着地型旅行規制緩和案、旅行業団体は慎重な対応求める


 旅行業法の見直しを検討している観光庁は2日、有識者会議「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」の作業部会を東京都内で開いた。論点の一つが、着地型旅行商品を企画、提供しやすくするための法制度の見直し。検討課題に挙がっている第3種旅行業などの業務範囲の拡大、旅行業務取扱管理者の要件緩和などについて、旅行業団体は、業務の適正化や消費者保護、施策の有効性の観点から問題点を指摘し、規制緩和への慎重な対応を求めた。

 作業部会では、観光関係団体や自治体の担当者など委員17人が有識者委員や観光庁の担当課長らに意見を述べた。観光庁は、作業部会の議論を経て同検討会が11月下旬にまとめる中間報告を踏まえ、2017年の通常国会に改正法案を提出する方針だ。

 着地型旅行の促進に関しては、政府の規制改革実施計画(6月閣議決定)に挙げられた課題を中心に意見交換。同計画は、第3種旅行業が実施できる募集型企画旅行の催行範囲の拡大、地域限定旅行業などの登録の容易化、旅行業務取扱管理者(以下、管理者)試験の見直しなどについて検討を求めている。

 旅行業の登録や区分、管理者をめぐる規制緩和に関して、旅行業団体は慎重な検討を要望した。全国旅行業協会(ANTA)の國谷一男副会長は「制度緩和で参入を促進し、旅行業者を増やそうとする政策は、長年築いてきた旅行環境や消費者保護の低下を招く」と懸念。特に自治体など公的な主体の旅行業への参入を促進する規制緩和は、地域の中小旅行業の存在価値に関わると危惧した。

 管理者に関しては、日本旅行業協会(JATA)の原優二理事が、試験内容の法令順守を重視した見直しには賛同したが、地域限定旅行業について試験に替えて研修の受講で管理者資格を認める案や、管理者を1営業所に1人以上配置する要件を改めて兼務を認める案に対しては、適正な業務を維持できないと問題視した。

 第3種旅行業や地域限定旅行業の募集型企画旅行の業務範囲に関しては、一部の自治体などが「現行の隣接市町村という範囲では旅行が成立しにくい」などとして拡大を要望しているが、「隣接する都道府県まで広げるようなことがあれば、第2種旅行業と大きく変わらず、実態として制度が崩壊してしまう」(JATAの原理事)。

 旅行業区分や業務範囲の見直しの施策の効果に関する意見も。第3種旅行業への募集型企画旅行の条件付き解禁(07年)、地域限定旅行業の創設(13年)などのこれまでの規制緩和を踏まえ、ANTAの國谷副会長は「着地型旅行が増加しない現状を見ると、さらなる旅行業区分の見直しは、健全な旅行の発展に必ずしもつながらない」と疑問を呈した。

ランオペ規制 あり方で注文

 法改正に向けた作業部会のもう一つの主要な論点が、旅行業者の委託を受けて交通、宿泊などの手配を行うランドオペレーターの規制のあり方。業者間の取引は現行の旅行業法では規制の対象外だが、軽井沢スキーバス事故(16年1月)や訪日旅行をめぐるトラブルなどを踏まえ、旅行の安全、安心の確保に向けて行政の指導が行き届く登録制などを求める声が高まっている。

 ランドオペレーターの規制に関してJATA国内・訪日旅行推進部の興津泰則部長は「消費者保護の観点、ビジネスの適正化、観光産業の育成の観点を取り入れるべきだが、BtoBの世界であることを念頭に規制を考えないと混乱が生じる」「誰がやっているのか分からないのが現状。厳しい規制を設けると、潜ったままになり、制度が無意味なものになり兼ねない」と指摘した。

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