ニューツーリズムの1つとして注目されている産業観光。国土交通省の産業観光推進懇談会は11日、産業観光を通じて国内外から観光客を誘致する方策を示した報告書をまとめた。現状では情報発信や推進体制、商品流通などがまだ不十分だとして、地域での推進組織づくりを提言。施設や工場、産業遺産などの観光資源を保有する企業が管理コストや受け入れコストを回収できるビジネスモデルの構築などを求めた。
懇談会は昨年10月、学識経験者や観光団体の代表、国交省観光部門を中心とする関係省庁の担当者をメンバーに発足。
産業観光は、歴史的・文化的価値のある産業文化財、生産現場や産業製品などを中心にハード、ソフトの素材を資源とした観光活動。その意義を懇談会では、「産業などを生んだ文化を学ぶことであり、将来的な産業発展のためにも重要な要素」とした上で、体験型観光の充実や訪日外客の拡大、地域活性化などにつながると指摘している。
しかし、産業観光への取り組みはまだ少なく、産業遺産以外の現役施設などでは企業PRの一環にとどまっているケースも多いのが現状。収益性を考慮したビジネスモデルが構築されておらず、支援態勢、人材育成なども確立されていない。
このため報告書では、産業観光を推進する方策として、(1)観光資源を評価する仕組みづくり(2)観光資源を持つ企業などがコストを回収できる仕組みの検討(観光客が見学料を負担するシステムなど)(3)産業観光資源の保全・活用のための公的制度の検討(4)産業観光を組み込んだ商品の開発・流通の仕組みづくり(5)産業観光を推進する地域組織づくり──などを提言。
先進事例としてヒアリング調査も行った。神奈川県川崎市からは、産業観光モデルツアー、産業観光検定試験を実施している川崎産業観光振興協議会をはじめ、味の素川崎工場、東芝科学館の担当者から取り組みを聴取。また、鉄道や石炭に関する近代化遺構で観光ルートの開発を進めている九州地区の活動を、九州観光推進機構、長崎県、九州伝承遺産ネットワークの担当者に聴いた。