帝国データバンクによると、旅館経営の松浪(三重県鳥羽市)は、12日に東京地裁から再生手続き開始決定を受けた。
同社は、1968年5月創業、76年7月法人改組の旅館業。地元鳥羽・志摩で水揚げされた魚介類を用いた海鮮料理をメインとして、三重県内のほか、中部地区、関東地区、関西地区からの利用者が多かった。当初からの「ホテル松浪」のほか、96年10月に「浜の雅亭一井」をオープン、98年ごろの年商は9億円を挙げていた。
しかし、その後は景気が低迷し、イベントの減少などで利用者は減少していた。伊勢神宮の式年遷宮に伴って宿泊利用が増えた2014年4月期の年商は約7億3900万円に回復したものの、当地周辺を訪れる観光客の減少に伴って減収傾向が続き、15年4月に老朽化が進んでいた「ホテル松浪」を閉鎖。期末に新型コロナ禍の影響を受けた2020年4月期の年商は約4億1200万円にまで減少した。
この間、過去設備投資の償却負担が多かったことに加え、減収で赤字がちの決算となり、年商を上回る借入金が負担となっていたため、再生ファンドなどを利用した自主再建を模索していたが、新型コロナ禍の長期化で自主再生を断念。5月10日に東京地裁へ民事再生手続き開始を申請し、同日監督命令を受けていた。
申請時の負債は、約12億1700万円。