国立公園の魅力を高め、世界的な観光地としてブランド化しようと、環境省は「国立公園満喫プロジェクト」事業を進めているが、このほど先行的・集中的に取り組む八つの国立公園を選定した。外国人観光客を地方に引きつける起爆剤としての効果も期待されており、事業の成り行きが注目される。
同省は、3月末に政府が取りまとめた「明日の日本を考える観光ビジョン」に基づき、国立公園を世界水準のナショナルパークとしてブランド化することを目標に掲げ、「国立公園満喫プロジェクト有識者会議」(座長・桶井史郎東京都市大教授)を設け、検討してきた。
当初は5カ所程度の国立公園を選定し、2020年までに訪日外客を引きつける取り組みを計画的、集中的に実施する方針だったが、7月下旬の会議で8国立公園とすることが決まった。
全国に国立公園は32あるが、今回は世界遺産や温泉といった外国人を引きつける資源があることや、景観向上の取り組みなどを基準に選んだ模様だ。
選ばれたのは、阿蘇くじゅう(熊本、大分)、阿寒(北海道)、十和田八幡平(青森、岩手、秋田)、日光(福島、栃木、群馬)、伊勢志摩(三重)、大山隠岐(鳥取、島根、岡山)、霧島錦江湾(宮崎、鹿児島)、慶良間諸島(沖縄)の8国立公園。
選定のポイントとして、阿蘇くじゅうが災害復興やカルデラと千年の資源、十和田八幡平は災害復興と温泉文化、日光は世界文化遺産による欧米人来訪の実績、霧島錦江湾は多様な火山と「環霧島」の自治体連携などを挙げている。
これら国立公園では、「上質で快適な利用環境や多様なプログラムの整備などを集中的に実施していく」方針で、専門ガイドの育成や国が財政支援し、自然の景観を損なわないようなリゾートホテルの誘致などが進められる見通し。
同省では20年までに、訪日外客の国立公園利用者数を1千万人にすることを目指す。
なお、桶井氏以外の有識者会議のメンバーは次の通り(敬称略)。
石井至(石井兄弟社社長)▽江崎貴久(旅館海月女将)▽加藤誠(JTB旅行事業本部観光戦略部長)▽デービット・アトキンソン(小西美術工芸社社長)▽野添ちかこ(温泉と宿のライター)▽星野佳路(星野リゾート社長)▽ロバート・キャンベル(東大大学院教授)