観光が社会を明るくする 全国旅行業協会会長 二階俊博氏に聞く


二階氏

24年2月、愛知で「活性化フォーラム」

 ――まず旅行業界の現状についてうかがいたい。

 「3年以上にもわたり新型コロナウイルス感染症に苦しめられてきた旅行業界だが、ようやくコロナ前のように活力あふれる姿へ回帰する曙光が見え始めてきた。昨年の10月には、水際対策が大幅に緩和され、Go Toトラベル事業に続く旅行需要喚起策となった全国旅行支援が開始された。さらに、今年5月には新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類へと引き下げられ、わが国はコロナ前の生活を取り戻すことができた。旅行需要は完全に回復したとは言えないが、これまで出口が全く見えない暗中で、ただ耐え忍ぶことしかできなかった旅行業界にもようやく光明が差してきた」

 ――ANTA会員の中小旅行会社の現状は。

 「旅行需要も回復傾向にあり、ANTA会員を取り巻く環境は好転しているが、まだまだ諸手を挙げて喜べる状態ではない。長く続いたコロナ禍で、ANTA会員の経営状態は予断を許さない状況が続いている」

 ――そうした状況下での課題は何か。

 「コロナ以前はANTA会員の多くが団体旅行を中心に取り扱う傾向にあったが、コロナにより一部の教育旅行などを除き、団体旅行需要はほぼ消失した。感染症法上の位置づけが変更された今でも、団体旅行需要の回復ぶりは個人旅行と比較して緩慢だ。団体旅行は娯楽であると同時に、『人と人とを結び付ける』『地域コミュニティの維持、存続』といった社会的に重要な役割を担っている。業界全体として、いかにして団体旅行の需要を促進するかを検討し、旅行者に団体旅行の素晴らしさを思い出してもらうことが不可欠だ」

 「旅行業界はかねてより旅行者の需要が多様化していく中で、どのように対応し、付加価値を加えていくかという課題を抱えていた。新型コロナの感染拡大により、旅行者の需要が多様化するという傾向は加速化したのではないか。旅行業者として、また、旅行業界として、より発展していくためには、刻々と変化する時代のニーズに対応する不易流行の精神が求められてくる」

 ――ANTAの23年度事業の方針と取り組みをお聞きしたい。

 「今年度は、ANTA会員の事業継続に向けた環境の整備と安心・安全な旅行の提供の二つを軸に事業を進めていきたい。まず何よりも重要となるのが、ANTA会員の事業継続だ。新型コロナが猛威を振るった3年間で事業者の経営状況が著しく悪化し、事業の継続が困難になるという厳しい局面を迎えているANTA会員も多い。当協会としても、引き続き更新登録要件の弾力的運用、資金調達・過重債務救済措置、国内旅行需要喚起策の実施などについて、政府や関係省庁に対して強く訴えていき、事業の存続を願う会員が事業廃止を余儀なくされる事態を少しでも防いでいきたい」

 「また、昨年は知床沖の遊覧船事故をはじめ、人命を失う事故が相次いだ1年となってしまった。旅行の1丁目1番地は『安心・安全』であることを改めて徹底していかなければならない。特に、貸し切りバスを用いたツアーについては、貸し切りバス業界とも連携をしながら、より一層安全な体制を構築するよう尽力していく」

 「さらに、旅行業には社会を明るくするという高尚な役割がある。当協会では、来年2月に愛知県名古屋市で『第18回 国内観光活性化フォーラム』を開催する。開催地が『フォーラムをやって良かった』と元気づくような大会にするべく、地元支部と連携を取りながら、一生懸命に取り組んでいく」

 ――総会を前に、会員へのメッセージを。

 「観光はまさに地域興しだ。どこの地域でも、やる気とお客へのもてなしの心さえあれば観光に取り組むことができ、地域を活性化できる。観光こそ社会を明るくするものであるし、国の平和に積極的に貢献する産業は観光をおいてほかにない。ANTA会員には、そうした自覚と気力を持って、観光産業全体を引っ張っていく役割を期待している」

 

二階氏

【聞き手・板津昌義】

 
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