日本政策投資銀行は20日までに、「東北観光の現状と外国人観光客誘致のあり方」と題する調査リポートをまとめた。それによると、東北観光活性化の決め手は「現在あまり来ていない外客を取り込むこと」と指摘。誘致は「まさにこれから」であり、それには「東北にマッチした戦略的な取り組みが効果的」とした上で、(1)地域独自の観光実態調査を実施し、観光マーケティングに生かす(2)当面は格安客より訪日リピーターをターゲットにする(3)震災を受けた地域ならではの発信──など6項目を提言した。
リポートは東北らしい外客誘致のあり方について、北海道や山梨県の状況を参考にしながら、どう取り組むべきかを示している。
例えば、東北を代表する観光スポットの1つに世界文化遺産の平泉(岩手)があるが、外国人の来訪は少なく、リポートによると「入り込み客の外国人比率は1%に満たない」。平泉町には宿泊施設が少ないため、宿泊拠点を備える観光地に流れる傾向があるためだ。
また、「中尊寺をはじめとする名刹だけで外国人客を増加させ、観光消費を活発化にすることは難しい」という。そのため、(1)平泉を核とする観光ルートの開発(2)特徴ある食などの楽しみの提案(3)宿泊施設の整備など、東北全体で連携した取り組みが必要──と指摘する。
提言で、リピーターをターゲットにすべきだとしている点については、「誘致が『まさにこれから』である東北とって、当面は日本への観光旅行に慣れている、台湾などからの訪日リピーターとするのが現実的」とし、誘致先を絞り、PRすべきだとした。
被災地では今後、震災復興祈念館といった、震災の記録と防災意識向上のための施設の設置などが進むと思われる。リポートは、「このような施設ができれば被災地ツーリズムの拠点となり、震災を学びたい人々の受け皿として機能する。それは外国人にも対応可能である施設であることも望まれる」として、震災を受けた東北ならではの発信の必要性を強調。
また、東北の物産を売り込むアンテナショップの設置も提言。東北各県は首都圏に店舗を置いているが、「お膝元の東北に、東北各地の物産を一堂に集めた店舗はない」という。北海道では札幌に道内各地の物産を集めた常設店舗が複数あり、観光客でにぎわっている状況を例に挙げ、東北にもこのような店舗ができれば観光名所になるとともに、地域の物産の売り上げ増につながるとの見方を示した。
リポートは旅館の役割にも言及。言葉の問題については「北海道では指差し会話集なども使いながら積極的に対応していている。こうしたノウハウを学び活用すべきだ。外国人の立場に立った地道な受け入れ態勢の整備が外国人から見た東北往訪の敷居を下げることにつながる」としている。