近鉄グループホールディングスの文化研究機関「旅の文化研究所」(神崎宣武所長)は10日、東京・白金台のシェラトン都ホテルで旅の文化フォーラムを開き、若手研究者による旅に関する研究発表などを行った。旅の文化に貢献した人や団体を顕彰する「旅の文化賞」には「満蒙開拓平和記念館」(河原進館長、長野県阿智村)を選出し、表彰した。
満蒙開拓平和記念館は、満蒙開拓史に特化した唯一の施設で、有形資料だけではなく渡満体験者の肉声を収集、公開している。記念館に事務局を置く「語り部の会」は定期的に講演を開催。最近では中国の研究者との交流や中国古老からの聞き書きなども行っている。
選考理由について水戸岡鋭治選考委員は「満蒙開拓民の負の旅に目を背けることなく、後生に伝え残すための地道な活動を続けてきた」と語り、2013年の開館以来入館料と寄付のみで運営されている民間施設であることや、建物の美しさ、展示方法などのすばらしも評価した。
また移動や旅、観光にかかわる若手研修者を支援する「公募研究プロジェクト」には、間中光氏(和歌山大院)、黄潔氏(京都大院)、関根隆司氏(東京大院)、吉元菜々子氏(首都大学東京大院)の4人を採択した。
フォーラムの冒頭にあいさつした神崎所長は同研究所で3年かけて調査された満蒙開拓青少年義勇軍の報告書がこのほど出版されたことを報告。「公募研究を卒業した研究者が現在の研究所の活動に参加し、初めてまとめられた本」と喜びを表した。また近鉄グループや参加者の支援に謝意を述べた。
フォーラムではこのほか、昨年公募研究プロジェクトに採択された4氏による研究発表とパネルディスカッション「消えゆく軽便鉄道」を行った。
同研究所の山本志乃主任研究員ら4人の研究者が軽便鉄道の記憶と各人の考察を発表。会場にいた沖縄からの参加者からは「沖縄は戦争で軽便鉄道をなくした。島しょ部で有効な軽便鉄道を次世代型の鉄道として復旧させ、地域活性化に役立てたい」との意見が出され、場内からは大きな拍手が送られた。
神崎所長(左)から表彰状を受けとる河原館長