日本観光振興協会はこのほど、第10回「産業観光まちづくり大賞」について、金賞に岐阜県の神岡・町づくりネットワークを選んだと発表した。表彰式は10月27日、大分県日田市で開かれた「全国産業観光フォーラムin日田」の式典のなかで行われた。
今回は11の団体から応募があり、審査委員会(委員長・福川伸次東洋大理事長)が金賞、経済産業大臣賞、観光庁長官賞、銀賞、特別賞、奨励賞各1団体を選んだ。
鉱山の町、神岡を支えてきた神岡鉄道が廃線になったのは2006年。町のシンボルで、奥飛騨という豪雪地帯の北陸への生命線として住民の命や暮らし、生業を守ってきた“心の財産”ともいわれただけに、住民の鉄道に対する愛着は強く、町の至るところで見られる鉄道の遺構(レール、駅舎、トンネルなど)を生かそうと開発されたのが「レールマウンテンバイクGattan Go!」だ=写真。
当初はイベント的な運営だったが、現在では周辺の観光地からの要望や利用者の反響を受け、平日を含めた毎日運行(定休日と冬季を除く)を行っている。
審査委員からは「全国の廃線地域にも多大な参考事例としての影響力を評価したい」「素材が素晴らしく、廃線を走れること、かつての鉱山跡が当時のまま残っていることも魅力。廃線チャリンコ業界のパイオニア」との声が挙がり、金賞に輝いた。
経産大臣賞は東京のすみだ地域ブランド推進協議会・墨田区産業観光部産業経済課が受賞。
東京ソラマチ内にある「産業観光プラザ すみだ まち処」で伝統工芸職人の実演コーナーや街歩きに役立つ情報コーナーを設置。また、区内の工場を開放し、来訪者が工場内の見学やワークショップ、疑似体験ができるイベント「スミファ すみだファクトリーめぐり」も12年度から毎年実施している。
工場見学(産業観光)だけでなく、付加価値の高い商品作りを通じてすみだブランドの向上に取り組んでいる点や、すみだモダンブランド認証事業、ものづくりコラボレーション事業、PR・販路拡大などの三つの事業により、総合的に産業観光を推進している点などが評価された。
観光庁長官賞を受賞したのは舞鶴観光協会(京都府)。旧軍港市とともに共同申請した「鎮守府・横須賀・呉・佐世保・舞鶴~日本近代化の躍動を体感できるまち~」が日本遺産に認定されたのは記憶に新しい。
軍需品などの保管倉庫だった赤れんがを活用した取り組みに力を入れ、1993年秋から始まった「赤れんがフェスタ」は今では2日間で40万人を集客する、まちを代表するイベントになっている。
「歴史の一側面をストーリー化した素晴らしい取り組み」「軍港資源の活用は意義が大きい。整備にも時間、努力をかけており、レベルが高い」などといった点が評価された。
銀賞は呉市(広島県)、特別賞は八戸市まちづくり文化スポーツ観光部観光課(青森県)、奨励賞は加古川市(兵庫県)がそれぞれ受賞した。