東京商工会議所(三村明夫会頭)はこのほど、「東京とわが国における観光振興に関する意見」を国土交通省に提出した。観光が成長戦略、地方創生の切り札になるとの認識のもと、インバウンドのさらなる成長と国内観光の促進を両輪として、観光産業の稼ぐ力を高めつつ観光立国の実現を図ることが必要との基本的な考えを示した。
東商の観光・まちづくり委員会(委員長・佐々木隆副会長、JTB相談役)がとりまとめ、石井啓一国交相に提出した。
(1)インバウンドと国内観光の両輪による総合的な観光振興の促進(2)観光産業の稼ぐ力を高め、真の基幹産業へ(3)観光立国の実現に向けた推進体制の構築・強化—の三つの柱からなる意見をまとめた。
国内観光の活性化に向けた戦略的取り組みでは、まず広域観光周遊ルートの形成・構築を挙げた。関東地方では14年度から「関東観光広域連携キャンペーン推進事業」を官民連携で展開しており「国としても後押しをされたい」と要望。
また、「国内の観光客は50代以上が約4割弱を占め、旅行商品もシニア世代を優遇するものが多い」と指摘。旅行人口の層を拡大していくには、参加体験型観光の需要を踏まえた新たな旅行ニーズの掘り起こしや若者の旅行体験の促進、旅行需要の平準化などに取り組むべきだとした。
具体例として、世界・日本遺産、社寺観光、アートツーリズムなどテーマ別観光に取り組む地域をネットワーク化し、共同サイトの開設やプロモーションの強化に加え、アウトドアレジャーや音楽フェスティバルなど参加体験の要素が強い旅行もテーマに加えて、幅広い層に対して旅行の動機付けを図ると提言している。
インバウンドの増加に伴い、民泊がクローズアップされているが、サービスに関する責任が明確でない現状から「部屋の貸し手および借り主の特定、提供する物件の要件確認、トラブルへ対応できる相談窓口の設置、損害発生時の賠償責任など仲介事業者の役割を明確にするルール作りが求められる」とした。
国際観光ホテル整備法についても触れ、「登録制度が有効に機能しているとは言い難い」とした上で、「利用者が目的、予算に応じて良質のサービスを提供する施設を選択できる新たな設備・サービス基準を策定するとともに、登録施設に対する新たなインセンティブの検討や登録に関する相談体制の強化など、制度活用を促す環境整備が必要」と強調した。
意見書の提出後、ポーズをとる石井国交相(左)と佐々木委員長