフォームを構築する実証事業を複数の地域で行う。DMOは収集したデータを分析し、事業戦略の策定に生かすほか、分析結果を観光事業者に提供し、旅行消費の拡大やリピーターの確保につなげる。
教育旅行を通じた青少年の国際交流の促進=2千万円
諸外国とのバランスのとれた相互交流、青少年交流を拡大するため、教育旅行の促進策を検討し、発信する。日本からの海外教育旅行が減少傾向にある中国などへの訪問を促す。