石井啓一国土交通相はこのほど、観光経済新聞社が加盟する国土交通省交通運輸記者会の共同インタビューに応じ、2017年の国土交通行政などについて語った。観光施策では、政府の「明日の日本を支える観光ビジョン」に掲げた訪日外国人旅行者数4千万人などの新たな目標を念頭に、規制・制度の抜本的見直しや生産性向上などによる観光産業の革新、観光資源の魅力向上を図っていく考えを示した。
「16年は訪日外国人旅行者数が2千万人を超え、2400万人前後と過去最高を記録した。その消費額も4兆円が視野に入る勢いで増え、好調に推移した。この勢いを持続させるべく観光ビジョンに掲げた20年4千万人・8兆円の目標の達成に向けて取り組みを進めていく」「インバウンド2千万人の達成は一つの追加点であり、『世界が訪れたくなる日本』『観光先進国』を目指し、観光ビジョンに盛り込まれた施策を国土交通省が先頭に立って、関係省庁と協力しながら強力に推進していきたい」と語った。
観光産業に関わる規制・制度の見直しでは、次期通常国会に関連法案を提出する考えを改めて示した。ランドオペレーターの規制を含む旅行業法と、通訳案内士制度の見直しのための通訳案内士法の改正案、民泊サービスのルール整備のための民泊新法の提出が見込まれている。
観光産業をはじめとする国土交通関係産業の生産性向上については、「運輸業、造船業、宿泊業、観光業などで人手不足が深刻化している。担い手の確保、育成に取り組む。人口減少下でも生産性の向上によって持続的な経済成長が可能だ。生産性向上によって長時間勤務の解消、休暇取得など職場の魅力向上につながり、担い手の確保につながる。政策全般に生産性向上の考え方を浸透させ、今年を『生産性革命前進の年』としたい」と述べた。
また、観光施策については、「地方」「消費」をキーワードに挙げ、「欧米豪や富裕層をターゲットにしたプロモーション、地方への誘客を促すプロモーションを強化する。歴史的資源の活用など旅行者目線に立ち、モノ消費に加えて、いろいろな体験をしてもらうとか、文化芸術に親しんでもらうとか、コト消費のニーズに対応した地域づくりを支援していく」。東北や熊本など災害の被災地の観光復興にも引き続き注力する考えを示した。