民泊法案が衆院通過、条例制限規定は自治体の判断に


 住宅を活用した宿泊サービス、民泊(住宅宿泊事業)にルールを設ける住宅宿泊事業法案(民泊法案)は、1日の衆院本会議で自民、公明、民進などの賛成多数で可決され、参院に送付された。政府は、衆院国土交通委員会の5月30、31日の質疑に対し、生活環境の悪化防止を理由に都道府県などが条例で民泊を制限できる規定について、年間0泊の禁止区域を設けることは法案の目的から適切ではないと指摘したが、最終的には自治体の判断との見解を示した。

 民泊法案は、住宅宿泊(民泊)事業者に都道府県(または保健所設置市、特別区)への届け出を義務付け、宿泊者の安全確保、周辺地域からの苦情対応などの責務を規定した。家主不在型民泊の管理を受託する管理業者は国土交通省に、仲介サイトなどを運営する仲介業者は観光庁への登録を義務付け、それぞれの責務を規定した。

 民泊は住宅を利用した宿泊サービスであることから、年間の提供日数の上限を180日(泊)に規定。住居専用地域などでも営業できる。周辺地域の生活環境を悪化させる場合には、都道府県などが条例で区域、期間を制限できる規定を設けた。このほか民泊事業者、管理業者、仲介業者に対する監督、罰則の規定を整備した。

 都道府県などの条例による制限は、「騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるときは、合理的に必要と認められる限度において(中略)区域を定めて、住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができる」と規定。政府は、条例による制限の具体的な運用について政省令、ガイドラインなどを整備して都道府県などに示す方針。

 条例による制限の基準について観光庁の田村明比古長官は「例えば、静穏な環境を求める住民が多く滞在する特定の別荘地、防犯の観点から安全な環境を必要とする学校や幼稚園の周辺などが考えられる。一方で制限については、地域の実情がさまざまであることから、地域の特性に応じて区域、日数を設定するものであって、国が法令で判断基準を一律に定めるのは困難」との考えも示した。

 条例によって特定の区域の民泊を年間0泊、実質的に禁止することが可能かどうかについて田村長官は「規制、振興の両面を有する本法案の目的を逸脱するもので、適切ではない」と指摘しながらも、「最終的には自治体の判断になる」との考えを明らかにした。

 上限が設定されている年間提供日数の順守、監督も課題。提供日数の把握方法については、民泊事業者が宿泊日数などを定期的に都道府県知事に報告すると規定。田村長官は「報告に対するチェックは、仲介業者の保有する仲介履歴と照合する方向で検討している。物件ごとの届け出番号で整理しチェックする方向」と説明した。

 提供日数に制約を受ける民泊事業者が収益性などを考え、物件を年間180日までは民泊として運用し、残りの期間をマンスリーマンションなどの短期賃貸として運用する事業形態が想定されている。田村長官は「提供日数180日以下の範囲で民泊の用に供し、残りの期間を賃貸住宅として用いることは当然あり得る」と述べた。

 
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