中央環境審議会は6日、温泉の枯渇を防ぐための指針(ガイドライン)作りや、温泉事業者に温泉成分の定期的な再分析の義務付けを求める報告書をまとめ、若林正俊環境相に答申した。同省はこの答申を踏まえ、温泉法の一部を改正する法案を今国会に提出する。答申は再分析について「10年ごとに行うことが適当」としており、違反すれば罰則が科せられる。また再分析の結果、温泉の条件を満たさなかった場合は、利用許可の失効という事態も生じる。
同審議会は自然環境部会温泉小委員会(委員長・熊谷洋一東京農大教授)で審議を重ねていた。
答申は、(1)温泉資源の保護対策(2)成分にかかる情報提供(3)魅力ある温泉地づくり──を骨子に、現状と対応、支援のあり方を示した。
答申は、都道府県が掘削許可を出す際のガイドラインを国が作成することを求めた。温泉資源や地下水に関する科学的知見、都道府県における対策の優良事例を盛り込み「今後必要な技術的・専門的な検討を行って作成すべき」とし、基本的な考え方として(1)資源への影響が生じる可能性が高い場合には掘削、採取量などを制限する(2)採取開始後におけるモニタリングに基づいて、事後的に管理する手法も活用する──ことなどを挙げた。
具体的には、過去に枯渇現象が発生したり、地域の温泉利用量が限界に達している地域は「特別区域」とし、掘削を原則禁止することや、既存温泉からの距離による規制なども盛り込んだ。
同省は年内にもガイドラインを策定し、自治体に通知する。ガイドラインは資源保護のための条例や要綱を定める際の参考にしてもらう方針だ。
同省調査で、温泉旅館などに掲示されている成分分析の年月日が、10年以上経過しているものが全体の4割近くを占めていることが分かり、温泉利用事業者に対し、定期的な温泉成分の再分析や、その分析結果に基づく掲示を義務付けるようにする。
再分析を行う期間について答申は「10年ごとに行うことが適当」としており、同省もこの線で法改正する考えだ。違反すれば罰金(30万円程度)が科せられ、再分析で温泉でないと判断されれば、看板が掲げられなくなる。
分析機関が限られるため、施行後2年の猶予期間を設ける。
魅力ある温泉地づくりでは、温泉事業者、地域住民、団体などが一体となって取り組むことが必要とした上で、施策を立案・施行する市町村に対しては「入湯税(目的税)の収入を温泉資源保護や観光振興策の推進に重点的に活用されることを望む」と明記、一般財源化の動きをけん制した。
また、答申は「環境への影響等の公益侵害の防止」の中で、侵害例として「温泉の放流による水質悪化などの環境影響」を挙げた。侵害の恐れがある場合は「掘削等の許可に当たり、公益侵害が発生しないような管理手法を許可条件とするなどにより対応」するよう求めた。