朝日旅行と協定を結ぶ旅館・ホテルでつくる朝日旅行協力会(会長=佐藤好億・大丸あすなろ荘社長、500会員)は17日、東京都台東区の浅草ビューホテルで10年度の通常総会を開き、経営者、客室係ごとの研修会の積極的な開催や宿泊キャンペーンの実施などの10年度事業を決めた。また、会の定款を変更して、従来の定款の朝日旅行に追従するといった色合いを薄め、互いに独立した立場として協働していくことを明示、より実態に即した定款の内容とした。
従来、定款の第2条に掲げていた「この会は株式会社朝日旅行会の観光事業の推進に協力するとともに、協力会加入店の健全な発展向上に寄与することを目的とする」との一文を変更。「株式会社朝日旅行とともに、旅文化を創造していくために温泉文化、旅館文化や食文化、地域文化の保全と継承に努め、自立と協働の精神で会員相互の繁栄と健全な発展に寄与することを目的とする」としたほか、「朝日旅行と会員相互の繁栄のため、協働して企画商品の開発や共同宣伝を行う」などと活動内容を明記し、「前よりも“会社のための協力会”という色合いを薄めた」(同会事務局)。
朝日旅行はJTBの出資を受け昨年からJTBのグループ会社となった。JTBのグループ会社としての朝日旅行と、「日本秘湯を守る会」などの部会を複数持ち独自の事業を積極展開している協力会が従来通りの関係を維持していくのかどうか注目されていたが、井沢啓・朝日旅行社長が就任前から明言してきた「自立と協働」による関係づくりを定款に盛り込むことで、従来と変わらない関係性を維持することを明確に示した形だ。
総会の冒頭であいさつした佐藤会長は「昨年は朝日旅行がJTBグループ入りするなどの大きな動きがあったが、協力会としては秘湯部会(日本秘湯を守る会)がホームページの多言語化を進めるなど部会ごとにさまざまな活動を展開できた」と総括。その上で「協力会の活動の要は、研修会事業。部会ごとの垣根をできる限り取り払って多くの会員が参加できるようにすることで、経営者もスタッフも知識や技術を深めてほしい」と今年度事業への意欲を示した。
協力会の10年度事業では、今年から新たに「文化財の施設研修会」を創設する。協力会会員施設に複数軒ある、登録有形文化財の建築物を持つ旅館・ホテル同士が、登録施設の維持方法や経済効果への転用について見識を深めるほか、次世代への継承について意見交流する場としていく考えだ。
このほか総会では、退会により欠員が出ていた監事に、金子充氏(群馬県・仙郷社長)を選出した。
「ニュー・ツーリズムで新しい風起こしたい」朝日旅行・井沢社長
17日に開催された朝日旅行協力会総会に来賓として出席した井沢社長は「朝日旅行の強みを生かし、『温泉文化』『宿文化』『食文化』などに関わるニュー・ツーリズムに取り組み、業界に新しい風を起こしたい」と話し、ニュー・ツーリズム分野での需要掘り起こしへの意欲を示した。
井沢社長は、昨年は旅行需要が全般的に停滞する中でも同社では日本秘湯を守る会や日本の宿を守る会への宿泊ニーズの大きさや、文化、自然をテーマとした旅行の人気の根強さが不変であったことを挙げ、「これからは自分らしさを実現できる旅や本物による感動を得られる旅が求められる。朝日カルチャーでの学びや協力会施設の特徴あるもてなしや温泉、宿の文化を生かして、ニュー・ツーリズム需要を掘り起こし、ビジネスとしても成功させたい」と話した。
協力会との関係については「今年は『正念場の年』ととらえている。協力会との関係のあり方は定款の通りだ。新しいスタートのつもりで500会員との関係を作っていきたい」と抱負を語った。
定款変更を決めた総会(あいさつする佐藤会長)