観光庁の有識者会議「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」の作業部会が11月25日、中間報告案を了承し、旅行業法改正への方向性が示された。着地型旅行を企画・提供しやすい環境づくりに向けた規制緩和では、地域限定旅行業の要件などを緩和するほか、旅行業者代理業に新区分を設けるように提言。ランドオペレーター(以下、ランオペ)の規制に関しては、登録制などの導入を求めた。観光庁は中間報告を踏まえ、来年の通常国会に旅行業法の改正法案を提出する。
観光関係団体・企業や自治体の担当者、有識者を委員とする作業部会が了承した中間報告案は、12月上旬に開かれる「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」(座長・竹内健蔵東京女子大学現代教養学部教授)で審議、了承される見通しだ。
中間報告案では、着地型旅行の環境づくりについて、旅行業者がいない地域や商品造成が進んでいない地域の自治体、観光協会、旅館・ホテルなどの旅行業への参入を念頭に規制緩和を提言。地域限定旅行業、第3種旅行業、旅行業者代理業の登録要件を見直すように求めた。
地域限定旅行業に関しては、旅行業務取扱管理者(以下、管理者)の要件を緩和。管理者の資格は現行では「総合」「国内」の2種類だが、地域限定旅行業者の業務実態に見合った資格を創設し、新たな試験を実施する。試験は地域限定旅行業が取り扱うことができる旅行に関わる内容に限定し取得しやすくする。
地域限定旅行業の営業所に対しては、条件付きで管理者の兼務も認める。管理者は営業所ごとに1人以上の設置が必要だが、例えば、取扱額が少ない営業所で一定の時間帯に勤務することなどを条件に、複数の営業所での兼務を可能にする。
地域限定旅行業の業務範囲、第3種旅行業の募集型企画旅行の業務範囲の見直しでは、都道府県などを単位とした一律の拡大には旅行の安全確保などに問題があるとして、規定の柔軟な運用にとどめる。現行で認められている「営業所が所在する市町村とその隣接市町村」と同程度の範囲内で、観光ルートや交通拠点などの実態を踏まえた設定を認めていく。
特定の旅行業者から委託を受けて旅行商品を販売できる旅行業者代理業には、新区分を設け、販売機会を拡大する。現行では、代理業は特定の旅行業者1社に専属する仕組みだが、着地型旅行商品に関しては、複数の旅行業者の募集型企画旅行を取り扱うことができる区分を創設する。
一方、旅行業者の委託を受けて交通、宿泊、ガイドなどの手配を行うランオペの規制は、訪日旅行、国内旅行の安全確保、悪質なツアーの排除などに行政の指導が及ぶようにするのが狙い。旅行業登録をせずに手配業務だけを行う事業者を対象として登録制などを創設するように提言した。
業務に関する規制は、BtoBの領域であることから、旅行者の安全、取引の公正を確保する必要最低限の内容とする。海外旅行の手配だけを行うランオペ事業者に対する規制の必要性については判断を見送った。
旅行者の安全、利益を損なうような行為については、禁止行為を定め、行政がランオペ事業者を処分できるようにし、違反者には罰則を設ける。無登録のランオペ事業者と取引を行った旅行業者、宿泊や交通などのサービス提供事業者に対しても行政処分を可能にするように求めた。
着地型促進では規制緩和に注文
旅行業団体
作業部会は、中間報告案を了承したものの、着地型旅行を企画・提供しやすい環境づくりへの規制緩和に関しては、出席した旅行業団体の委員から、制度設計に注文が付けられた。
地域限定旅行業の営業所で、条件付きで旅行業務取扱管理者の兼務を認めることに対して、日本旅行業協会(JATA)の原優二理事は「原則的に兼務は好ましくはないが、(対象の)営業所をかなり限定するということなので、その条件については改めて意見を出していきたい」。全国旅行業協会(ANTA)の國谷一男副会長は「規制緩和ありきの中で、行き過ぎがないようにしてほしい」と訴えた。
自治体や観光協会などの旅行業への参入促進に関しては、既存の旅行業者との公正な競争条件の確保などを求める意見もあった。ANTAの國谷副会長は「官費で運営された団体との競争になると、民間の力が及ばず、小規模な旅行会社との間で不公平も出てくる。地元の旅行業と連携する仕組みなどを構築してほしい」と要望した。