観光庁は2018年度、「宿泊施設の地域連携推進事業」を実施した。地域の旅館・ホテルなどが泊食分離や共同購買などに連携して取り組むことで、個々の経営の変革を促しながら、宿泊施設を核とした地域活性化を推進するのが狙い。先駆的な取り組みに対して事業費を支援し、支援終了後も継続的な実施を促すとともに、他の地域の参考となるモデル事例を創出する。支援対象に選ばれた5地域の取り組みを紹介する。
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旅館・ホテルは、地域の雇用創出や活性化に中核的な役割を果たしているが、訪日外国人旅行者の増加、国内外の個人旅行志向など、経営環境の変化への対応が課題になっている。温泉地などの地域の旅館・ホテル全体を活性化させるには、地域連携を通じた取り組みが鍵となっている。
モデル事業に選定された5地域の協議会は、飯坂温泉インバウンド受入拡充委員会内地域連携推進部会(福島県)▽摩周湖観光協会(北海道)▽秩父温泉郷推進協議会(埼玉県)▽昼神温泉宿泊施設連携推進協議会(長野県)▽湯田中温泉観光協会(同)。地域の飲食店と連携した泊食分離による誘客、旅館・ホテルの食材やアメニティーの共同購買によるコスト削減などの事業を実施した。
観光庁は、モデル事業に先立つ17年度に「宿泊施設の地域連携に関する調査」を実施した。温泉街を持つ観光協会やDMO、温泉組合などの団体228件、温泉街の旅館・ホテルなど宿泊施設908件から回答を得た。主な結果は次の通り。
【泊食分離】実施率は団体で20.2%、宿泊施設で32.0%。このうちインバウンドに積極的に取り組んでいると回答した団体、宿泊施設の実施率はともに50%前後と高かった。泊食分離に今後取り組みたいとの意向は団体で24.0%、宿泊施設で20.6%だった。
【共同購買】宿泊施設間などで食料品や消耗品の共同購買を実施している割合は、宿泊施設で15.1%。効果にはコスト削減、業務効率の向上、地域のブランド力向上などが挙がった。
【湯めぐり】湯めぐりの実施率は団体の回答で38.2%。効果には日帰り客の増加、地域のブランド力向上、宿泊客の増加などが挙がった。今後取り組みたいとの意向は21.1%だった。