福島県の磐梯熱海温泉旅館協同組合(村田英男理事長)は16日、同県郡山市の郡山女子大学で食に関するシンポジウムを開いた。組合が進める「ふくしま食の未来プロジェクト」の推進状況を報告。原発事故の風評被害を払拭するとともに、新しい料理の開発を積極的に進め、誘客につなげたい考えを改めて示した。
組合では地元の農業団体、郡山農業青年会議所と共同で、「ふくしま食の未来プロジェクト」と題する事業を今年7月から行っている。「農産物の安全性アピールと食観光の推進」を目的に、地元のブランド野菜を使った新しい食メニューを共同で開発している。
料理に使う野菜は農業青年会議所が中心になり生産した「郡山ブランド野菜」。現在、グリーンスゥイート(枝豆)、おんでんかぼちゃ、御膳人参など8品目がブランド野菜として、独自の方法で生産されている。
旅館組合では、これらブランド野菜を使い、「おんでんかぼちゃグラタン」「夏野菜ラタトウィユ」「地野菜と福島牛の三五八漬け」などの新メニューを試作。宿泊客に安定的に提供するため、研究を進めている。
シンポジウムでは、プロジェクトのアドバイザーを務める、著名な地産地消レストラン(山形県鶴岡市「アル・ケッチァーノ」)のオーナーシェフ奥田政行氏が講演。奥田氏に旅館組合、農業団体関係者らを交えたパネルディスカッションを行った。
無認可農薬使用問題で風評被害を受けた山形県の食復活へ尽力した奥田氏は、その経験談を披露。旅館組合の小口憲太朗副理事長(四季彩一力)は「お客さまは福島県のものを食べていいのか不安に思っている。まずはその不安を払拭すること。ただ、それだけではお客さまは回復しない。その先を見据えて、新たな食文化をつくることを目指していかねばならない」と述べた。
プロジェクトを説明したホテル華の湯の菅野豊臣常務は、「食の問題に逃げることなく、真正面から取り組んでいく。野菜づくりのプロと料理づくりのプロが心を一つにして、お客さまに安心・安全な食を提供したい」と述べた。
旅館、農業関係者、学者らを交えたパネルディスカッション